キャセイ、「デュアルブランド」で多層的需要に対応 日本市場への投資も継続

  • 2025年7月11日
ネルソン・チン氏

 キャセイパシフィック航空(CX)北東アジア地区総支配人ネルソン・チン氏が、このほど都内で開催されたイベントに合わせメディア取材に応じ、香港国際空港の拡張を受けたネットワーク拡充の見通しや、LCCとのすみ分け戦略、さらには日本市場を含む今後1~3年の重点施策について語った。需要回復が進む中での成長機会と、グループ全体での市場対応力の強化方針が明らかとなった。

 2024年11月より、香港国際空港は3つの滑走路の同時運用を開始した。これにより年間発着枠の増加などCXもその恩恵を受ける立場にある。チン氏は、「この運用拡大により、より柔軟なスケジュール提供が可能になり、日本発着便の利便性向上やネットワーク拡大が可能となった」と述べた。

 すでに日本から香港へは、6空港から1日18便以上が運航されている。今後はこうした基幹路線の増便に加え、地方都市への展開も視野に入れているが、「目的地側のスロット確保が不可欠で、特に羽田や福岡のような混雑空港では調整が鍵になる」として慎重な姿勢も見せた。

 グループ戦略として注目されるのが、キャセイ本体とLCCの香港エクスプレスによる「デュアルブランド体制」。チン氏は「フルサービスを担うキャセイと、比較的需要の少ない路線にも就航できる香港エクスプレスが役割を分担することで、北東アジア全体における路線展開の幅が格段に広がっている」と説明した。

 香港エクスプレスはニッチなポイント・トゥ・ポイント路線で強みを発揮し、東南アジアや日本の地方都市間などを中心に展開。これにより、価格志向の高い層からプレミアム志向の利用者まで、あらゆるセグメントに対応できる運航体制を構築している。

 今後1~3年の重点施策としては、顧客体験の質に関するKPIの強化が挙げられた。具体的には、定時運航率(OTP)やNPS(ネット・プロモーター・スコア)などの指標を通じて、ブランド価値の向上と顧客満足度の定量的評価を進めていく方針だ。

 また、日本市場ではポップカルチャー関連業界やスポーツ団体といった移動頻度の高いグローバル顧客層への対応も強化しており、旅行者ニーズが多様化するなかで、その変化に応じた提案ができる体制を整えている。

 チン氏は直近の傾向として、「若年層や女性旅客の比率が高まりつつあり、乗継需要も前年比35%増を果たした」と強調。スロットや地上オペレーションのリソース確保という課題を認識しつつも、香港をハブとしたネットワークの競争優位性を活かし、今後も拡張を進めていく意欲を示した。