itt TOKYO2024
itt TOKYO2024

インバウンド事業者は今こそ団結をー琉球製薬.WAKON代表取締役 許田鎮男氏

「動かなければ何も始まらない」
沖縄観光の価値を引き上げ利益率も改善へ

-コロナ禍中に始めた事業についてお聞かせください。

許田 新たにファクタリング事業を始めました。以前から政治的なトラブルや天変地異の影響を受けやすいインバウンド事業は非常に脆弱だという危機感を持っており、県内向けのサービスを並行して事業化できないかと考えていたのが、この機に実現しました。

 大手企業から仕事を受ける際は、売上の入金が90日後等かなり先に設定されることが多く、私自身も毎回キャッシュフローで苦労してきました。同様の課題を抱える中小企業は多いのではないかと想定し、また偶然社内にファクタリングビジネスの経験のある人材がいたこともあり、沖縄県限定のファクタリングサービスを開始しました。現在は5名体制で、対象業種は観光産業に限定せず対応しています。今後も対象エリアは国内では沖縄に限定しようと思っていますが、将来的には海外にも展開できたら面白いなと考えています。

-沖縄への観光客はいつ頃から戻るとお考えでしょうか。

許田 インバウンド観光客に関しては飛行機の運航再開次第ですね。同業者間では、来年の夏頃には戻ってきたらいいねと話しています。

 国内観光客に関しては正直いたちごっこの感が否めないと思っています。今回の緊急事態宣言では、沖縄も本土から来る方がいれば受け入れていますし、お店も開けている状態です。実は私もコロナに感染して入院し、非常に辛い思いをしたので、感染は広がらないでほしいと心から願っていますが、結局人の動きが変わらないのであれば、イギリスのように大胆に施策を転じる方が良いのではないかという気もしています。

-需要回復期に向けて取り組まれていることがあればお聞かせください。

許田 旅行会社には物理的な在庫はなく、抱えているのは人だけなので構造的には潰れにくいですが、仮に今後需要が戻ってきても、以前と同じ売上が戻るだけではコロナによって倍増した借金は返せないだろうという点を最も危惧しています。これまでの「普通」でやっても、かつての姿には戻れません。

 そこで考えているのが、沖縄のインバウンド事業者をまとめる連合会の立ち上げです。今のままでは需要が回復しても、助成金が出ている地域もあり、観光客はそちらに流れてしまいます。これまで競合していた沖縄の事業者同士が協力し、沖縄のパイを増やしていくことが目的です。

 既に沖縄のインバウンド事業者には声をかけ始めており、最終的には100団体くらい集まるのではないかと想定しています。「個」から「会」になることで、補助金の獲得や仕入れ条件の改善につながるだけでなく、コロナ前は怒涛の来域人数を迎えるなかでうやむやになっていたものを1つ1つ見直し、沖縄の観光をより良いものに変えていきたいと思っています。

 インバウンドは粗利が低く、薄利多売で数を追うだけになりがちです。他の地域との競争はもちろんですが、コロナ後は何十年も同じようなツアーを売ってきた姿勢を改め、利益率も上げていかなければならないと考えています。

-観光産業に従事する読者へメッセージをお願いいたします。

許田 私が強く感じているのは、「動かなければ何も始まらない」ということです。需要の回復をひらすらじっと待っているだけの事業者が多いように感じますが、私自身は、座して死を待つくらいならリスクがあったとしても攻めていきたいと考えていますし、その経験は需要が戻ったときに活きてくるだろうと思っています。

-ありがとうございました。