グアムの着陸料、無料化の効果と真の問題点−旅行会社の役割

空港の収入源は着陸料に限らず、様々な費用の項目が存在する。グアム国際空港で航空会社が支払うものは、例えば、搭乗橋使用料、エプロン使用料、イミグレーション・インスペクション料など。こうした費用に占める着陸料の割合は、機材や総重量によって料金が変わるものの、概ね10%から16%程度と低い。さらに、2006年度に搭乗橋の使用料が145.03米ドルのところ、2007年度に233.05ドルとなり、値上がりする項目もある。着陸料が無料となるものの、便数拡大へつながる動機付けとしてはやや弱い。
グアム国際空港では着陸料を無料化するものの、2006年度の出発旅客145万7437人に対し、7.7%増の157万373人の利用増を見込んでおり、空港の収入としては4.2%増を予測している。人員削減などコスト削減策は継続するが、空港全体としてコストのかかるところは適正な費用を徴収するようだ。
ただし、着陸料を減免する施策は、グアム側が日本市場をはじめとする観光客、特に航空機を利用する旅客を誘致、および路線維持にあらゆる方策を検討していく姿勢、としては一定の評価は出来るだろう。
▽本当の問題点はどこに潜むのか
実際に日本航空(JL)が減便したことで観光客の動向に影響を受けるサイパンを含む北マリアナ連邦は既に、着陸料をはじめ空港の使用料についても無料化する施策を打ち出している。さらに、2年目の半年間については半額とする施策を打ち出し、航空会社に対して就航の働きかけを強化した。就航後の集客にも配慮し、マリアナ政府観光局(MVA)のプロモーションを一体的に行うことも付記している。MVAによると日、米系の航空会社に「提案している」状態で、現段階でまとまった話は無いという。特に、大阪発の路線ではノースウエスト航空(NW)が運休することもあり、年間約5万人超の旅客需要が宙に浮いた形となっている。この穴埋めにまでは至らないかもしれないが、チャーター便の運航などに関しては良い感触も得ているようだ。
着陸料の無料化については、一定の評価が出来る施策ではある。ただし、グアム、サイパンとも、利用率は高いもののイールドが低い、という点を解消しなければ、抜本的な改善に向かうことは無い、とは航空、旅行業界ともに一致した意見だろう。今回、グアムにおいて日本航空会長の新町敏行取締役会長もアクティブ・シニアを中心とした単価の高い需要の開拓の必要性に言及しており、グアム政府観光局(GVB)、MVAもこうした点を考慮したプロモーションを打ち出している。
燃油サーチャージの徴収、コミッションカットなど、航空会社からの施策に疑問を投げかける旅行会社も多いが、観光地への送客は別次元の問題でもある。旅行会社として、魅力的な内容の商品の企画・造成、販売も本来の仕事であるはず。高品質の商品も登場しているものの、販売に結びついていない側面も見られるが、需要を開拓し、企画と販売を結びつけることが早急な課題といえるだろう。(S)