現地レポート:マカオ 世界遺産と最新のホテル&エンターテイメント

  • 2008年7月1日
世界遺産と最新のホテル&エンターテイメント
旅行会社が見た、マカオの新たな可能性


日本人訪問者数が4年連続で30%以上増加しているマカオ。以前は香港からの日帰りツアーの目的地としての印象が強かったが、昨年の3月をさかいにマカオでの宿泊者数が日帰り旅行者数を上回り、今年4月には日本人客の65%が24時間以上滞在している。マカオ観光局がプロモーションを強化したモノステイ商品の造成促進の成果といえるだろう。この状況の中、キャセイパシフィック航空(CX)とマカオ観光局は東日本の旅行会社を対象に研修旅行を実施。旅程中のセミナーでは今後のマカオの商品造成に繋げていく目的で、グループディスカッションを実施し、参加者からはマカオ旅行に対する新たな課題や要望が提案された。ここでの意見や視察中にうかがった参加者の感想をもとに、マカオの今後の可能性を探った。(取材協力:キャセイパシフィック航空、マカオ観光局)


半島部の歴史市街地区、清潔な街並みに好感度高く

 マカオは2005年7月、マカオ半島南端の古建築群が「歴史市街地区」としてユネスコ世界文化遺産に登録された。そこにはマカオのシンボルともいえる聖ポール天主堂跡やセナド広場など、22の歴史的建造物と8ヶ所の広場が含まれる。教会やヨーロッパ調の建物が点在する石畳の旧市街で、西洋と東洋が入り混じったエキゾチックな雰囲気にあふれており、マカオ観光局がすすめる街歩きのポイントとなるエリアだ。「この界隈は伝統の店と最新ファッションの店がバランスよく共存していて、女性の買物ゴコロがくすぐられる。名物の牛乳プリンの老舗もあり、食べ歩きにも最適」と、東京から参加した大手ホールセーラーの女性企画担当者は手ごたえ話す。

 まずは高台にあるモンテの砦に建つマカオ博物館へ。貴重な史料と再現展示で、マカオがたどった歴史の理解が深められるほか、屋外の砦からは市街を一望する眺望が楽しめるスポットだ。次に眼下にそびえる聖ポール天主堂跡へ足を運んだ。16世紀後半に建てられた壮麗なファサードは圧巻で、そこから連なる68段の石段は格好の記念写真スポットでもある。土産店が並ぶにぎやかな通りを下ってセナド広場に到着すると、夕暮れ時ということもあり、地元の人や観光客が大勢くりだして、まるで華やかな祝祭のようだ。

 マカオは初めてだという参加者のひとりは「マカオの街はゴミもなく清潔なので街歩きがいっそう快適に感じられる。教会建築も美しく、ここがアジアとは思えない」と、好印象。マカオが10年ぶりという男性参加者は「街がよく整備され、かつてのイメージが一新されている。歴史的建造物も美しく修復され、女性や歴史に興味のある中高年にも格好のデスティネーション」と、マカオメインの商品作りに自信を深めたようだ。



ヴェネチアンなど大型ホテルの開業で新アプローチに期待

 マカオと聞いて、旅行業界関係者が気になるのが「ザ・ヴェネチアン・マカオ・リゾート・ホテル」をはじめとするホテルや最新事情だろう。

 タイパ島とコロアン島間を埋め立てたコタイ地区に昨年8月、オープンしたヴェネチアン・マカオは、70平方メートルのスイートタイプの客室約3000室に加え、約12万平方メートルものイベント&コンベンション施設、最大1万5000人を収容する大型アリーナ、1800席もの「シルク・ド・ソレイユ」専用シアター、350店舗以上が入る「ザ・グランドカナルショップ」などを有する大型施設だ。飲食施設も30以上あり、約5万平方メートルものカジノは週末には2万人もの利用者が訪れるという。施設全体は巨大だが、カジノを中心に動線は比較的シンプルなのでわかりやすい。名物のゴンドラはモール内の3つのカナル(運河)で乗ることができる。

 さらにヴェネチアンが立地する「ザ・コタイストリップ」には、今年6月に開業予定のフォーシーズンズほか、インター・コンチネンタル、シャングリ・ラなど7つの国際的なグループホテルが建設中で、2009年にすべてが完成すればアジア最大級のスパ施設、カジノ場、エンターテイメント施設が集った一大娯楽街となる。ヴェネチアンのグループ会社が運航する「コタイ・ジェット」では現在の香港島/タイパ島間に加え、香港国際空港とコタイ・ストリップを結ぶ航路を認可申請しており、実現すればアクセス面利便がさらに向上。新しい旅行の流れができそうだ。

 コタイ地区だけではない。先行して、半島部にも2006年以降、リオ、ウィン・リゾート・マカオ、Vギャラクシー・スター・ワールド・ホテル、MGMグランド・マカオなど、話題のホテルが次々と開業している。また、タイパ島北部には6ツ星のクラウン・マカオが昨年5月にオープンした。日本のマーケットにとって、新しいマカオの姿は魅力的な観光資源であることは間違いない。



