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お客様は戻っても辞めたスタッフは戻らない-前田産業ホテルズ 統括支配人 石井昭夫氏

人材は宝、モチベーションを保ち需要回復に備える
周辺ホテルと組みエリア全体の魅力向上へ

-来年、浦添に開業予定の新ホテルについてはスケジュールに変更はありませんか。またホテルのコンセプトを教えてください。
来冬オープン予定の新ホテル(イメージ)

石井 現在、基礎工事の段階ですが今のところ開業予定に変更はありません。新ホテルのコンセプトは「やんばるとつながる場所」。やんばるとは沖縄の北部エリアのこと。浦添のある沖縄中南部に進出するのはグループ初で、緑豊かなやんばるの魅力を浦添で表現します。客室数120室でADRは1万6000円の想定です。

-コロナによる需要減でコスト削減は不可避だと思いますが、どのような工夫をされていますか。

石井 コロナ前から必要性を感じていたのがグループホテルの共同購入です。これまでコピー用紙やダスター等を各ホテルが独自に購入してきましたが、ホテルコンセプトが異なり客室アメニティなど共同購入に向かない物は除き、単純な消耗品は共通化します。レストランはコロナ対策のビニール手袋を大量に使いますがこちらも共通化できます。

 コロナの影響でセントラルキッチン化やベーシックな食材の共同購入などへの理解も得やすくなり、できることから着手していきます。

-コロナ後の需要回復に向けた考えをお聞かせください。

石井 生き残るためにはエリア全体で競争力を高める必要があります。ホテル単体では各社似たようなアイデアしか出ません。ですからもとぶ町周辺のホテルや自治体と組んでエリア全体の魅力向上を図りたい。例えばキャッシュレス対応です。エリアとしての認知度を高めるため無料巡回シャトルを走らせ、エリア内の主要ホテルや観光スポットへの足を確保。その上でホテルや観光施設をキャッシュレス対応にする。幸い各ホテルが棲み分けており協力しやすい環境です。エリア丸ごとのキャッシュレス対応は実証実験している地域もあり技術的には可能。訪日外国人客に対しても訴求力があります。ホテル同士で稼働率1%を競っても面白いことは何もない。宿泊客をエリアで呼び込む工夫の方が面白くやりがいもあります。

 もう1つ、コロナ後を考えると人材確保が重要なポイントになってくるので、そこは強く意識しています。現在は人員体制を絞り込み、少ない人数で仕事を回していますが、需要が回復して忙しくなっても急には体制を拡充できません。運動不足の体で急に運動すれば足がつるのと同じ。ですから現状の体制でどこまで売上拡大を図れるか慎重にシミュレーションしています。また素早く全力疾走するためのウォーミングアップも必要で、スタッフのモチベーションを高く保っていく必要があります。

  今年はリゾートバイトを雇わず正社員を中心にホテルを運営しており、人員体制はコロナ前の65%。これより減らせば需要回復期に対応すべき人員が足りなくなります。稼働率が低い現在だからこそ、若手スタッフの育成にも力を入れ、需要が戻った時にこれまで以上の力を発揮してもらおうと期待しています。

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