ビジネストラベラー:異なる文化を持つ世界では自らの危機管理が一番大切

  • 2007年10月1日
今回のビジネストラベラーは、エートゥゼットネットワーク代表でプロデューサー兼エッセイストとして活躍されている石橋眞知子氏。国際的な仕事を手掛けられ、また「お嬢様ブーム」や「Hanako族ブーム」などの仕掛け人でもあり、いまや女性の生き方のフロントランナーとして、あるいはオピニオンリーダーにもなられた石橋氏の旅のスタイルには学ぶべき点も多い。

(聞き手:山見インテグレーター代表、山見博康氏)
※2006年7月、月刊トラベルビジョン掲載


国際的に活躍し、ブームの仕掛け人になるまで

Q:現在のお仕事について教えてください。

 国籍・性別・年齢を問わず、多彩な才能を起用し、「真の国際化」を目指すプロジェクトを推進したり、CI(Corporate Identity)に関するコンサルティング・販売促進事業・人材育成教育事業を行う会社「株式会社エートゥゼットネットワーク」を20年経営していましたが、昨年から個人サイズにしてフットワーク軽く活動しています。

Q:国際的なお仕事をされていますが、そもそも英語に興味を持たれたきっかけは何ですか?

 私の祖父は元ブラジル大使として外務省に勤務し、8ヶ国語に通じた国際人でしたので、小さい頃から外人・外国語の中で育ったといえます。いつもいろんな言葉を話す人、肌色の違う人と出会い、宗教や文化の異なる人と接してきました。

 そうした環境で育ったものですから、幼いながらも「海外に行きたい」と切望していました。ところが、元大蔵省で北海道財務局長などを歴任したエリート官僚の父は、娘の教育には厳格で、安易に留学費を出してはくれませんでした。つまり自分で貯めたお金で行きなさい、ということだったのです。

Q:お金を貯めてから念願の1人旅をされたのですね。

 大学4年の時に、名古屋の東海ラジオ深夜放送やラジオ日本のDJ、テレビ東京のレポーターなどをしてお金を貯めました。実は日本初の女子大生DJとしてちょっと話題になり、声のファンもできたのですよ。

 2年後、英国をスタートに一人旅をしました。いわゆるリュックを背負って世界を旅する「バックパッカー」です。日本女性で一人旅はまだいない時代、その先駆けとも言えますね。ユースホステルなど安宿に宿泊しながら半年かけて様々な国を訪問しました。英国・ベルギー・オランダ・フランス・ドイツ・オーストリア・スイス・イタリア・ギリシャ・旧ユーゴスラビアなど10ヶ国くらいは訪ねましたよ。

Q:その他でこれまでに訪問された国はどちらでしょうか?

 スウェーデン・スペイン・ポルトガル・チェコ・中国・台湾・マレーシア・ベトナム・ジャマイカなど30ヶ国以上です。

Q:世界各国を旅された経験から、英語を身につけられたのですね?

 いえいえ、そんなことはありません。むしろあまり出来なくて大変でした。実は結婚してすぐ、イリノイ州のNorthWestern大学でMBA留学する主人に同行した時のことです。大雪の日に、買い物に行く為、隣のフランス人の奥さんが運転する車の助手席に乗ったのですが、交差点でトラックに衝突。私はフロントガラスに頭から突っ込み、血だらけで病院に運ばれました。そこで、痛みを英語でうまく表現できず、それ以来、英語コンプレックスになってしまいました。

Q:それから現在の会社を立ち上げられたのですね。

 ええ、帰国後に一流のPR会社であるオズマピーアールでPRを2年程学び、35歳で今の会社を設立しました。社名は、方向音痴な私が、ロンドン在住中に一時たりとも手放せなかった地図のバイブル「LONDON A to Z」に感謝を込めて命名しました。 AからZまでの各分野の専門家のネットワークを駆使して、手がける仕事の全てで最高のものを提供したいという願いを込めたものです。

Q:今まで様々なブームの仕掛人になられていますよね?

