Marriott Bonvoy

企業と場、体験のマッチングで新しい旅の目的の実現からトラベル業界の活路を開く-PerkUP 浅生亜也氏

提供するのは箱ではなくチームビルディングができる場
「日常」をキーワードに働き方を考える

 昨年以来、コロナ禍でリモートワークをする人が増え、ワーケーションにも注目が集まった。オフィス以外の場所で働くというスタイルは、個人だけでなく、企業がオフサイトミーティングなどで取り入れるケースも増えている。こうした動きに着目し、企業と場、そして体験コンテンツをマッチングするプラットフォームとして今夏ローンチされたのが、PerkUPの「co-workation.com」だ。ホスピタリティ業界で多数のホテルを経営・再建してきた経歴を持つ代表取締役CEOの浅生亜也氏に、事業立ち上げの経緯や目指す姿を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

浅生氏

-はじめにPerkUPの事業についてご説明ください。

浅生亜也氏(以下敬称略) 根底には、「働き方の充実を世の中へ伝えていきたい」という考えがあります。私は長年宿泊業界や旅行者の行動を見てきた人間で、最初の緊急実態宣言が発令された昨年4月には、インバウンド客を前提として箱を増やし続けてきた宿泊業界が、今後そのギャップをどう埋めていけばいいのかをずっと考えていました。その頃、後にPerkUPの創業メンバーになる斉藤晴久とオンラインで話し合う機会があり、ディスカッションを重ねるうち、空いたホテルの客室とリモートワークで働く場所に困っている人たちをマッチングしようという考えに至り、立ち上げたのがPerkUPです。

 その後もGo Toトラベルキャンペーンやコロナ第2波などもあってリモートワークやワーケーションという言葉はあちこちで話題に上り、一時はビジネスチャンスがあるように感じられました。ところが、日本の企業ではリモートワークは行っても、ワーケーションは導入のハードルが高いことが徐々にわかってきました。過去の例を見ても、東日本大震災の頃にはしきりに分散休暇が叫ばれましたが、結局は定着しないまま現在に至っています。また、週休2日制が完全に導入されるまでにも30年かかりました。生活様式の変化は1年や2年という短いスパンでは進みません。現在はSNSなどもあり、世の中を動かしていくのに以前ほどの時間はかからなくなりましたが、やはり来年早々にワーケーションがブームになる可能性は低く、これをビジネスにするのは危険だと判断しました。

 そこで社内で合宿を行い、コロナの影響で空いたスペースに新しい目的を持たせるという目標と世の中の変化とをどう結び付けていくかを話し合いました。そのなかで出たのが、以前から存在する企業の合宿やオフサイトミーティングという市場が、リモートワークやワーケーションといったブームに合わせて形を変えていくのではないかという考えです。この分野にはまだ手軽に商品を検索する手段がありませんでした。また、OTAでは宿泊施設の予約はできても、団体の手配や会議室のアレンジとなると施設と直接やりとりが必要になり、ユーザーにも施設にも不便や負担が多い状況でした。この市場でDXを進め、ユーザーの利便性を上げながら施設の負担も軽減できるプラットフォームを作ろうと始めたのが「co-workation.com」です。創業3ヶ月での方向転換でした。

-企業とスペースとをマッチングするサイトということですね。

浅生 はい。ですが場所だけではありません。オンラインでは団体の予約ができないという話をしましたが、実のところ、それはシステムを変えれば済む話です。実際に数ヶ月前には、ある大手ホテルが直接予約であればオンラインで団体旅行を受け付けるようになりました。私たちはそこに付加価値を加えようと、体験を組み合わせています。

 体験コンテンツについても、市場を見渡すと一元化されておらず、検索の方法もありません。そのため企業も、他社からの紹介であったり、一度使ったプログラムを繰り返し使ったりという状況でした。企業のオフサイトミーティング市場は5000億円あり、過去10年を見ても緩やかに上昇しています。少子化で人材不足が続くなか、企業も研修に力を注ぎ、人を繋ぎ止め、内部の人間を育てていこうという傾向にあるのです。コロナで1割弱ほど需要が下がり、実施方法が一部オンラインになるなど変わってきた部分もありますが、リアルの場でなくてはできない研修もあるので、今後もハイブリッドで続いていくと予測しています。日本は特に顔を合わせることを重視する文化が根強いため、広がりのあるマーケットだと考えています。

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