個性が光る、ヨーロッパの古城ホテル(5)チェコ ズビロフ


人気のホテルに「シャトーホテル・ズビロフ」がある。プラハの北西約30キロメートル、ちょうどプラハから温泉と美しい街並みで知られるカルロヴィ・ヴァリへ向かう道中にある。人口3000人弱の小さな町ズビロフ。シャトーホテル・ズビロフは町を見下ろす丘の上に建つ。12世紀にゴシック様式の城として建てられ、増改築を繰り返してきたため、現在ではおもにネオ・ルネサンス様式の城となっている。
歴代の城主は、プシェミスル・オタカル2世、カール4世、ジムクント、ルドルフ2世など、歴史に名を残す皇帝たち。そんな城に泊まれるのかと、恐れ多い気分になってくる。また、チェコが誇る画家のアルフォンソ・ムハ(ミュシャ)が長期滞在をしていたことでも知られる。ムハは官能美を描くアールヌーボー画家で、パリで大成功をおさめて25年間を国外で過ごしたが、1910年に50歳で帰国し、スラブ民族の歴史を描く20点に及ぶ大連作『スラブ叙事詩』の制作に取り掛かった。この城こそ、『スラブ叙事詩』の制作場所なのである。彼は晩年この城にトータルで18年も滞在したのだ。スラブの民族意識が非常な高まりを見せていたこの時期、ムハはここからの景色をどんな思いで眺めたことだろう。
長い間チェコ軍のために使われてきた城は、2008年春に客室数55室の高級シャトー・ホテルとして生まれ変わった。60ヘクタールの英国式庭園、礼拝堂、大小さまざまなサロンやホール。結婚式はもちろんのこと、イベント時には最大1500人が収容できるというから、多様な利用が可能だ。
宿泊者でなくても、地下の隠し部屋や囚人の塔など、歴史に触れられるガイドツアーに参加できるので、チェコの周遊ツアーに組み込んでみるのも一案だ。
▽シャトーホテル・ズビロフ
http://www.zbiroh.com
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