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洋服店から街づくりへ、「商売人の妄想」から生まれた沖縄北谷町・デポアイランド

  • 2022年2月2日

民間・官民連携で成長を目指す共栄構想を

-補助金が出る飲食店とは異なり、物販のテナントはさらに苦しかったと思います。

奥原 テナントへの金銭的なサポートは難しく、各ビルのオーナーの方針もさまざまなので、できることは限られました。たとえば商工会と連携して国の支援事業の説明会を開いたり、個別相談会を開くくらいしかできませんでした。当然、閉店した店舗もあります。2割、3割が閉店してもおかしくない状況でしたが、デポアイランド内では1割未満です。

-商店街としてはアフターコロナを見据えて何を行いますか。

奥原 公共の空間をどう有効活用するかを考えています。店外のテラス部分は密を回避でき、お客様の緊張感も緩和できます。商業空間と公共空間が一体となったエリア作りは、デポアイランドを整備していく際に一番工夫した部分です。

 アメリカンビレッジは海の近くにありながら海を十二分に活かせていなかったので、デポアイランドは沖縄らしく海との一体感を味わえる街にしようと考えました。「道は真っすぐで平坦であるべき」というのが通常の考え方ですが、それでは楽しい街にはならないと考え、自前の資金で曲がりくねった道を作ったうえで、町道として町に移管しました。行政に任せればアスファルトを敷いて味気なくなってしまう路面も、建物や街の雰囲気に合わせた色合いを採用。海沿いの遊歩道も民間で作り、遊歩道の手前にはオープンカフェなどが出店できるスペースも用意しました。

-さまざまな考えを持つ民間事業者間の合意を取り付けるのも大変ですし、行政の理解を得るのも大変なことでしょう。

奥原 民間の合意を形成するには、やはり成果が一番重要です。皆が連携することでより大きな成果を得られると実感すれば理解は得やすいですね。その意味では商店街として積み上げてきた実績とお互いの信頼感があってこその合意形成だと言えます。

 行政に対しては、私たちは商売人としていわば妄想の世界に生きているのでイメージは思い描けますが、計画をまとめ文書化するのは苦手です。逆に行政は段取りを組み文書化することに長けています。持ち味が異なり、やはり民間と行政が連携してこそ構想が実現できます。ですから役所の皆さんをとことん説得し、理解を得るように努めています。どうすれば前に進むのか? 連携は非常に重要なことです。

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