羽田特集:旅行会社の戦略(1)羽田便の特性をいかした商品造成に創意工夫

深夜早朝便の商品造成で工夫、選択肢増は消費者にメリット
10月31日の冬スケジュール開始にあわせて羽田発着を開始する国際線は、昼間時間帯でソウル(金浦)、上海(虹橋)、北京、香港、台北(松山)、深夜早朝帯でバンコク、シンガポール、ホノルル、サンフランシスコ、ロサンゼルス、パリ。このうち、ソウル、上海、北京、香港については定期チャーター便から定期便に変更となる。
主要旅行会社各社は、ほぼすべての路線で商品を造成し、8月中旬頃から順次販売を開始した。就航地のモノ・デスティネーションコースだけでなく、就航地からの乗り継ぎ商品も設定している。例えば、バンコク経由でアンコールワットやプーケット、シンガポール経由でバリ、ロサンゼルスやサンフランシスコ経由でラスベガスなどの商品も多い。各社とも主力ブランドでの商品展開だ。


今回の羽田国際化の大きな特徴となっているのが、深夜早朝枠の国際便だ。バンコク、シンガポールを含めたロングホールのデスティネーションはすべて深夜発。また、11月から2011年2月にかけて順次開始する外国航空会社の羽田便のなかには早朝発もある。到着については夜遅くなる便も多い。
各旅行会社では、こうした深夜早朝便に対応したサービスを提供している。羽田空港周辺駐車場の無料あるいは優待利用、羽田空港周辺での前後泊プラン、タクシー会社との提携による定額タクシー事業など新たなサービスを提供することで、首都圏はもとより地方の需要も取り組む工夫を考えている。
おおむね順調な予約状況、方面によっては想定以上の結果も

また、ANAセールス海外商品造成部業務推進グループ・グループリーダーの篠塚昌明氏は、「当初、ハワイ需要については、首都圏8割に対して地方は2割と想定していたが、ふたを開けてみると、現時点でほぼ互角の需要になっている」と驚きを隠さない。その地方需要の中心は西日本。「関西マーケットでは機材の小型化や減便などによって生産量が落ちているので、座席が取りにくいと聞いている。そのために結果的に東京に流れてきているのではないか」と篠塚氏は分析する。さらに、バンコクやシンガポールについても、当初首都圏6割に対して地方4割と想定していたものの、地方需要が1割ほど上回っているのが現状だといい(取材日9月29日)、NH国内線をうまく活用できているようだ。
また、同じ航空系旅行会社であるジャルパックのマーケティング戦略部マーケティンググループ・マネージャーの奈良部貴氏はハワイ商品について、「JL便の供給量が減っているなかでも、成田と羽田の合算で予約数は前年同期比で100%を超えている。そのうち羽田商品が30%を下支えしている」という。同社では、8月中旬からJALパックスペシャルとして羽田商品を別冊パンレットで発売しはじめてから、反応がよくなってきた。ハワイだけではなく、「成田発を含めたヨーロッパ商品全体で見た場合、羽田発のパリ便だけで全体の35%ほどを下支えしている」という好調ぶりだ。
深夜早朝便で新しい需要創出に期待、若年層が動くか

その時間帯から体力的にも「若年層が動くのではないか」(KNT山内氏)という見方がある一方、「会社帰りに海外旅行に行く需要を考えた場合、30代、40代の女性が牽引するのではないか」(ジャルパック奈良部氏)という予想もある。また、阪急交通社東日本営業本部メディア営業三部長の新井富雄氏は「お客様は成田と羽田とを見比べて商品を選んでいるようだ」と語り、首都圏発商品に対する消費者動向に変化が出てきていることを指摘する。いずれにせよ、「羽田便が加わることで、消費者にとっては首都圏からの出発の幅が広がった」(JTB八木澤氏)のは確かで、今までにはなかった新しい需要を生み出す可能性を秘めているといえるだろう。
取材:山田友樹