海外出張手配は30年前の状態に戻った?エムハートツーリスト代表が明かす、コロナ後の業務渡航市場の動向

  • 2024年4月5日
-コロナ5類移行からまもなく1年というなかで、業務渡航の戻りはいかがですか?

辻本 他のグループ会社などを見ても19年の半数を上回る程度まで渡航者数が回復した状況です。この数字は、回復期としては後半の段階にあると捉えており、業務渡航の件数がコロナ禍以前と同じレベルに戻ることはないと考えています。

 原因として、一つはWeb会議の普及から現地に行かなくても済むということ。それから人材不足の状況で渡航している余裕がないということも見受けられます。また、直近で目立つのは渡航にかかる費用のコストアップが影響していると感じております。

 法人の海外出張の経費全体で見れば、為替変動のほか、飲食費、交通費、宿泊費などの高騰の影響で、件数では下回っていても、旅費全体では19年レベルになっていると感じていて、出張一回あたりのコストはコロナ禍以前とは全く異なっています。

 一般的には、企業の出張予算の管理は、「何人行ったか」ではなく「どれだけ経費がかかったか」だと思いますので、一回あたりの人数を以前に比べ少なくしたり、社内的な会議などは極力Web会議で解決し対外的なものが優先される傾向にあります。そのなかで、最近では新たな提携や海外進出などのプロジェクト、商談会などのイベント関係が重視されていると考えております。

emheart
-手配側の業務負担はいかがでしょうか?

辻本 航空手配に関しては、ほぼ以前のプロセスに戻ってきましたが、ビザ手配の業務負担が増えています。中国のように、以前は免除されていたものが必要になったりと、ビザだけで言えば業務量はかなり増えています。また、ビザ取得が不透明の状態だと、航空予約にも影響が出ますので、そこも業務増の要因となっています。

-業務負担は増えたとのことですが、人材の充足度はいかがでしょうか?

辻本 昨年中国のビザ手配が急激に増えた段階では、一時的な不足はありましたが、現在は比較的安定しております。コロナ禍においては、日本旅行グループ内への出向や、他の受託事業の中でやりくりしてきたこともあって、最低限運営できる人員は常に確保してきました。

 今後は、若手の定着の部分が課題となりますが、システム刷新など社内プロセスの改善を行うことで省力化にも取り組んでいきたいと思います。

 また、システムの部分で言えば、今後オンラインで手配できる商材が増えることで、出張者ご自身で予約いただくことが多くなり、結果として手配側の業務負担が軽減されると見込んでいます。

-「出張なび」では海外の手配も可能でしょうか?

辻本 機能はあります。国際線手配も積極的にセルフブックで展開していきたいのですが、航空ルールなどの複雑さ故に、ユーザーの理解度が追い付かない懸念があります。プロでも理解するのが難しい部分がありますので、そこを完全にセルフブックに一本化するにはまだ時間がかかる状況です。

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