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需要が戻るまでいかにマーケットを保たせるか―横浜観光コンベンション・ビューロー 青木思生氏(前編)

  • 2022年1月24日

MICEイベントのいま
ターゲティングはリセット、ユニークベニューで再起を図る

 1859年の開港以来、交易の要として重要な役割を担い、近年は日本のMICE誘致のリーディング都市となった横浜。しかしコロナ禍で国際往来は停止し、MICEも延期やハイブリッド開催への移行が進んでいる。これまでのターゲティングを大きく転換し、国内需要の取り込みに舵を切った公益財団法人横浜観光コンベンション・ビューロー(YCVB)の青木思生氏に話を聞いた。

YCVB誘客推進課長兼経営企画部企画課長 青木思生氏

-はじめにYCVBについてご説明ください。

青木思生氏(以下敬称略) YCVBは、観光協会の立場を取る横浜市の外郭団体で、現在600社強の賛助会員がいます。東京の民間企業が横浜をフィールドとして観光を手掛けるケースも多く、会員には横浜以外に本社を置く企業も多数あります。

 2021年は例年に比べ退会数は多かったものの入会数も多く、会員数は差し引きで微増となっています。コロナ禍中、会員に向けては年会費の減免のほか、職員の発案でマスクや消毒液の配布も行いました。また、YCVBが横浜市からの助成金の窓口でもあることから、観光領域に限らず持続化給付金の案内も行いました。こうした取り組みもあり、会員の皆さんにはメリットを感じていただけたのではないかと考えています。

-ご自身の紹介もお願いいたします。

青木 私は神戸出身で、大学卒業後は10年近くIT業界にいました。そのなかで台湾に赴任していた際、日本人観光客が大挙して訪れている光景を目の当たりにしました。当時はまだインバウンドという言葉もない時期でしたが、いつか日本も同じ状況になるのではと観光産業に可能性を感じ、帰国後YCVBに入職。それから約10年、インバウンド、国内、MICE、マーケティングなど幅広く経験してきました。

-コロナ禍の影響をお聞かせください。

青木 観光庁が発表している2020年の横浜の外国人延べ宿泊者数は、前年比81.7%減です。この数字は横浜が米軍基地に近いことが影響しています。米軍関係者の家族が来日して横浜のホテルに泊まるケースが多く、横須賀米軍だけで年間2万泊程の予約があります。

 観光産業は災害や政治的要因による需要減を繰り返してきましたが、コロナ禍は過去に例がない事象です。とはいえ、国内マーケットは一定規模で動いています。350万人の市民をターゲットにできる横浜市は、他の自治体と比較すると、できることも多いのではないかと考えています。

 一方で、横浜が得意としているMICEは一旦止まってしまい、その副産物としてハイブリッド開催という、人が往来しない形態も広まりました。インバウンドに関しても各国で感染状況が異なり、当面は国ごとに対応を変えていく必要があるという点で、まだまだ難しさが残っていると思います。

-キャンセルとなったMICEイベントは多いのでしょうか。

青木 ハイブリッド形式にしたり、国内参加者だけに限ったりという例はありましたが、実はキャンセルは非常に少なく、ほとんどが延期です。MICEの開催地は、特定の技術や研究において最先端であったり、これから伸びてくるマーケットであるといった理由で決められる場合が多く、主催者が「コロナ収束後はこの地でMICEを実現しなければ」と使命感を持っているのではないかと思います。

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