星野リゾートが考える山のホテルとは?「LUCY尾瀬鳩待」宿泊レポート

  • 2025年9月22日

快適性を重視した「心揺さぶる山ホテル」

 LUCYのコンセプトは「心揺さぶる山ホテル」。福井氏によれば「既存ブランドと分野やターゲットが異なる」ため、新ブランドの立ち上げが必要だったという。

 山岳観光は準備や設備の不安などのハードルを感じるものの「行ってみたい」という潜在需要は一定程度ある。LUCYではこうした山に興味があるが行ったことがない、あまり行かない層をメインターゲットに展開していく方針だ。

「LUCY」は19世紀英国の女性旅行家で日本にもやってきたイザベラ・ルーシー・バードに由来

 LUCYでは「興味を持ってもらうための滞在のしやすさや、親しみやすさを考えたとき、そういう方々が何を欲しているか」(福井氏)を考え、6つのブランドプロミスを掲げた。それが「プライベートな寝室」「いつもの温水洗浄トイレ」「シャワー&パウダールーム」「肉・魚・卵の贅沢ごはん」「ホテル内にラストコンビニ」「充電・Wi-Fi無制限」の6つ。いずれも山での滞在を快適にするための取り組みだ。

LUCY尾瀬鳩待の夕食「豚汁ご膳」。ボリュームたっぷりな豚汁は食べ応えがある

 福井氏はLUCYについて「星野リゾートとしては増やしていきたいブランドの一つ。山岳観光を一つの分野とし、旅行者にいろいろな地方、自然のある場所に行っていただきたいと考えている」と意欲を示した。ただし、現時点ではLUCYブランドの2軒目については、具体的に決まったものはないという。

今年はすでに満室 3年で稼働率8割をめざす

 それではいよいよLUCY尾瀬鳩待について紹介しよう。コンセプトは「最高の尾瀬ハイクがはじまるホテル」。福井氏は「楽しみ方や体を休めることもそうだが、いざ出発する前の準備として何ができるか。滞在を含めて良い体験になってほしいという気持ちを込めた」と説明した。

 初年度は9月1日から10月25日までの開業で、2026年以降は尾瀬の山開き後の春先から10月頃まで営業する。予約の動きもよく、今年の販売分については満室でキャンセル待ちが発生しているところ。星野リゾート会員向けの先行販売をしたが、同社によれば約4割がその時点で埋まったという。

LUCY尾瀬鳩待のフロアマップ。さまざまな施設が巧みに配置されている

 好調なスタートを切ったLUCY尾瀬鳩待だが、今後の目標について、福井氏は「始めたばかりの手探りな状態だが、今後3年で平均的に80%埋まるようにしたい」と意気込みを語った。尾瀬はミズバショウや紅葉のハイシーズンと9月のローシーズンがあるが、平均的にしっかり埋まるよう取り組んでいく方針だ。

 同氏によれば以前は団体旅行ブームで盛り上がった尾瀬だが、現在は個人旅行者の利用がほとんど。旅行形態が変わるなかで「いかに個人客がアクセスしやすくするか」が市場拡大に必要との考えだ。

 LUCY尾瀬鳩待のメインターゲットは30代の個人旅行者で、「おひとりさま」から家族旅行まで幅広くみている。現在の尾瀬のメインの客層は60代のアクティブシニア層だが、ターゲティングの成果もあってか、LUCY尾瀬鳩待の利用者は20代から30代の割合が多い。福井氏は「尾瀬は1度来てみるといろいろなシーズンに来たくなる。リピーターは約70%なので、若い方に一度来ていただき、長い目でのリピーターとなってもらえれば」と期待を示した。なお、外国人は全体の10%程度。韓国や台湾、マレーシアなどアジア圏の旅行者の割合が高めだという。

LUCY尾瀬鳩待のオリジナルボトル。おしゃれなデザインはターゲットにもぴったり

 今後の販売戦略については全25室という小規模ホテルのため、当面は星野リゾートでの公式サイトを窓口に、直販に注力する。ただし福井氏は「来年販売を開始した時の状況ではさまざまな方法を検討していくかもしれない」と話した。

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