JL・中期経営計画、06年度国際線黒字化、10年度の営業利益率5.3%目標

2006年度から2008年度は安全水準、サービスの向上、機材のダウンサイジング等で固定費を縮小し、柔軟な企業構造をつくり、2009年の羽田空港の再拡張、成田空港の発着枠拡大をにらんだビジネスチャンスへの体制を整える。2005年度は500億円を越す営業損益を計上する国際線事業の黒字化が経営的な当面の課題となる。
▽国際線の黒字化への道筋
国際線の基本は高収益、高成長路線に経営資源を集中し、機材の若返りによる競争力強化、ビジネス旅客を主として高イールドを維持する。路線展開では、東南アジア、中国線を重点路線とする。これについてはジャルウェイズも同様に観光路線から東南アジア線などビジネスを含む路線へ拡大する。
機材ではボーイング747型機などの大型機からB777型機など中型機へ供給を絞る。現在は「供給が市場とミスマッチしている」との見方をJLでは示しており、供給量の減少でロードファクターの増加をはかり、2005年で65.6%から06年には67.9%、中期計画の最終年度の2010年には72.2%まで高める。計画では2009年以降は発着枠の増加から、便数の増加に伴う供給の増加も見込んでいる。
収支については、機材のダウンサイジングで1便あたり年間15億円から20億円の改善を見込む。例えば、B747-400型機の325席をB777-300ER型機の292席へ変更すると、収入で約1%減となるが、費用は10%減で、利益2倍ほどとなる。既に、ヨーロッパ路線では2006年度中にイタリア線を除く全線にB777型機を投入する予定になっている。
▽観光需要対応は「公共性」、路線拡大は09年以降
ただし、懸念は旅行総需要への影響。計画発表で中型機への変更は、「ビジネスクラス、ファーストクラスなど単価の高い座席については供給量を確保し、エコノミークラスをダウンサイズする」(取締役・経営企画室長の土屋文男氏)とも言及しており、機材のダウンサイジングで影響を受けるのは、JLのエコノミークラスを利用する旅行商品に及ぶものと想定される。
国際線の不採算路線の撤退について、次期CEO兼社長の西松遙氏は「観光デスティネーションへの路線網は『公共性』という意味も深い。同時に、企業として利益を追求する側面もある。公共性とネットワークを展開するマイレージへの効果も含め考える」と言及。サイパン線など既に運休、撤退した路線はJO運航でも赤字で、燃油費の高騰も引き金となり撤退せざるを得ない状況であるとの見方も示している。ただし、定期便で収益性が厳しい場合は、既に実施しているがチャーター便を展開するなど、地方都市で実施しているモデルが採用される方向。
ただ、観光需要の側面では定期便の利用は厳しい側面が見受けられるものの、体制が整えば、2009年以降の発着枠の増加は期待が高い。「航空会社のビジネスモデルを換えることになる」(西松氏)と言及する羽田国際化では、一日2便運航の羽田/金浦線の「ロードファクターは85%で、ビジネス旅客が多く、イールドも高い」としており、近距離国際線の発着枠の増加による供給増は旅行商品にも大きな可能性があると言える。
▽安全面をはじめとした課題は組織内の情報交換が重要
安全面からの信頼回復、顧客志向の方向性は「安全推進本部」の設置をはじめ、ヒューマンエラー改善を目指したマニュアルの見直し、安全教育研修の充実などを上げる。また、整備で200名の増員を行うほか、安全情報データベースの構築や運航マニュアル電子化などIT関連へ投資するなどで合計600億円を投資。これに上乗せする形でサービス品質の強化では650億円の投資を行う。
こうした投資を行うものの、西松氏は昨日の会見に引き続き、「十分、技術は高い。情報が次につながらないことが課題」として、10月に控える事業会社の統合である程度は解決されるとも見方を改めて示した。2005年度は安全問題で国内線200億円、国際線100億円、合計300億円程度の収入減とはじくが、こうした状況は「一日でも早く回復させることが使命」としながらも、2006年度中の影響は残るとの収益予想を立てており、整備、パイロットや客室乗務員などの運航、セールス、支店など様々な視点から現場と意見をすり合わせながら、舵取りをする考えだ。