観光庁村田長官、旅客税増収でオーバーツーリズム対策強化 市場多様化も進展
観光庁村田茂樹長官
観光庁の村田茂樹長官は6月17日の定例会見で、5月の訪日外国人旅行者数が前年同月比3.6%減の約356万人となったことについて、中国市場の大幅減少が全体を押し下げた一方、19市場で5月として過去最高を更新しており、市場の多様化が進展しているとの認識を示した。また、2030年の海外旅行者数2000万人目標の実現に向け、官民連携を本格化する考えを改めて示した。
村田長官は5月の訪日外国人旅行者数について、中国市場の落ち込みが全体の減少要因になったとの認識を示した一方、「中国の減少がある中で3.6%減にとどまったことは、その他の国・地域が非常に好調であることの裏返し」と述べた。1~5月累計では前年同期比1.1%減とほぼ前年並みで推移しており、短期的な変動ではなく長期的な傾向を見極める必要があるとの考えを示した。
| 月 | 訪日外国人数 | 出国日本人数 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025年 | 2026年 | 前年比 | 2025年 | 2026年 | 前年比 | |
| 1月 | 3,781,629 | 3,597,881 | 95.1% | 912,298 | 1,072,602 | 117.6% |
| 2月 | 3,258,491 | 3,466,848 | 106.4% | 1,181,062 | 1,093,250 | 92.6% |
| 3月 | 3,497,755 | 3,619,159 | 103.5% | 1,423,449 | 1,518,999 | 106.7% |
| 4月 | 3,909,128 | 3,692,200 | 94.5% | 961,386 | 1,042,089 | 108.4% |
| 5月 | 3,693,587 | 3,559,900 | 96.4% | 1,076,756 | 1,127,400 | 104.7% |
| 6月 | 3,377,985 | 1,054,045 | ||||
| 7月 | 3,437,118 | 1,205,435 | ||||
| 8月 | 3,428,406 | 1,648,279 | ||||
| 9月 | 3,267,228 | 1,394,525 | ||||
| 10月 | 3,896,524 | 1,243,575 | ||||
| 11月 | 3,518,195 | 1,330,014 | ||||
| 12月 | 3,617,791 | 1,300,741 | ||||
| 1~5月 | 18,140,590 | 17,936,000 | 98.9% | 5,554,951 | 5,854,300 | 105.4% |
出典:日本政府観光局(JNTO)
5月は23市場のうち19市場で5月として過去最高を更新し、インドと中東地域は単月でも過去最高を記録した。中東市場については、日本―トルコ、日本―イスラエル間の航空便の増加や復便に加え、トルコの大型連休「イード・アル=アドハー」による旅行需要が大きく寄与したと説明した。
また、宿泊旅行統計でも東南アジアを中心に宿泊者数が増加していることに触れ、「観光地・観光産業の強靱性を高めるためにも市場の多様化は極めて重要」と強調した。第5次観光立国推進基本計画に基づき、高付加価値旅行商品の造成や観光コンテンツの多様化、各市場へのプロモーション強化を進める方針を示した。
訪日消費額については、2030年の1人当たり消費額25万円の目標に対し、2025年は約23万円、2026年1~3月期は約22万円で推移していると説明。欧米豪市場へのプロモーション強化や高付加価値コンテンツの充実、地方誘客や長期滞在の促進を通じて目標達成を目指す考えを示した。
一方、アウトバウンドでは16日に外務省、日本旅行業協会(JATA)、駐日外国政府観光局協議会(ANTOR-JAPAN)との共同記者会見を開催したことを報告。第5次観光立国推進基本計画で掲げた2030年の海外旅行者数2008万人の実現に向け、関係省庁や業界団体と連携して需要喚起を進める考えを示した。
7月から始まる旅券手数料の引き下げについては海外旅行促進を後押しする施策と評価。一方、同時に実施される国際観光旅客税の引き上げについては、2026年度旅客税を財源とする予算は490億円から1300億円へ拡充され、オーバーツーリズム対策や地方分散、交通ネットワーク強化、観光コンテンツ造成など、6000万人・旅行消費額15兆円の目標達成に向けた施策の財源として活用する考えを示した。
このほか、ホテル予約サイトを装ったフィッシングサイトへの誘導事案についても言及。旅行者に対し、不審なメッセージのリンクを開かず、予約サイトの公式窓口で予約内容を確認するよう呼びかけた。
また、民泊制度にも言及し、住宅地などで生活環境への影響が懸念される地域では、自治体が条例により営業を制限できることを明確化する技術的助言を今月中にも通知する方向で検討していることを明らかにした。2018年の住宅宿泊事業法施行から7年が経過し、騒音やごみ問題など地域課題が顕在化していることを踏まえた対応としている。