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One to Oneマーケティングでロイヤルゲスト作りを目指す、三重県観光マーケティングプラットフォーム

  • 2022年12月5日

 三重県の「ロイヤルゲスト育成を目指す観光DX推進事業」は、観光庁の令和4年度「DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による観光・地域経済活性化実証事業」に採択された注目の取り組みだ。事業主体である三重県観光DX推進コンソーシアムの構成メンバーで県の担当者である観光局観光政策課観光マーケティング班の川口政樹班長に事業の狙いなどについて伺った。なお同コンソーシアムの代表企業であるウフルのアカウントエグゼクティブ糸川将司氏とデータ連携を支援するセールスフォース・ジャパンのシニアアカウント・エグゼクティブ吉村里実氏にも説明に加わっていただいた。

-「DXの推進による観光・地域経済活性化実証事業」に採択された取り組みの内容を説明してください。
川口氏。インタビューはオンラインで実施した

川口政樹氏(以下敬称略) 三重県では、観光施策を展開していくに当たってCRM(Customer Relationship Management)を活用した来訪客の実態把握が欠かせないと判断し、21年度に「三重県観光マーケティングプラットフォーム」の仕組みを構築しました。プラットフォームにはCRMだけでなく、把握したデータを活用して旅行者一人ひとりの興味や関心に合わせ適切なタイミングで観光情報やクーポン等を自動的に配信するMA(Marketing Automation)も導入しています。

 プラットフォーム構築の次に必要となるのが蓄積するデータの拡充ですが、旅行者の購買データを把握する仕組みがないのが課題でした。そこで購買データを収集できる三重県観光アプリの開発や、アプリと地域OTAを連携してそこから得られるデータとCRMデータを一元的に把握できる仕組みの構築、さらには把握したデータを基に、地域にとってより価値が高いと思われる客層、つまり地域のあり方に共感して何度もリピートしてくれるロイヤリティの高いゲストの増加を目指すため、観光庁の「DXの推進による観光・地域経済活性化実証事業」に応募したところ、採択していただけたので、現在事業を進めているところです。

「ロイヤルゲスト育成を目指す観光DX推進事業」イメージ

 応募にあたり、三重県観光DX推進コンソーシアムを立ち上げました。メンバーは三重県、プラットフォームの立ち上げにも関わったウフルさん、地域OTA機能拡張を担う陣屋コネクトさん、観光アプリの開発等を担うサイモンズさんの4者に加え、山田桂一郎先生にアドバイザーとして参画いただいており、コンソーシアムの代表企業はウフルさんが務めています。サイモンズさんはCRMの成功事例として取り上げられることが多い気仙沼DMOの観光マーケティングの仕組みを支えており、観光関連分野での評価も高いので加わってもらいました。気仙沼の取り組みは現地に足を運んで視察したのですが、非常に参考になりました。

-ウフルさんとセールスフォースさんがこの事業において担う役割は何ですか。

糸川将司氏(以下敬称略) ウフルはCRMソリューションなどを提供するITベンチャーですが、Web広告やマーケティング、ブランディングも手掛けており、制作スタッフとしてアナログのクリエイティブメンバーも抱えています。したがってデジタルとアナログを組み合わせたソリューションを提供できる強みがあります。特にIT化が遅れている観光分野では、デジタルとアナログをうまく組み合わせた取り組みが重要になるため、三重県の観光分野におけるDXに貢献できると考えています。

吉村里実氏(以下敬称略) セールスフォース・ジャパンは顧客データの一元管理、利活用、デジタルマーケティングを行うためのSaaSプラットフォームを提供しています。地域に観光で訪れたお客様の情報と地域の事業者の情報を一元管理することによって、顧客にとって最適なタイミングと最適な方法で様々なご案内ができるようになります。顧客にとっては欲しい情報が欲しいタイミングで手に入ることで満足度が上がり、消費の拡大が見込めますし、地域の事業者にとっては売上向上やビジネスチャンスの拡大に繋がります。こうしたデータの活用を観光旅行者の分野から始め、最終的には関係人口、近隣地域の住民、地域住民を含む幅広い分野に拡大すれば、地域全体の活性化に貢献できると考えています。

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