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大分県北部地域の観光プラットフォームとしての役割を確立ー豊の国千年ロマン観光圏事務局長堤栄一郎氏

  • 2021年4月21日

地域一帯となった観光を推進
欧米豪に加えて台湾などもターゲットに

 大分県北部地域8市町村で構成される地域連携型の観光地域づくり法人(DMO)「豊の国千年ロマン観光圏」は、インバウンド誘致のプラットフォームとして同地域の魅力発信や体験コンテンツの開発を進めてきた。昨年来、新型コロナウイルスの影響によりインバウンド需要が事実上消滅するなか、国内旅行市場へのアプローチを強めるとともに、インバウンド市場の回復時に向けて新たな戦略を立てている。現状と今後の取り組みについて、事務局長の堤栄一郎氏に話を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

豊の国千年ロマン観光圏 事務局長の堤栄一郎氏

-豊の国千年ロマン観光圏の設立の背景や組織構成について教えて下さい。

堤栄一郎氏氏(以下敬称略) まず2010年1月に、地域連携の観光圏という枠組みのなかで、地域一帯となった観光を進めていくために「豊の国千年ロマン観光圏協議会」として設立されました。その後、観光庁が日本版DMOを進めていくなかで、地域連携を行ううえで協議会では限界がありましたので、2017年4月に一般社団法人化。同年11月には、地域連携DMOとして登録を受けました。

 協議会設立当初は、市町村が中心となった情報発信が取り組みの中心でしたが、地域の人たちと一緒に観光をやらなければ、継続的な取り組みにはなりません。地域連携DMOとして、観光戦略をしっかりと立てて、PDCAサイクルを回しながら、インバウンド誘致に向けて、大分県北部地域のブランディング、マーケティング等に取り組んでいます。

 構成員は、別府市、中津市、宇佐市、豊後高田市、国東市、杵築市、日出町、姫島村の8市町村、大分県、ツーリズムおおいた、各市町村観光協会、宿泊施設や交通機関などの民間事業者となっています。

-体験コンテンツの商品は、どのような視点で開発されていますか。

 千年以上続く歴史文化をブランドコンセプトに、地域の人たちと連携した体験コンテンツの開発を進めています。たとえば、歴史ある道を歩く「行幸会ウォーク」では、体験プログラムに通訳案内士、農泊も含めた地元宿泊施設との連携を組み込んでいます。また、バスやタクシーなど交通事業者と連携した「滞在交流型ツアー」があります。この地域は二次交通が弱いため、交通との組み合わせの商品は訪日外国人に需要があると感じています。

-8市町村をまとめるうえでの苦労およびメリットをお聞かせください。

 苦労としては、当初自分の市町村以外の観光コンテンツについてはあまり詳しくなかったため、他地域の歴史や文化を学ぶことから始めました。たとえば、宇佐神宮は大分県のキラーコンテンツのひとつですが、宇佐市以外の人たちはその深い歴史についてそれほど詳しくない。しかし、他地域のことを学ぶことで、大分県北部地域の歴史の深さ・魅力を改めて知ることにつながりました。観光案内所の連携においては、他の地域のことについて聞かれた場合でも、道案内だけでなく魅力を紹介できるまでになっています。

 また、それぞれの市町村に観光協会があり、県には「ツーリズムおおいた」があるなかで、豊の国千年ロマン観光圏を法人化するときに、その役割分担について整理しました。そのことで、8市町村の連携は強固になったと思っています。

 旅行者にとっては、市町村の枠組みは関係ありません。お互いの市町村が連携して旅行者の満足度が上がれば、滞在時間の延長やリピーターの増加、旅行消費額の拡大というKPIの達成につながると実感しているところです。