旅行者の間で人気が高いユネスコの「世界遺産」。世界遺産条約に基づいて、自然や建造物、景観など、顕著な普遍的価値をもつ人類の遺産を「世界遺産リスト」に登録し、保護を行なうものだ。その前段階には「世界遺産暫定リスト」も存在する。これは世界遺産への登録を目的として、各国がユネスコ世界遺産センターに提出するもの。登録スポットに対しては現地調査が行なわれ、世界遺産委員会の審議によって認定される。今週は、世界遺産になる可能性もある暫定リストからピックアップした、おすすめの見どころを紹介しよう。
中国南西部に位置する貴州省は、「少数民族の故郷」と呼ばれる。雲貴高原が多部分を占める山がちな地形で、点在する村々では少数民族が昔ながらの暮らしを続けている。2008年、中国の世界遺産暫定リストに、貴州省南東部(雷山県、台江県、剣河県、従江県)のミャオ族村が掲載された。

ミャオ族(苗族)は中国から東南アジアにかけて住む民族で、中国に住むミャオ族の約半数が貴州省で暮らしている。なかでも南東部の黔東南ミャオ族トン族自治州は、ミャオ族の伝統文化が色濃く残る地域。歌や音楽、踊りなどの芸能もすばらしいが、ミャオ族で特に名高いのが民族衣装の美しさだ。銀細工や刺繍、藍染め、ろうけつ染めなどを用いた衣装は村によってデザインが異なり、バリエーションが豊富。遠い昔に戻ったような懐かしい村のたたずまいを見るのも、控えめでやさしいミャオ族の人々と出会えるのも、村めぐりの楽しみだ。
台江県や剣河県では、旧暦3月15日から17日の3日間かけて開催されるミャオ族の祭り「姉妹飯節」がよく知られている。銀細工の装身具をつけた正装姿のミャオ族が集まる盛大な祭りで、国外からも多くの観光客が訪れる。

ユーラシア旅行社では「貴州省の少数民族を極める」というツアーを企画しており、好評だという。祭りの時期にあわせた出発が多く、各村では正装した少数民族が歓迎の歌や踊りを披露してくれる。このツアーに毎年参加するリピーターもいるとのこと。
また、貴州省従江県から50キロほど西にある、広西チワン族自治州北部の三江トン族自治県に、世界遺産暫定リスト入りした少数民族のスポットがある。トン族の伝統建築である風雨橋だ。三江トン族自治県には雨風橋が約108あり、鼓楼と呼ばれる集会所も159あるといわれているが、なかでも程陽の永済橋は最大のものだという。

橋の長さは77.76メートル、幅3.75メートル、高さ20メートル。5つの楼閣をとりつけたような形で、石と木、瓦で建てられている。驚くべきことにこれには1本の釘も使われていない。1916年から12年かけて建造されたが、1980年代に洪水で流され、現在あるのは再建されたもの。豊かな自然に溶け込んだ伝統建築は美しいの一言。程陽は8つの集落から成り、全部で9の鼓楼と10の風雨橋がある。永済橋を渡って奥へと歩みを進めれば、さまざまな状態の風雨橋や鼓楼が迎えてくれる。川で洗濯をする女性や走り回る子供たち、鼓楼の前にたたずむ老人と挨拶を交わしつつ村を巡れば、トン族の優れた建築とともにそのゆったりとした暮らしぶりも心ひかれることだろう。
程陽へは凱裏から従江経由で行くことができるが、有名な観光地である桂林からもそれほど遠くない。桂林から三江までバスで所要4時間から5時間。三江からバスで30分ほどで到着する。
▽貴州省観光局
http://www.china.co.jp/guizhou/index.html
▽広西チワン族自治区観光局
http://gxtourism.com/