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JTB山北社長、2023年の最大のテーマは海外旅行の復活、機運醸成に注力-新春インタビュー

  • 2023年1月6日

地域開発や街づくりへの投資も積極的に
デジタル化とグローバル化の流れに対応

-「ツーリズム」「ビジネスソリューション」「エリアソリューション」の事業領域の目標達成度合いを教えてください。
交流創造事業の全体像(*クリックで拡大)

山北 ツーリズムについては、お客様に寄り添うことに力を入れ、その一つとして、申し込みの段階から着地でのお客様の体験の改善に取り組んできました。申し込み段階ではオンラインとオフラインをシームレスに繋げるOMOの取り組みができたと思っています。それでも、デジタル化はさらに進めなければならないと考えており、まだ道半ばというのが実感です。

 また、コロナ禍で社員も旅に出る機会が減りましたが、再び社員研修なども増やしていきたいと考えています。人の価値をどのように高めていくかという観点から、もう一度旅に対する思いを高めていきたいと思っています。

 エリアソリューションでは、地域に目を向け、仕入れ機能もかなり地域に移しました。今後も、地域の事業パートナーや行政などとタッグを組んで、地域づくり自体に取り組んでいく考えです。加えて、デジタルソリューションの提供もかなり進んだと思っています。例えば、発券システムの「グッドフェーローズJTB」、アクティビティの管理システム「JTB BÓKUN(ボークン)」など、地域の事業をワンストップで管理できる仕組みの導入もDMOや観光施設でかなり進みました。さらに、宿泊施設に対するデジタルソリューションも進みました。

 それでも、本当の意味で、地域開発や街づくりに関わっていくにはまだ足りないと思っています。様々な地域とお話をさせていただいており、具体的な話も進んでいます。MaaSも含めて、この分野が来年の投資の大きな部分になると思います。

 ビジネスソリューションについては、イベント中止や出張控えで停滞した感じはありますが、アカウントベースドマーケティング(ABM)で企業の課題をあらためて考え直す時間ができました。より深いソリューションの軸ができつつあります。社員満足度を高めるEVP(Employee Value Proposition)のコンサルティングができる体制も整えるなかで、「HRテック」の仕組みも進化して、多くの企業に導入していただけるようになりました。

 また、ハイブリッドイベントの経験も積んできました。新しいイベントはリアルに戻っていますが、オンラインを交えることで、参加者が何倍にも増えます。これをデータマーケティングにつなげていく流れもできつつあります。東京オリンピック・パラリンピックでは地域や企業同士のつながりも深まり、地域開発関連でも企業間連携が構築されています。

-2023年の展望と期待をお聞かせください。

山北 国際交流の再開に大きな期待をしています。まずはインバウンドをしっかり取り込んでいきます。航空キャパシティが増えれば、訪日旅行者はもっと増えると思います。新しい体験が求められており、また従来のオーバーツーリズムを避けるために、地域への分散化が必要になると思います。サンライズツアーでは、新しいルートとして、北陸新幹線の延伸を利用した日本海側の「レインボールート」を開発しています。また、アドベンチャートラベルの取り組みも進めています。

 来年の最大のテーマは海外旅行の復活です。物価高、燃油サーチャージの高止まり、円安などで価格は上がっていますが、需要を戻すことで下がる部分もあると思います。

 いろいろな仕掛けをしていきたいと考えていますが、まずは海外旅行の機運を高めていくことが大切になります。海外旅行の復活には価格以外にも心理的な壁があると思います。その壁を取り払うためにも、広告宣伝は積極的に展開し、海外旅行のムーブメントを起こしていきたいと考えています。また、その一環として、旅先となる国や地域から、ウエルカムメッセージを出してもらうような流れを作っていきたいと思っています。

 海外旅行ではダイナミック化を進めてきましたが、添乗員付きツアーも根強い需要があります。特に目的型ツアーは需要が高いため、企画性の高い商品を提供していく考えです。

-海外旅行の回復の時期はいつごろになるとお考えですか。

山北 本格的な回復には2、3年かかるのではないでしょうか。価格面、心理面、キャパシティの問題が解決される必要があります。しかし、2025年には、2019年の2000万以上に伸びると見ています。少し時間はかかるかもしれませんが、回復基調に乗ると成長の勢いは増すと見ています。

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