日本航空・西松社長、新株式発行は中期計画を視野に判断、高いコスト効果も材料視

  • 2006年7月31日
 日本航空(JL)の西松遥代表取締役社長は28日、新株式の発行、および株式の売り出しに関する考え方などを説明した。会見で西松社長は、「説明不足であった点はお詫びしたい」としながら、「米国債公募において、コンプライアンスの観点から弁護士からのアドバイスがあった」として結果的に説明が不足したものの、米国を強く意識した対応であったという趣旨を表明した。今後、株主に対してはホームページ、株主通信などを通じて十分に説明を行う考え。

 今回の対応について基本的な考え方は、既に明らかにしている中期経営計画において、羽田、および成田の発着枠の増加を視野にした対応であることを強調。中期経営計画では(1)新生JALに向けた安全運航に関する集中的な投資、(2)国際旅客事業で低収益路線の縮小と機材のダウンサイジングで収益改善、(3)収支改善策の継続的な実施を掲げており、今回の資金調達により目的は2006年から2010年まで86機の航空機購入をする投資。このうち、機材購入によるダウンサイズでイールドの向上、燃費効率の向上によるコスト効率のアップを狙う。

 現在、日本航空ではボーイング747型機をはじめとする大型機が62%にのぼる。西松氏は「ブリテッシュ・エアウエイズが24%、ルフトハンザドイツ航空が13%、全日空が21%などと他社の比率からすると大型機が多い」と他社の機材構成を挙げながら、B787型機の中型・長距離機材を投入するメリットを強調した。

 中期的には、2009年には羽田空港の発着枠が現在から約11万回増え、このうち3万回は国際線に振り分けられる。これにより、「国内線と短距離国際線の運用をおこなう。羽田/金浦線は収益性が高い」として、新たなビジネスにつながる考えを示し、現時点で機材のダウンサイズ、燃油高騰への対応などの施策を打たない場合には「致命的になる」とし、「競争力強化、ビジネスチャンスを生かす」側面を強調した。

 時期が今であることについては「乗務員の訓練なども視野に入れ、前広に次の体制を整える必要がある」と語り、「先のステップを考えるとあまり待てない」ともコメント。特に機材を小型化することによる効果として「ヨーロッパ路線では15億円から20億円の業績改善が現れている」とも語り、今回の決断となった考えを示している


▽旅客は回復途上

 また、旅客数についても前年比減であるが、供給量も大きく絞っているところ。例えば、5月の輸送実績は旅客数では前年比4.2%減の105万1384人と下回っているものの、供給座席数を示すASKは11.9%減の74億7668万9000座席キロと大きく供給を絞り、旅客数はこの減少幅を上回っている。搭乗率では前年比で5.3ポイント改善しており、国際線旅客数は「旅客が戻っていないわけではない」と説明。さらに「景気回復などで総需要が戻る」ことに加え、「(JLが)競争力を挙げること」で一段と上向く見通しを示している。特に、安全面でのトラブルが旅客の獲得に影響しているとの認識もあり、「ピークに向けて、気を引き締める」とも語った。