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現地レポート:シンガポール、大型リゾート開業と羽田就航後の変化

  • 2010年12月10日
2つのリゾート施設の誕生と羽田定期便就航で
選択肢が拡がるシンガポール


 カジノを併設した2つの大型リゾート施設のオープンで話題性が高まるシンガポール。さらに10月31日から、羽田/シンガポール線の定期便が開設し、「アクセスの利便性」「座席供給量の多さ」というメリットが新たに加わった。これにあわせ、シンガポール航空(SQ)とシンガポール政府観光局(STB)はプレスツアーを実施。今後さらに注目を集めるであろうシンガポールへ、11月1日午前0時30分発のSQ羽田/シンガポール線の初便(SQ633)に搭乗し、羽田から出発するシンガポール旅行を体験するとともに、現地視察を実施した。


シンガポールの新プロダクトの効果

 2010年、シンガポールに新たな観光スポットが誕生した。カジノを併設する大型リゾート施設の「マリーナベイサンズ」と「リゾートワールドセントーサ」である。これまでシンガポール政府は、治安の悪化や青少年への悪影響を懸念してカジノの導入を禁止していたが、今後の経済を成長させる新たな素材としてカジノの合法化に踏み切り、新プロダクトの誕生に至ったという。

 同リゾート施設のオープン以降、シンガポールは2010年9月現在で全世界からの訪問者数が前年比21.8%増、日本からも4.8%増と好調に推移している(シンガポール政府観光局統計資料)。さらに先日、ジェイティービーが発表した2010年の年末年始の旅行動向調査でも、シンガポールは前年比28.6%増の約1万8000人と大幅な増加が予想されており、同調査では「羽田空港の国際化によって座席供給の増えるアジア方面や、ヨーロッパ方面を中心に増加が見込まれる」と、羽田線が好影響となっていることを示唆している。

 羽田/シンガポール線はフライトスケジュールが深夜早朝枠での運航になり、日系2社は往路、復路とも深夜発、早朝着の便を運航。SQはこれに加え、羽田早朝発、シンガポール午後着、シンガポール午後発、羽田深夜着の1日2便を運航している。このバラエティを使えば、フライト時間が6時間の中距離デスティネーションであっても金曜日の仕事後に出発し、日曜日の夜到着や月曜日の朝に帰着して出社するという、休暇なしでの週末旅行も可能だ。すでに、こうした旅程でアーリーチェックインやレイトチェックアウトを盛り込んだツアーも販売されている。多少、体を酷使しても、短期間で旅行を楽しみたいという需要にはぴったりの旅程であり、羽田便就航で新しい客層を取り込むチャンスが拡充している。



ハードとソフトの両面に特徴−マリーナベイサンズ

 3つのタワーとそれを繋ぐ屋上の「スカイパーク」で形成されるマリーナベイサンズ。建物そのもののインパクトが強く、シンガポールの新たなランドマークといってもよいほどの力強い印象を受ける。同施設は55階建、2500室を超える客室とスイート、18の異なる部屋のタイプで構成されている。さらに総面積12万平方メートルの広さを誇る「サンズ・エクスポ&コンベンションセンター」を有しており、MICEなど様々なニーズの催し物に対応可能だ。2010年4月末の開業以来、すでに550のイベントの誘致に成功しており、総勢35万5000人の人々が今後、訪問を予定しているという。

 また、同施設はシンガポールの新たな観光スポットとしても賑わいをみせている。3つのタワーを繋ぐ屋上「スカイパーク」は、幅38メートル、全長340メートルで、面積は約1万2400平方メートルの広さがあり、360度シンガポールの眺望することができる庭園やレストランが備えられている。特に注目は、ビルの縁に沿うように作られたプールで、まるで空中に浮かんでいるかのように見えるその風景は、ビルのシンボル的存在として人気がある。スカイパークへの入場は宿泊客なら無料で、宿泊客以外でも20シンガポールドルで入場できる。ただし、プールの利用は同施設の宿泊客に限定されている。

 ショッピング施設も充実している。アジアのプレミアム・ショッピングモールと称される「Shoppes」(ショップス)は、最終的には300を超える小売店とレストランが出店する予定で、現時点で約150店舗が出店。これまでオーチャード地区が主流だったショッピングスポットの幅が広がった。店舗も高級ブランドからカジュアルブランドまで多岐に渡っており、様々な年代のニーズにも対応できそうだ。

 さらに、マリーナベイサンズではハード面だけでなく、オペレーションの充実もはかっている。例えば、シンガポール初となるホテルでの搭乗手続きと荷物預け入れサービスの開始である。チャンギ空港でSQまたはシルクエアー(MI)に搭乗する宿泊客を対象に実施するもので、その場で搭乗券と手荷物引換証を渡し、利用者がチャンギ空港到着後、そのまま出国手続きを通って搭乗ゲートに進むことができるようにした。

 このほか、2011年3月3日には「マリーナベイサンズ・シアター」でディズニー・ミュージカル「ライオンキング」が開幕する予定で、マリーナベイサンズはオープン以降も次々と新しい話題を提供し続けている。


