ニッケイ料理で注目集めるペルー、日本市場に「南ルート」訴求 国際空港が大幅拡充

  • 2025年8月6日
ジェニファー・ピサロ氏

 ペルー政府観光庁は6日、都内でメディア向けイベントを開催し、アジア太平洋統括マーケット・エグゼクティブのジェニファー・ピサロ氏が観光戦略を紹介したほか、山形大学の坂井正人教授がナスカ地上絵に関する最新研究成果を発表した。

 ピサロ氏によると、現在日本からの観光客数はコロナ前の水準には戻っていないものの、観光庁は段階的な回復と新たなプロモーションを進めている。日本市場向けに注力するのが、リマ、イカ、アレキパ、プーノを中心とする「南ルート」で、自然・歴史・美食・文化を融合させた新たな周遊モデルの形成に取り組んでいる。

 このルートには、チチカカ湖やコルカ渓谷などが含まれているが、その他のエリアでは、長期滞在者向けにアマゾン地域ロレトでのクルージングやエコロッジの魅力を訴求した。また、ニッケイ文化を背景とした美食観光では、リマにある津村光晴シェフによるニッケイ料理レストラン「Maido」が2025年版「世界のベストレストラン50」で1位を獲得しており、食を通した観光促進に期待がかかる。

 一方、観光インフラ面では、6月に本格稼働を開始した新生ホルヘ・チャベス国際空港に注目。空港拡張とともにホテルやレストラン、商業施設を備えた「エアポートシティ」構想を展開しており、空港そのものを観光・経済拠点とする動きが加速している。また、新ターミナルではセキュリティチェックの簡素化が進み、靴の着脱や飲料の取り出しが不要となるなど、出国時の利便性が向上している。宿泊施設についても既に開業済みで、今後さらに2軒の開業が予定されている。

 イベントでは、山形大学・坂井正人教授によるナスカ地上絵の最新研究も発表された。2023〜24年にかけて実施されたAI支援の現地調査により、新たに248点の地上絵が発見され、その多くが「人間」「家畜」「猛禽類」など特定のモチーフに基づいて小道沿いに配置されていることが明らかになった。これは、地上絵が単なる図形ではなく、物語性や価値観の伝達を担うものとして機能していた可能性を示しているという。

 教授は「地上絵は巡礼路に沿って構成されており、信仰や教育と深く結びついていた。現在は保全と観光活用の両立を目指しており、11月には観光地化に向けた視認性向上のプロジェクトを開始する」と語った。

 ペルー政府観光庁では、旅行会社向けの支援としてBtoB施策にも注力。ツーリズムEXPOジャパンへの出展やJATAとの連携により、日本市場での露出を継続的に確保している。ピサロ氏は、南ルートや地方観光地の紹介を通じて、ペルーの多様な魅力に触れてほしいとの考えを示した。