JTB田川次期社長、地域交流、グローバル化、インターネットで新しいJTBづくり

田川氏は「代理店は厳しい状況」と現在の旅行業界の苦境を語り、「単純に商品をつくり、流通させる、ではだめだ。市場の個人個人にあわせたカスタマイズ化が必要。旅行業はそうした点でまだ未成熟で、みずから需要を作ることが必要だ」と認識を示し、分社化後の営業基盤の確立をはかる考え。特に、需要創造について「旅行業がみずからつくりだし、羽田からのチャーター便などで活性化できる」と指摘し、リスクの高いチャーター便利用の商品についても積極的な姿勢だ。このチャーター便利用の商品展開は、都道府県で差の大きい出国率の解消、また高いリスクの分散の観点から、「複数の旅行会社が出資したチャーター専門の会社を作ることも一つ」と持論を披露。その一方で、経営面からは「海外の事情に左右されやすい市場動向への対応として、(日本発の需要取り込みに限らず)アジア発の日本インバウンド、第三国への需要を取り込む」と語り、中国での持株会社設立やベトナムへの進出など、日本以外の国における企業活動を活発化し、日本インバウンドのビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)、日本アウトバウンドのビジット・ワールド・キャンペーン(VWC)とも連携するグループ経営の考え方を示した。
重要視するインターネット分野の取り組みに関しては、自身のアメリカ駐在の経験も踏まえ「インターネットが大きな武器になると、見ていた。ただし、JTBの国内支店を減らすわけにも行かない」とし、インターネットとリアル店舗の融合を試みる。長期的視野では、インターネットが購買活動に大きな役割を果たすと見ているものの、「既存店舗が前年実績の70%から80%になっているわけではない」とし、「焦ってはいない。じっくりと準備を進める」という。ただし、時期としては「成田、羽田の国際化と同じ時期の2010年から2011年までの時期に、確立していきたい」と引き続き、研究、投資を進めていく。
また、分社化では地域に根ざした営業活動が求められていることを強調。具体的な事例として、以前から取り組む「日本の旬」を来年にも初めて首都圏で開催し、地方だけでなく大都市圏でも成功することも示し、地域交流から旅行商品の造成、ひいては経済活性化につなげ、行政や経済界などそれぞれの地域の各方面の満足度を高めていく。このスピード、質を高める方策として人事交流をあげ、「(成功を収めるグループ会社で)すすんだ事例を学び、専門性を得ることが大切になる。(分社化以前は)転勤であったが、研修的な意味合いによる交流を活発化することが大事」と、分社化しても「JTB」としてのDNAやブランドを共有する仕組みについて磨きあげるという。こうした人事交流は、現在、スロベニア一等書記官として派遣する社員についても、「VJCの窓口として、現地で様々な活動をしている。(JTBに)帰ってきてから、インバウンドでどのように対応していくか楽しみにしている」とし、グループ会社内外での人事交流についても期待感を示した。
▽佐々木社長の田川氏評−「組織を動かすことが非常にうまい」

分社化の評価は、「現在は社員のモチベーションが高まり、賃金の支払いが所属する会社の業績に連動して明確になった。また、前期は3月の追い込みが強烈にすすんだと聞いている」と一定の効果があるとしたものの、「10年程度の期間をおいて判断するものではないか」との考えも語った。
また、自身の今後の活動については、「日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)は代表取締役会長の舩山龍二氏が続ける。現在、燃油サーチャージの問題など、利害関係者が多く取りまとめることに労力、時間のかかる日本旅行業協会(JATA)として実利あるものに総力をあげたい」とした。
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