法律豆知識(97)、外国の弁護士事務所から訴状が送られてきた!!
<外国の弁護士事務所から訴状が来た!!>
外国の法律事務所から直接訴状が送られてきて、突然の出来事にパニックとなるというケースが増えている。このように訴状を送りつけるのは、アメリカの法律事務所に多い。最近は、旅行業界でもこのような事例が見られるようになっており、注意が必要だ。
ただ、このような事態に至ってもあわてることはない。これは「適法な送達」ではないからだ。送達先に対し、裁判所を通じた正式の送達をするよう要求するとよい。
このような場合、放っておいたらどうなるか、と質問されることも多い。放っておくと一種の欠席判決となり、相手の主張通りの判決が出てしまうことが多い。
ただし、この欠席判決は怖くない。なぜなら、正式の送達がなされていないので、民事訴訟法118条2号により、日本では効力を生じないからだ。
逆に、ノコノコとアメリカの法廷に出廷してしまうと、応訴したことになる。正式の判決として日本でも効力をもってしまい(同法118条2号)、厳重に注意して欲しい。送られてきた訴状に日本文の翻訳が添付されていることがあるが、それでも、その効力は上記のとおりである。
<正式の送達はどうするのか>
訴訟は、どこの国でも被告に訴状が送達されてスタートする。
正式の送達は、国際間でも必ず裁判所を経由して行われる。しかも、相互の裁判所が直接やりとりをするのでなく、その国の外務省を経由してなされるので、非常に時間がかかる。半年くらいはかかると思ってよい。
日本では、外国から正式な送達の場合、最初に、裁判所から電話連絡が来て、訴状を取りに来るか聞いてくる。この場合、裁判を起こされた以上、結論を出さないといけないことから、まずは訴状を受けとり、すみやかに弁護士に相談して対策をたてるべきである。
なお、正式の送達がなされたのに放置すると、今度は日本でも効力を有する欠席判決が出されるので(同法118条2号)、この点は注意してほしい。
<米国裁判所の管轄獲得は強引>
米国の裁判所は、自国に管轄を認めるということについては実に貪欲である。米国企業はさらに貪欲だ。管轄が無さそうであっても、とにかく、米国の裁判所に、訴状を出してみるというケースも多い。
他方、日本人は必要以上に、自分を相手に理解してもらいたいという習性があるので注意すべきだ。訴状を起こされても、アメリカには管轄がないとして争うことが可能であるにもかかわらず、日本企業スタッフが渡米して、相手会社に事情を説明に行くことも見受けられる。こうした行為自体を根拠の1つに、と言っても、他にも根拠が必要だが、米国での裁判管轄が認められてしまうということさえある。
いずれにしても、国際紛争は熾烈である。外国と訴訟が絡まったら、素人判断はせず、まずは専門の弁護士に相談して、次の対策を考えるべきである。
=====< 法律豆知識 バックナンバー>=====
第96回 法律家の観点から〜海外旅行の主流のPKGツアー
第95回 レストランでの火傷は誰の責任か〜TCSAレポートを参考に
第94回 拡大するインターネット取引と旅行業法の問題点
第93回 添乗員に対するセクハラ、旅行会社にも責任はあるのか
第92回 旅行業者のための「中小企業と新会社法」〜最終回
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※本コーナーへのご意見等は編集部にお寄せ下さい。
編集部: editor@travel-vision-jp.com
執筆:金子博人弁護士[国際旅行法学会(IFTTA)理事、東京弁護士会所属]
ホームページ: http://www.kaneko-law-office.jp/
IFTTAサイト: http://www.ifta.org/
外国の法律事務所から直接訴状が送られてきて、突然の出来事にパニックとなるというケースが増えている。このように訴状を送りつけるのは、アメリカの法律事務所に多い。最近は、旅行業界でもこのような事例が見られるようになっており、注意が必要だ。
ただ、このような事態に至ってもあわてることはない。これは「適法な送達」ではないからだ。送達先に対し、裁判所を通じた正式の送達をするよう要求するとよい。
このような場合、放っておいたらどうなるか、と質問されることも多い。放っておくと一種の欠席判決となり、相手の主張通りの判決が出てしまうことが多い。
ただし、この欠席判決は怖くない。なぜなら、正式の送達がなされていないので、民事訴訟法118条2号により、日本では効力を生じないからだ。
逆に、ノコノコとアメリカの法廷に出廷してしまうと、応訴したことになる。正式の判決として日本でも効力をもってしまい(同法118条2号)、厳重に注意して欲しい。送られてきた訴状に日本文の翻訳が添付されていることがあるが、それでも、その効力は上記のとおりである。
<正式の送達はどうするのか>
訴訟は、どこの国でも被告に訴状が送達されてスタートする。
正式の送達は、国際間でも必ず裁判所を経由して行われる。しかも、相互の裁判所が直接やりとりをするのでなく、その国の外務省を経由してなされるので、非常に時間がかかる。半年くらいはかかると思ってよい。
日本では、外国から正式な送達の場合、最初に、裁判所から電話連絡が来て、訴状を取りに来るか聞いてくる。この場合、裁判を起こされた以上、結論を出さないといけないことから、まずは訴状を受けとり、すみやかに弁護士に相談して対策をたてるべきである。
なお、正式の送達がなされたのに放置すると、今度は日本でも効力を有する欠席判決が出されるので(同法118条2号)、この点は注意してほしい。
<米国裁判所の管轄獲得は強引>
米国の裁判所は、自国に管轄を認めるということについては実に貪欲である。米国企業はさらに貪欲だ。管轄が無さそうであっても、とにかく、米国の裁判所に、訴状を出してみるというケースも多い。
他方、日本人は必要以上に、自分を相手に理解してもらいたいという習性があるので注意すべきだ。訴状を起こされても、アメリカには管轄がないとして争うことが可能であるにもかかわらず、日本企業スタッフが渡米して、相手会社に事情を説明に行くことも見受けられる。こうした行為自体を根拠の1つに、と言っても、他にも根拠が必要だが、米国での裁判管轄が認められてしまうということさえある。
いずれにしても、国際紛争は熾烈である。外国と訴訟が絡まったら、素人判断はせず、まずは専門の弁護士に相談して、次の対策を考えるべきである。
=====< 法律豆知識 バックナンバー>=====
第96回 法律家の観点から〜海外旅行の主流のPKGツアー
第95回 レストランでの火傷は誰の責任か〜TCSAレポートを参考に
第94回 拡大するインターネット取引と旅行業法の問題点
第93回 添乗員に対するセクハラ、旅行会社にも責任はあるのか
第92回 旅行業者のための「中小企業と新会社法」〜最終回
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