【コラム】緊急事態宣言全面解除!ポストコロナ、旅行会社の持続可能モデルは?

  • 2021年10月1日

 ようやく、本当にやっと、緊急事態宣言が解除されました。これで国内旅行の需要は間違い無く回復するでしょうから、後は海外からの帰国時の隔離が無くなれば、観光産業の夜明けも近いと希望が持てます。

 しかし、コロナの収束と観光産業に属する各企業の業績回復は、残念ながら比例はしないとも思っています。

 観光産業はこれまでも湾岸戦争や9.11等の国際紛争やテロ、SARSやMERS等の疫病により大きな影響を受けつつも、従来の事業モデルを抜本的には変えずに生き延びて来ました。それは、需要が激減するのは長くて数ヶ月、それも局地的であったり、国内旅行への影響が軽微だったりと、今回のコロナのように旅行需要のほぼ全てが年単位で蒸発する事態では無く、収束と共に需要の質量が元通りに戻ってくれたからです。

 しかし今回は1年以上に渡り人流が制限され、人々の価値観や行動様式をも変えてしまいました。これは、観光産業の経営を取り巻く諸条件が根本的に変わったと言う事に他なりません。

 また、楽観的に考えても今後は周期的に(例えば4~5年の間)半年から1年は需要が激減・消滅する事を前提としない経営計画は「絵空事」になります。更にはコロナによって各社が受けたダメージはとてつもなく深く、そのマイナスも数年内に取り返さなければなりません。

 では、どうすれば良いのか?自社・他社共に頭に描きながら、考えてみました。

1.現業と相乗効果(既存のリソースや知見を活かせる・クロスセル)が期待出来る他事業に取り組み、多角化を進める。
2.旅行事業に関しては得手とする地域やテーマの高付加価値商品に特化し、利益率を大幅に引き上げ、量を追わず、売上では無く収入に見合う規模に縮小する。
3.仲介業者から供給者へ立ち位置を変え、D2Cへ移行する。
4.既存事業のサービス・商材を見直した上で、顧客ターゲットを拡大する
加えて、事が起きた際、そこで求められる役割をいち早く察知し、提供出来る敏感で靭やか、かつ強靭な組織を創る。

 いずれも目新しい事では無いにも関わらず、言うは易く行うは難しで有ることは承知しています。しかし「変わらない」が最悪の選択であるなら、「変わるため」の挑戦に躊躇する理由は無く、やるしか無いと言うのが筆者の結論です。

岡田直樹
㈱エフネス代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人。27歳でエフネスの前身㈱ルゥエストを創業し、31周年にあたる今年に至る。旅行素材のホールセール、観光関連企業への決済サービス提供、緊急対応代行、業界誌トラベルビジョン運営等々、主に観光産業内のB2B事業に携わる。
㈱ティ・エス・ディ代表取締役、一般社団法人インバウンドデジタルマーケティング協議会理事、㈱ミックナイン社外取締役​