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公認会計士が教える、恥をかかない知っておくべき会計知識 vol.3 ー ゼロベース代表 渡邊勇教氏寄稿

固定資産と減価償却

減価償却費の算定方法は?

 では、時間と共に減少していく価値をどのように算定すればよいのでしょうか。減価償却費を考える際にポイントとなるのは「耐用年数」と「償却方法」という考え方です。

(1)耐用年数、それは「使用する期間」
 資産の価値の減少は、その資産の使用できる期間によって変動してきます。例えば鉄筋コンクリートの建物と、自動車。明らかに使用期間が異なると思います。鉄筋コンクリートであれば、一般的に50年はコンクリートがもつと言われているので、50年くらいのイメージ。自動車は、5−10年くらいのイメージでしょうか。まずざっくりとこの使用する期間で資産の価値が減少する、と考えて資産を按分計算していきます。この使用する期間が、「耐用年数」と呼ばれています。

 少し余談になりますが、耐用年数には2つの考え方があります。会計上の耐用年数と税務上の耐用年数です。なぜ2つの耐用年数があるか、それはそれぞれに意味が違うからです。会計上の耐用年数は、自社で何年で使う予定か、ということです。例えば他の会社なら10年使う車でも、自社では3年で買い換える必要があるのであれば、あくまでも3年が会計上の耐用年数になります。一方、税務上の耐用年数は、自社も他社も一律で決まっています。これは「課税の公平」という概念から出てきます。同じ自動車でも会社によって減価償却する期間が異なると、不公平感が生じるため、同一の耐用年数を使用することが義務付けられています。ただ、中小企業の場合は、そこまで細かく区分するケースはほぼなく、ほとんどが「会計上の耐用年数=税務上の耐用年数」になっています。

(2)償却方法は、価値の減少スピード
 価値の減少は、固定資産の内容によって異なります。例えば、自動車。自動車は購入から1年目が一番価値が下がり、その後2年目、3年目とはそこまで価値が落ちないイメージです。一方、建物は1年目にもある程度落ちるイメージですが、自動車よりかは毎年同じくらい価値が減少しているイメージです。また、製造機械などは、製品の使用実績(利用実績)に応じて価値が減少するイメージではないでしょうか。それらを会計用語で紹介すると、次のようになります。

 A.定額法・・・毎年一定金額ずつ減価償却費を計算する方法
 B.定率法・・・使用直後の価値の減少が大きい計算方法
 C.生産高比例法・・・生産割合に応じて減価償却費を計算する方法

 また、(1)の耐用年数と同様、これも会計上の償却方法と税務上の償却方法という考え方がありまして、理由も一緒です。

まとめ

 固定資産と減価償却について、なんとなくイメージがつかめましたでしょうか?最低限押さえておいていただきたいポイントは、「自社で使うものを購入する時に、1年以上使う10万円以上のものは固定資産になる。」そして「固定資産となったものは、購入費用を使用可能期間にわたって、分割して費用計上する減価償却という方法で会計処理される。」という2つです。経営や事業管理に携わる方はもう少し踏み込んで、どのようなものが固定資産にあたるかや、取得時の注意点、減価償却の算定方法まで押さえておけると良いですね。

次回は取得した固定資産が実際にどのように会計上処理されているか解説します。お楽しみに。

渡邊勇教
公認会計士。邊勇教公認会計士・税理士事務所、ゼロベース代表
北海道帯広市出身。立命館大学卒業後、監査法人トーマツに入所。2011年に公認会計士登録。その後、渡邊勇教公認会計士・税理士事務所(かぜよみ会計事務所)設立。2018年に業務改善や財務コンサルティング、他士業との連携サービスを提供するゼロベースを設立。また、渡邊勇教公認会計士・税理士事務所の代表しても法人・個人の各種確定申告などもおこなっている。