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One to Oneマーケティングでロイヤルゲスト作りを目指す、三重県観光マーケティングプラットフォーム

  • 2022年12月5日
-観光分野はデジタル化が遅れ気味ですが、今回の事業を通じて三重県の観光地づくりや事業者のDX・IT活用にどのような変化がもたらされると思いますか。

川口 気仙沼の成功事例で感じたのは、意思決定の仕組みを変えられる可能性です。地域を構成するさまざまな立場の人たちが、「データ」や「数字」という明確な物差しを基に、皆で「次はこうしていこう」と話し合えることが観光地づくりでは必要不可欠であり、そのための取り組みこそが、デジタルを通じて地域を変革していくというDXと言えるのではないかと考えています。今回の事業を通じて、観光地づくりの議論に必要となるデータを事業者さんと一緒に収集し、事業者さんのマーケティング活動のサポートや観光地のマーケティングを推進することができればと考えています。

 質問からは少し離れますが、我々が現在掲げている目標はロイヤルゲストにリピートしていただける持続可能な観光地づくりであり、それによって最終的に目指すのは地元の事業者や住民が豊かになり地域が元気になることです。DXについては、その最終目標を達成するための、あくまでも手段だと感じています。県内のあるエリアを訪れた際に偶然入ったお土産物屋さんでそれを痛感しました。すごく気さくな店長さんから「兄さんコーヒーでも飲んでって」と声を掛けられ、棚に並んでいる海産物の仕入れの話を教えてくれるなど、ホスピタリティにあふれた応対をしてくれました。聞けば客の多くは店長さんのファンで、大半がリピーターとのこと。「目先の利益を追わずに心を込めて仕事すれば、お客さんは後からついてくる」といい、コロナ禍中も店の状況を心配するリピーターが支えてくれたので大丈夫だったと話されていました。顧客管理の方法に興味が湧き「お客さんの名簿はあるんですか?」と尋ねると、「そんなもの無くても顔を見れば全部分かる」という答えでした。

 このお土産物屋さんにDXは不要です。ただし誰もがこのようなスタイルで商売できるわけではありません。お店のファンをつくっていく取り組みを、デジタルを活用した仕組みとして再現できれば多くの事業者に役立つはずですし、お店のファンを地域のファンにしていくための基盤を作り、事業者やDMO等の関係者が一体となってデータを活用したマーケティングができるようにサポートをすることが、県の役割だと認識しています。

-最後にトラベルビジョンの読者にメッセージをお願いします。

川口 観光分野におけるDXの取り組みには様々なものがあり、行政やDMOとしては、どこから手をつけてよいか難しい部分があると思います。デジタル化や観光振興はあくまで手段ですので、地域の課題を解決するため、目的を明確にして取り組むことが大切なのではないかと考えています。我々の取り組みはまだまだ道半ばですので、良い事例があれば教えていただき、一緒に取り組みを進めていければ嬉しいです。

糸川 観光産業の仕事は極めて属人的で、その部分では素晴らしいおもてなしがあります。しかし産業として見ると生産性が低い面が否めません。その分、IT活用やDXの伸びしろが多いとも言えます。川口さんが紹介したお土産物屋さんが、もしもITリテラシーが高くデータを残せれば、次の世代に多くの事柄を伝えることが可能で、人材育成にもつながります。だからしっかりとしたプラットフォーム作りが重要で、それがひいては生産性の向上につながり客数の増加にもつながるはずです。

吉村氏

吉村 いまの時代はSNSやWebを利用して、海外への発信も簡単に行うことができます。事業者の良いサービスをより多くの人に届けることが可能です。もし川口さんが例示したお土産物屋さんがSNSの拡散力をうまく活用することができたら、さらに売上が上がり、地域が活性化するのではないでしょうか。引き続きこういったデジタルの力を信じ、地域でご活用いただけるお手伝いをしていきたいと思っています。

-ありがとうございました。