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モバイルファーストとオールインワンでシェア拡大、グローバルOTAが見る日本市場-Trip.com勝瀬博則氏

-国内外のOTAとの差別化のポイントは何でしょうか。

勝瀬 Trip.comはOTAのカテゴリーにありますが、特に力を入れているのは「モバイルファースト」という部分です。我々が提供するアプリは地域を入力するとホテルが出てくるといった単純なものではなく、飛行機、鉄道、ホテル、アクティビティから旅先で現金が足りないときにお金を貸すサービスまで、旅行のエコシステムをアプリ内で作っています。旅に関する情報収集から予約まで全てアプリで完結できるわけです。また、我々は旅行に関わるどのような問題も、24時間25言語でサポートしています。モバイルの中に旅のコンシェルジュがいるイメージです。

 モバイルファーストとオールインワンを充実させることが、お客様メリットの最大化であると思っています。当然安い料金で提供することも重要ですが、必ずしもそれだけではないということです。

 よくCtripがなぜ中国でナンバーワンになれたかという質問を受けます。貧富の差が日本よりも激しい中国で大きなシェアが取れている理由は手厚いサポートです。Ctripはホテルでもマーケットシェアを取っていますが、スカイスキャナーも傘下にあり、フライトのマーケットシェアが非常に大きくなっています。欠航や空港の閉鎖などのトラブルがあったとき、一番手厚くサポートし、お客様の問題の解決をし続けたのがCtripでありTrip.comグループでした。その点を非常に高く評価され、お客様の信頼を得ることができました。

 7割のマーケットシェアを持っていると、当然富裕層のお客様も利用されます。我々は20億円以上の金融資産を持つ方を富裕層と定義していますが、そのうち約6割が我々のサービスのユーザーです。そしてこうした富裕層のお客様の6割が30代で、6割が女性であり、SNSで情報を手に入れ、スマートフォンで予約し、トラブルがあったときもスマートフォンで全て解決する世代です。非常に忙しい人たちなので、コストだけでなくオポチュニティコストをしっかりと下げていくことが重要で、そこをケアしています。しかも我々は、どのお客様も同じレベルでサポートします。

 中国ベースの会社ということで、サービスレベルに疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、客層が幅広く、安定して収益が得られることで、このようなサービスが実現できています。

-先般、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)と共同で世界の旅行者の間で持続可能な観光への意識が高まっているという調査結果を報告されましたが、今後の具体的な取り組みについてお聞かせください。

勝瀬 サステナビリティは旅行業界全体が注目をしているエリアで、今後の大きな、そして長期的なトレンドだと思います。ただ「SDGs」という言葉もそうですが、具体的に何かと言われると、まだまだこれが本筋だというものは提示されていないかもしれません。今はルーティングの際にできる限り直行便を選ぶことや、環境に配慮した素材やサービスを提供する会社を選ぶなど、各社が手探りで提供している状態だと思います。我々も一体どういうものがお客様の求めるサステナビリティなのか、また旅行事業者としてお客様にご提案すべきサステナビリティなのかを探っている状況です。

 ネットの会社の優れている点は、いわゆるA/Bテストをして、お客様の求めていることは何かをほぼリアルタイムで調べられることだと思います。我々が思ったことをお客様に押し付けるのではなく、様々なオプションとしてお客様に選択をしていただける機会を増やし、それを地道に続けていくことが必要だと思っています。

-ありがとうございました。