ビジネストラベラー:ネットは気兼ねなく情報検索、旅行会社は知識やノウハウの提供

今回はIT業界の雄であるマイクロソフト、広報部長の岡部一志(おかべ・かずし)氏へのインタビュー。マイクロソフトと言えば、ウィンドウズの普及で仕事だけでなくプライベートでも接する機会の多いだろう。この企業に勤める方が、どのようなことに配慮して出張しているのか、印象に残る海外の訪問先について聞いてみた。
(聞き手:山見インテグレーター代表、山見博康氏)

岡部一志さん(以下、岡部):まず、アメリカ。さらに、イタリア、フランス、メキシコ、バミューダ島、セントトーマス島(カリブ海)、シンガポール、韓国、タイ、インドネシア、香港、フィリピンなど15ヶ国以上でしょう。同じところに繰返し行くことが結構好きですね。
Q:海外とのつながりはいつからですか?
岡部: 大学3年のとき、初めてグアムに遊びに行き、海外って面白いなと思ったのです。それからアメリカのサンディエゴで1ヶ月ホームステイした後、ニューヨークやマイアミ、サンフランシスコなどを10日間くらい旅行し、また4年の時に卒業旅行として1ヶ月位イタリア旅行し、海外旅行が大変好きになったのです。
Q:海外出張の頻度はいかがでしょうか。最近も多いですか?
岡部: 最初の会社のヒューレット・パッカードに入社し、海外にどんどん出張できるかなと期待したのですが、なかなかチャンスはなく、最初の出張は入社3年後の1994年の春でした。
今は年に3-4回ですね。出張には、平均すると四半期に一度は行く必要があります。その目的は、大きく分けて三つあります。
1つは、記者にアテンドしての出張、2つ目は、広報の国際戦略会議が年に2回あります。3つ目は、年1回7月にある社員総会です。世界から一万人近くの社員が集合し、ビル・ゲイツをはじめトップから直接、次年度戦略の説明があります。
今年は、ちょっと変則ですが、1月、5月、6月、7月と米国出張がありました。
次回は来年1月にやはりアメリカに出張します。
Q:御社の社員全体の海外出張は増えていますか?また、海外出張時の座席利用規程はありますか?
岡部: 出張は当然、増えています。特にアメリカへの出張が増えています。本社と連携した業務が増えているということです。
また、座席規定ですが、役員クラスはビジネスです。それ以下は部長でも平社員でもすべてエコノミーが基本です。距離にもあまり関係ありません。これは徹底しています。
Q:旅行会社の指定はありますか?
岡部: 会社として包括提携した旅行会社を通して様々な手配をしていただいています。
Q:旅行会社に望むことは?
岡部: やはり、利便性です。つまり臨機応変の対応をしていただけると助かります。それに手配の確実さが要求されます。
また、飛行機会社に対しては個人的には日本発のフライトの場合、やはり日本食をおいしくして欲しいと思います。とくに夕食によって印象が大いに変わりますよ。
Q:旅行会社に注文はありますか?旅行会社に求めるサービスの順位はいかがでしょうか?
岡部: 今はネットでフライトのチェックから予約まで何でも出来ますので、旅行会社はそれ以上の付加価値サービスが不可欠です。
ネットの方が情報を選択できるし、予約、キャンセルが簡単にでき、何の気兼ねもなく、自由にできるのでとても重宝です。
そこで、ネットにない知識やノウハウを提供してくれないと満足度があがらないと思います。それは対応の良さだとか、ネットにはないその旅行会社や担当者の方の経験を通したアドバイスやちょっとした情報提供とかでしょう。その辺の競争となるにちがいありません。
例えば、個人ではネットを使えない人、海外の知識・経験の少ない人たちあるいは、パック旅行に飽きて自分達独自で旅行したい人たちなどに、よりきめ細かな対応をしてあげるなどでしょう。
◆ニューヨークの持つ雰囲気が好き
Q:これまで数々の海外旅行をされてきた際、その準備で気をつけていることはありますか?