幅広い客層、様々なニーズに対応可能−リゾートワールドセントーサ

 「リゾートワールドセントーサ」の新しいプロダクトの目玉は、アジアでは大阪に次いで2ヶ所目となる「ユニバーサル・スタジオ・シンガポール」(USS)である。アトラクション総数24のうち、18が世界初またはシンガポール初のアトラクションとなっており、「ユニバーサルスタジオ・ジャパン」を訪れたことがある人もない人も、シンガポールならではのアトラクションを体験できる。場内のインフォメーションはほぼ英語でのアナウンスとなっているが、エンターテイメントの楽しさは万国共通。英語がわからなくても、映画を見たことがなくストーリーがわからなくても十分に楽しめる。また、アトラクションの待ち時間などを知らせるプレートが掲げられているので、混雑状況を確認しながら効率よく周ることができる。時間を有効的に使えるよう配慮があるのもうれしいポイントだ。

 USSのオープンにより、特にシンガポールへの家族旅行への訴求力が高まったが、家族旅行にはリゾート内ホテルでの滞在をすすめたい。ホテルから入場ゲートまで繋がっており、移動のストレスが少ないのは子連れ旅行にうれしいポイントだ。また、当日であれば再入場が可能であるため、子供の疲れ具合を見ながらホテルで休憩し、夕方頃から再入場するなど子供のペースにあわせた遊び方もできる。

 また、リゾート内のホテルも子連れ旅行を意識しており、例えば、「フェスティブ・ホテル」は部屋に入ると、ベッドにはユニバーサル・スタジオのキャラクターのクッションが並べられ、子供用の絵本が置いてあるなど、「子供心」をくすぐる内装としている。2段ベッドの秘密基地のようなベッドも備えられており、子供にとってホテルでの滞在も一つのアトラクションともいうべき体験となるだろう。

 さらに、同リゾートでは食事もアトラクションの一つと捉えており、屋台グルメからカフェ&パティスリー、バー&クラブまで60店舗のレストランを備えている。このほか、「リゾート・ワールド・コンパス・ボールルーム」があり、最大7300人規模のイベントの開催が可能で、テーマパークを持つリゾート施設ならではの、エンターテイメント性の高いMICEイベントの開催も期待できるだろう。


大型リゾート施設を基点としたシンガポール観光

 施設内で観光や食事、ショッピングが“ワンストップ”で楽しめる大型リゾートの誕生で、シンガポールでの「滞在型」の旅行が可能になった。リゾート内の施設を利用してのんびりと過ごすのも良いが、せっかくシンガポールを訪れたら「ローカルな体験」もしたいものだ。

 例えば、マリーナベイサンズで滞在するなら、夕食後に少し足を伸ばして同リゾートからタクシーで5分程のクラークキーを訪れてみるのも良いだろう。多くのレストランやバーが並ぶ界隈は、夜になると仕事帰りの会社員や若者などたくさんの人で賑わっており、シンガポールの活気を肌で感じることができる。このほか、クラークキーでは「Gマックス・リバース・バンジー」という、いわゆる“逆バンジー”アトラクションもあり、多くの観光客が楽しんでいた。

 リゾートワールドセントーサに滞在する場合も同様である。視察するまでは、セントーサ島からは市内へのアクセスが不便なのではないかという懸念があったが、リゾート内は無料でモノレールが利用できるほか、安価なタクシーを利用すれば15分程で簡単に市内へアクセスできる。海外でのタクシー利用を不安に感じる人も少なくないが、シンガポールは治安が良いので心配なく乗車できる。そのほかの交通手段としては地下鉄も発達しており、じっくりと自分の足で観光したい人には便利だ。

 2つの大型リゾート施設の誕生に見られるように、シンガポールは経済成長とともに新しい観光スポットが登場し、観光スタイルも変化している。2011年にはマリーナ地区に大規模な植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」がオープンするほか、世界最大級の客船も停泊可能なクルーズターミナルのオープンも予定されている。今後もシンガポールの観光は進化し、さらに変わり続けるだろう。現地の最新情報に敏感になって商品の造成や手配、旅行者への案内をしていきたいし、そうすることが新しいシンガポール観光の可能性を広げることにもつながりそうだ。


カジノ場へ入場する際の注意点

 シンガポール初となるカジノ施設が誕生した今、
せっかくシンガポールを訪れるのであればカジノ
を体験したいものだ。しかし、マリーナベイサン
ズ、リゾートワールドセントーサともにカジノ場
への入場にいくつかのルールを設けているため、
お客様に案内する際は、気をつけておきたい。

 まず、カジノ場にはドレスコードがあるため、
服装には注意が必要である。基本的にはカジュア
ルな服装でも構わないが、サンダル、タンクトッ
プ、ハーフパンツでの入場は禁止されている。そ
のほか、観光客はIDチェックが必要とされており、
パスポートを持参しなければならない。ただし、パスポートを見せれば入場料が不要に
なることになっている。また、場内での写真撮影は禁止されている。持参したカメラは
バッグに入れる、もしくはロッカーに預ける等、注意が必要である。



取材協力:シンガポール航空(SQ)、シンガポール政府観光局
取材:本誌 福田えつこ