 会社を立ち上げてから最初の仕事は、「Royal Summer School」という英国の有名ホテルに3週間滞在して、女性の高等マナー教育を英語で行うというもの。例えば、歩き方や紅茶の入れ方、フラワーアレンジメントなどを本格的に学ぶコースです。日本初の「Finishing School躾の学校」として話題になり、「お嬢様ブームの仕掛け人」として様々なメディアに取り上げられ、会社も有名になったのです。また、「Hanako」という女性雑誌の読者を「Hanako族」と呼びますが、彼女たちのライフスタイルを分析したり、また彼女たち世代に向けて発信する仕掛けも作りました。今でも、化粧品会社から女性向けの商品開発のアドバイスや、女性向けの店舗フロアのアイデアを求められたりしています。

Q:たくさんの本も書かれていますね。

 英会話の本は30冊以上になります。またこの頃は、エッセイストとしても色々出版させていただいています。そのほか観光マニュアルや、接遇マナーに関する通信教育の教材作りを手掛けました。現在は新聞(サンケイビジネスアイの木曜一面と日曜七面)とウェブ(富士通)に毎週3本程のエッセイを執筆しています。


旅行中は危機管理の意識を持って行動

Q:いつも使う旅行会社や航空会社はありますか?

 決まった旅行会社はなく、旅行の形態によって変えてます。仕事上、主催者側がアレンジしてくれる場合も多いのです。航空会社は、マイレージを持っているJALを使うことが殆どですね。やはり、一番安心して利用できます。

Q:旅行準備で気をつけていることはありますか?

 いつも準備するものは、ホテル用のスリッパ、リンス、歯磨きセット。面白いものでは、洗濯物を干すための紐や、長時間飛行の対策として足のむくみ取りサポーター。JSというメーカーから出ているイオンドクターがダントツにお勧めです。それからイッセイミヤケのプリーツプリーツも欠かせません。紐は、スーツケースなどが壊れた時にも役に立ちますよ。スーツは2週間くらいのビジネス出張の場合は4、5着、パーティ用のドレスも着回しがきくように2着くらいは持参します。

Q:海外での安全について秘訣があれば教えてください。

 私は外出する時、パスポートなどの大事な物を身に着けますが、それを入れたポシェットはジャケットの内側に掛けるようにしています。それから旅先で道に迷ったり、建物を探す場合でも、地図を広げたり、あまりキョロキョロしないようにしています。すぐによそ者とわかってしまい、狙われますから。

 香港を旅した時の話ですが、お土産を買おうとリュックを開くとお財布が無いのです。直前に地下鉄に乗って面白そうな広告に見とれていた時に、リュックのジッパーを開けられて財布だけ見事に抜き取られたのでしょう。現金も惜しかったのですが、盗まれたクレジットカードで靴や洋服等100万円近くも使われたのはショックでした。それ以来、人ごみではリュックは体の前に持つようにしています。これも危機管理ですね。また、旅行ガイドブックの情報が間違っていたこともあり、恐い目にあったこともあります。信用しすぎないことです。


雰囲気のある美しい街が好き

Q:今まで行かれた場所で、印象的な街はどこですか??

 ひとつは、マラッカですね。とにかくエキゾチック。街全体に幾重の時代背景がしみこんで、どこか懐かしく、自然に自分が溶け込んでいくような不思議な気分を味わいました。

 他にもひとつ。私はイタリアの田舎町はみんな好きですが、女性4人で2カ月ほどかけてゆっくり周遊したウンブリア地方の田舎町が良かったですね。

Q:穴場的な街があれば、教えてください。

 英国南部のRye(ライ)という中世の面影を残す街は印象的。チューダー時代の建物が残り、ロマンチックで美しく、私の大好きな「ロミオとジュリエット」の世界にいるみたいでした。

 ぜひ旅行先のひとつにすることをお勧めします。この街には、ポールマッカートニーのお気に入りな小さなカフェもありますよ。

Q:次の海外へのご予定を教えてください。?

 7月はアメリカ西海岸に2週間ほどバカンスに行ってきますが、8月には、内閣府の「青年国際交流事業」の団長として、14人を引率してチュニジアに3週間ほど滞在し、現地の人と交流してきます。両国の若い人同士の国際交流を促進するという使命を持つ大変有意義な仕事ですので、団長に選ばれてとても光栄です。両国の親善のために精一杯、役に立ちたいと思っています。


石橋眞知子(いしばし まちこ)氏
エートゥゼットネットワーク代表
プロデューサー&エッセイスト
1987年、エートゥゼットネットワーク設立。学習院大在学中から深夜放送の
パーソナリティとして活躍。
ノースウエスタン大学で日本語講師。オックスフォード大学留学。
異文化コミュニケーションやマナーをテーマに執筆、講演会などでも活躍。