岡部: 出張期間は5日から長くて10日間ですので、スーツは1着、2着か、もしくはジャケットのみでネクタイも1本から2本で済ませます。ただ、替えズボンは3本から4本持参します。下着は基本的に日数分用意するので、ホテルでクリーニングに出したりはしません。
いつも準備するのは、電気シェーバー・胃腸薬それに肌(顔)の乾燥を避けるためのクリームなどは必ず持参します。パソコンと携帯電話はもちろんです。
Q:安全に関して何か秘訣がありますか?
岡部:とにかく密集や地下鉄・バスなどでは、常に四方八方に神経を行き届かせ、まわりをウオッチしておくようにしています。
タクシーを降りお金を払って残りをポケットに入れるのを見られると、狙われるので注意が必要です。それを逆手にとって小銭をポケットに入れ、大物は別のところに入れることもあります。
バッグ等はできるだけかけられるタイプを使っています。リュックタイプは私は使いません。
出歩く際もパスポートは必ず持参しますが、現金は少なめ。支払いはカードです。
Q:何かハプニングな出来事や思い出はありますか?
岡部: 1991年に初めてローマに行ったときは、ジプシーが多く、ゴミだらけの町でとにかく汚い町という印象でしたが、1997年に再訪した時は、少しきれいになった位の印象でした。
ところが、2000年に訪れたときは、キリスト生誕2000年を祝ってか、駅も通りもきれいになり、治安と美化に相当ちからを入れていることが良くわかりました。次に2001年はもっときれいになっていました。そして今年はさらに比べものにならないくらいきれいな町に変貌していたのには驚きと感動ものでした。
つまり、国民が、キリスト生誕2000年という歴史的な年の重みに誇りを抱いていることを実感しました。
同じような感じはニューヨークでもありました。1990年に初めて訪れてからこれまで4回ほど訪れていますが、行く度に美しくなり、また治安がよくなっていったことには実に感銘を受けたものです。前のジュリアーニ市長になってから特に治安がよくなったようです。
Q:旅行中に失敗したことはありますか?
岡部: これまで盗難にあったことは運よく一回もありません。もともと慎重な性格なのでしょうか、変なところには近づかないようにしています。
イタリアでジプシーに「タバコをくれ」としつこくつきまとわれたことはありますが、特に問題はありませんでした。
ニューヨークでは以前、一度当たり屋に出会いました。ちょっとぶつかった時に、ビンを落として割れたのを「弁償しろ」と迫られましたが、英語がまったくわからないフリをしていたら、あきらめて去っていきほっとしたことがあります。
◆家族で行きたいニューヨーク、印象に残るバミューダ
Q:家族旅行はいかがですか?どこに連れて行きたいと思いますか?
岡部: 今年は5月に家族旅行でイタリアに行きました。2002年生まれた息子を初めて海外につれていけました。次に家族を連れて行きたい国はアメリカ、それもニューヨークですね。新婚旅行でも行ったということもありますが。
Q:好きな国はどこですか?
岡部: 個人的に好きな国はイタリアです。イタリアが好きな理由は、歴史ものが大好きなことからです。イタリアには歴史的遺跡や美術品が多いので何度行っても見所があります。また、ファッションにも興味があるので楽しいのです。
最も訪れた回数の多い国はアメリカで、サンフランシスコがもっとも多い都市です。町としては、ニューヨークが大好きです。特に、ニューヨークの持つ雰囲気が好きです。旅行で短期間行くというよりもじっくり過ごしたい町ですね。
Q:世界の各地に旅されてもっとも印象に残っている国や町はどこでしょうか?
岡部: 各地それぞれ趣きが異なりますが、もっとも印象に残っているところをあげるとすれば、バミューダ島。もともと英国領のためか、全体が紳士の国という方が当っている。ステイタスを重じる厳格な国で、男性はバミューダパンツにブレザーという服装が一般的なので、それが独特の雰囲気をかもし出しています。日本人はほとんど見当たらないのも異国情緒を感じます。それに、外での食事もホテルでの買物なども、現金が流通していないのには驚きます。さらに、バスやタクシーでさえ、プリペイドカードで済ませることができるのです。レストランもがちゃがちゃせず、とにかく紳士的という表現がぴったりです。
また、海の青さがすばらしいのに加え、海岸の砂がサンゴのせいでピンク!そのコントラストの美しさといったらありませんね。
岡部 一志(おかべ・かずし)氏
マイクロソフト 広報部長
1991年 大学卒業後 ヒューレッドパッカード入社。 広報担当
1999年 マイクロソフト入社。 コーポレートマーケティング本部広報担当
2000年 広報グループ長
2005年 広報部長
会社生活すべて広報担当一筋で、自分の希望にそって仕事ができているのでとても幸運です。