誰もが負担のない形で環境保全を-イベントプロデュースのシープラス代表 依田鋼氏

-コロナ禍中にもゴルフトーナメントを運営されていますが、どのような対策を取られたのでしょうか

依田 あくまで当社は請負いの立場なので、開催する、しないは主催者側の判断ですが、開催するのであればどのような形が良いかという提案は続けてきました。本来女子のツアーは年間37試合ありますが、昨年実施できたのは14試合のみで、当社が扱ったのもそのうちの1試合です。事態は刻々と変わるため、今週と同じ方法で翌週試合ができるとは限らないという状況でした。

 開催が決まってから一番大変だったのは関係者全員に受けてもらうことにしたPCR検査です。出費も大きい上に、誰も経験したことがない。私自身も3週間ほど張り付きで対応に当たりました。トーナメントを開催した昨年10月の時点では現在のように安くPCR検査を受けられる施設はありませんでしたし、検査センターも医療機関と提携ができておらず、万が一陽性者が出ても何もしてくれません。その仕組みを一から作り上げ、できうる限りの対策を取って当日に臨みました。

-ウエットスーツを利用したグッズの製作について、企画の趣旨や流通経路をお聞かせください

依田 シープラスは昨年が設立10周年だったのですが、区切りの年を前に何かできることはないかと考えたのが始まりです。恩納村を拠点としてきたので地域にしっかりと還元したいと考え、行き着いたのがサンゴの保護で、「Reuse for Coral」というプロジェクトを立ち上げました。

 その時、たまたま石巻の工場でウエットスーツを作っている知人から、製造過程で大量に発生する端材を何とかできないかという相談を受けました。意図したことではありませんが、結果的には被災地支援にも繋がりました。ウエットスーツであれば沖縄での消費も多いので、何かできるのではないかと議論を重ねました。

 当初はウエットスーツ自体もリサイクルしようと商品を試作しましたが、着古した素材を使うのには抵抗があるという意見が多かったため、端材のみをリユースする方向にシフトし、コースターなどの小物の販売から始めました。お世話になっているホテルの中にグッズを置いてもらい、売上の一部をサンゴの保全に寄付しています。長く続けるために、生産者にも販売者にも、そして自社にもできる限り負担のない形を模索して現在の形になりました。

-マスクを製作し、売上を病院へ寄付することにしたのは何故でしょうか

依田ウエットスーツの端材を利用したマスク  きっかけはやはりコロナです。ホテルには2020年の2月からウエットスーツの端材を使ったグッズを置いてもらってきましたが、コロナ禍でホテルもそれどころではなくなってしまいました。「誰にも負担なく」というビジョンの事業で、押し売りになってしまっては意味がないため、一旦グッズの製造は中止に。そのなかで工場と話し合いから出てきたのがマスクの製作でした。

 試しに作ってみたものの、素材がゴムなので締め付けがあるし臭いも強い。それでも試作を重ねるうちに、徐々に良いものができてきました。元々は自分達が使うものとして作っていましたが、周囲に配ったところ評判が良かったので、しっかりとした製品にしようということになりました。

 どの製品も100%端材で製作することは難しいため、別の新品の素材と組み合わせて作るのですが、マスクの場合、性質上端材を使うのは耳の部分など一部に限られます。そうなるとリユースというコンセプトからも外れてしまい、その売上をサンゴの保護に充てることには違和感がありました。加えてマスクで商売をしたくないという個人的なこだわりもあり、利益はすべて沖縄県立中部病院に寄付することに決めました。