航空券のVOID処理は発券当日−新たなルールが日本でも適用か

  • 2006年10月25日
 先ごろ日本旅行業協会(JATA)の海外旅行委員会において、航空券の発券ルールとして発券当日にVOID処理を行う「Same Day Voiding」が日本でも導入されることが進められているという報告を受け、JATAでは今後、IATA日本事務局との話し合いを持つ考えだ。IATA日本事務局はこのルールの適用について、インハウスやホールセーラーなどで構成する「システム研究会」に打診した模様。システムとしては、「Same Day Voiding」を適用できるものの、各社からルール適用による業界へ幅広い影響が及ぶことから、海旅委へ問題点が報告された。

 この「Same Day Voiding」は、現行のVOID処理の期間が1週間であるものを、発券したその日のうちにVOID処理しない場合は、全てRefund処理とするルール。VOID処理の場合、IATA代理店から航空会社に対して費用は発生しないが、Refund処理となると航空会社から旅行会社に対して、航空券の代金が返金されるものの、キャンセルチャージを引かれた金額が返金され、実質的に料金が発生する。

 この「Same Day Voiding」は10月1日付けで全世界に適用されているルールで、今年6月に開催された国際航空運送協会(IATA)の旅客代理店会議(PAConf)で決定したもの。VOID処理のタームは現在、1週間単位。日本では現段階で実施されていないものの「Same Day Voiding」が適用された場合、現状ではほとんどの券面の変更はRefund処理となる。海外旅行委員会では、現行の業務体系ではRefund処理の費用が膨大となることが懸案事項となったようだ。

 これが適用されると、経理処理のほか、IATA代理店から旅行代理店へ販売する航空券のVOID処理、Refund処理についての影響が及ぶほか、IATA代理店から旅行代理店を含む全ての旅行会社の資金繰り等々、幅広く影響が及ぶことが想定される。また、リテーラーからは消費者に対して、Refund処理について店頭等での説明がこれまで以上に必要となる、という意見も想定されるという。

 IATA日本事務局はこの件について、コメントはしていない。ただし、一部の旅行会社からは、「10月1日から全世界で適用するルールとしながらも、日本市場での取引環境に合わせた形態を模索している」というIATA日本事務局の動きも聞かれる。


 ただし、このルールが適用されると収益への圧迫は免れない。航空会社がIATA代理店をはじめとする旅行会社全体の流通に対して、航空会社側の経営状況等も考慮し、旅行会社側からは厳しいルールが適用されることは良し、としよう。ただし、この場合には旅行会社が手間のかかる部分についても一律のルールを持って扱うことが本来の姿だろう。例えば、eチケットへの移行でも、eチケットでは切れないセグメントがある場合の対処法、BSP Japanに加盟していない航空会社の発券への対応など、改善すべき項目は多い。効率化が図れるのであれば、コミッション減などを旅行業界は容認、効率化が図れない部分については「手間」の対価としての「手数料」を求める、という旅行業界としても一定のルールを持って要求する必要があるだろう。

 特に、国内旅行ではJR券の発券ではルール上は「Same Day Voiding」と同様であるほか、国内線の航空券についても発券した後はRefund処理となる。こうした観点を踏まえると、コミッションカットの動きや燃油サーチャージの対応など航空会社サイドから旅行会社サイドに対しての圧力が強まっていることと関連し、「Same Day Voiding」へ対処する方策を打ち出すのではなく、業界として、特に現場での実務作業を考慮した「手間賃」を考えに含めながら、ひとつの声でJATAなどがIATAなどに要望する必要があると思われる。