本保長官、外需に目を向け「計画実現が使命」−イン・アウトの一体化推進も

  • 2008年10月2日
 観光庁が発足した1日、長官に就任した本保芳明氏は専門誌との記者会見で、「観光立国推進基本計画の政策目標の実現が使命。これを実現できる組織作り、運営が課せられた仕事」と抱負を語った。既に国土交通大臣の金子一義氏は、2020年に2000万人の目標を示しているが、「(大臣からの指示を含め)基本計画の中身のステップアップをはかること」も重要な役割であるとの考えだ。

 観光産業についても、これまでは日本人へのサービスを主体とした「内需」から、外国人の誘致を含む「外需」に「目を向けていく必要性」を指摘。2020年2000万人については、「1000万人でも査証をはじめ限界、問題点が浮き彫りになっており、各界に問いを投げかけ、問題解決をはかるためにも分かりやすく伝える」意味もあり、目標としては「世界全体の(観光客の伸びの予測を踏まえると)達成できる」とも語った。

 基本計画では訪日旅行1000万人、海外旅行2000万人、国内観光旅行消費額30兆円、国内観光旅行4泊、国際会議の5割増を目標としているが、既に実現が厳しい目標もある。この点を問われた長官は、消費額は最終結果として横に置き、「インバウンド、国際会議は努力が必要だが、比較的順調に推移している」としたが、「宿泊日数、アウトバウンドについて厳しい状況にある」との認識を示す。

 このうち海外旅行について、「日本旅行業協会(JATA)が主導してビジット・ワールド・キャンペーンの枠組みで取り組んでいるが、プラス・アルファの枠組みも必要」と取り組みが十分でないことを認め、今後のさらなる措置に含みをもつ。さらに、イン・アウトの双方向を一体的に取り組むツーウェイ・ツーリズムの方向性にも言及し、「(アウトの)2000万人と(インの)1000万人を連接して考えることもありうる」とした。また、これまで二国間で観光に関する協議を行うスキームがあるが、実質的には「日中韓が機軸となることに変化はない」とし、イン・アウトの双方向の観光旅行の促進は東アジア地域での人々の交流が主体となることを示唆。二国間協議は、「『友人』のみに留まらず、効果を」求める考えで、「具体的な成果を出せる政策ツールを考えたほうが良い」と語った。


▽観光・旅行関連産業への期待

 観光庁の発足は、旅行業界をはじめ、各種産業界への期待も大きい。旅行では、各社の総取扱額のうち、1%未満に留まっていることについて「これまでは日本人中心でビジネスを展開できたが、大手(旅行会社)を中心に外需の取り込みに向けた戦略転換がはかられている」との見方で、今後は積極的に「相手国マーケットに入っていく時期」と述べる。ただし、「市場によって、民間だけでは無理な場合もあり、その際が『官』の役割」とし、例えば中国や韓国においてランドオペレーション以外の事業についても相手国政府を巻き込みながら、観光促進をはかる考えを示した。

 また、交通機関に対しても、沖縄や海外でのタクシーなどではホスピタリティがある点を指摘し、他の都道府県でも同様に「観光客を迎えてビジネスをするならば、『おもてなし』、『ホスピタリティ』を重視してもらいたい」ともコメントしている。


▽観光庁発足記念「観光立国推進の会」には各界から800名超が参集

 国土交通大臣の金子一義氏は観光庁発足記念の式典で、「行政組織が厳しいなかの新たな組織。『観光省』という声もあるが、こういう気持ちを持ち(職務にあたり)、宿題も持った」と挨拶。経済産業大臣で全国旅行業協会(ANTA)会長の二階俊博氏は「待望久しい観光庁で、念願が実現した。冬柴氏、北側氏の大臣歴任者が本当にこの問題に心を砕いた」と、旅行・観光産業から代弁。また、「(設立を)ひとつのばねにして、(さらに関係者が)がんばる」と決意も表明した。


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