タイパ島とコロアン島にも見どころあり、多様性広がったマカオ

 マカオの街歩きの楽しみは歴史市街地区だけにとどまらない。最近、旅行通の人々に注目されているのがタイパ島とコロアン島の街並みだ。タイパ島はかつてポルトガル人の別荘が多く建てられていたことで知られ、ペパーミントグリーンのコロニアル建築が並ぶタイパ・ハウス・ミュージアムの一帯は、ヨーロッパの雰囲気が漂う。そこからほど近いタイパ・ビレッジはかつて市場で栄えたエリアで、官也街と呼ばれる飲食店街からはノスタルジックな細い路地がいくつも伸びている。

 一方、コロアン島は、現在も緑豊かな高級リゾート地だ。「黒砂海丹灘(ハクサ・ビーチ)」と呼ばれる海水浴エリアで、ウェスティン・リゾートとマカオ・ゴルフ&カントリー・リゾートがある。また、島内最古のコロアン・ビレッジはかつての漁村を思わせ、まるでタイムスリップしたような独特の旅情にあふれている。近くにはエッグタルトの人気店「ロード・ストウズ・カフェ」があり、街歩きの休憩にうってつけだ。

 今回の研修を通じ、参加者のマカオに対する印象は総じて良く、「マカオが人気ということは耳にしていたが、実際に来てみて観どころが多いと感じた」(ホールセーラー 営業担当者)と、世界遺産や個性的な街観光に対する自信を深めた感想や、「カジノやエンターテイメントが豊富で、MICEでも必ず売れるだろう」(某旅行会社の法人営業担当者)と、手ごたえを得た意見が多かった。



香港経由マカオのアクセスは、ターボジェット・エアポート路線サービスで


 マカオへのアクセスといえば、マカオ航空(NX)が7月
から、関空/マカオ線をデイリー運航を開始し、関空乗
継を含めた関西発の供給量が拡大する。また、成田発着
やキャセイパシフィック航空(CX)、および香港ドラゴ
ン航空(KA)の就航都市の場合、香港乗継のターボジェ
ット・シーエキスプレスの「ターボジェット・エアポー
ト路線サービス」が有効。今回は香港経由でターボジェ
ット・エアポート路線サービスを利用し、アクセスを実
体験した。空港の敷地内にあるスカイピア・フェリータ
ーミナルから1日7往復運航されていて、所要は約45分。
CX利用の場合、トランジット扱いのため香港での入国審
査は不要で、バゲージも日本からマカオまでスルーとなる。

 香港空港内の専用カウンターでチェックインを終える
と、トランスファー用の専用ステッカーが配布される。
スカイピアへは専用の連絡バスで行き、乗り場である10
番ゲートへはサイン表示をたどって容易に到着。注意点
として、香港国際空港でのフェリーのチェックインは乗
船時刻の1時間前まで、バゲージがない場合は30分前ま
でに済ませる必要がある。ちなみにCXは成田/香港線を
1日6便運航しているが、現在そのうちの3便(CX509、CX
501、CX549)が乗継に適している。復路のマカオ/香港
では、乗船時刻の45分前までであれば香港国際空港発の
CXとKAのチェックイン手続きを同時にでき、バゲージも
目的地までスルーで運ばれるので、手続き面が格段に簡
略化される。


▽ターボシージェット http://www.turbojet.com.hk/jp/home/index.asp



業界と消費者に向けた新イメージの浸透が今後のカギ


 セミナーのトークセッションのテーマは「マカオのFIT
パッケージ造成のための展開と団体販促プラン」「マカ
オのメディア展開と商品告知の方法のための要望と課題」
「航空券とホテル手配に関する問題点」。参加対象者は
航空仕入れ、企画、営業販売の責任者とされており、主
催者の研修に対する明確な意図と期待値がうかがえた。

 各グループの代表者による発表では、シニア層を意識
した「観どころをコンパクトにまわれる市内巡回バスを
運行して欲しい」、若い世代にアピールするために「テ
レビ番組の『弾丸トラベラー』といったメディアでの露
出が有効的」、日本発や地域の需要を意識して「東北か
らのチャーター便をお願いしたい」「熟年層はカジノで
の遊び方が分からない。カジノを含め、ホテルや空港な
どで日本人向けの案内がほしい」など、今後の商品造成
や販売への意欲を感じさせる、前向きな要望や提案が見
られた。

 特に、意見が多かったのが「新しいイメージのアピール」。熟年世代の参加者からは
「日帰りというイメージが残っている」「過去の危ないイメージの一新が必要」という
意見や要望が出されたり、「カジノ以外にも観光の幅が広い」と、改めて実感する様子
を見ると、消費者のみならず、旅行業界内にも一層のイメージ構築を進める必要がある
だろう。

 なお、セミナーでマカオ観光局が「コアなターゲットは、何度も海外旅行を経験して
モノの本質がわかっている30代以上、中高年齢層など。また、歴史的に東西の交流地点
だったマカオは修学旅行地としても脚光を浴び始めている」と説明。パッケージ造成の
面での共同企画や、12月に開催されるマカオ・マラソンでは、日本からの20人以上の団
体に対するパーティーのアレンジを提供するなど、今後の可能性も語った。