旅行会社が学生インターンを物にするには-JATA説明会から

今年は実施前に立教大の専門家が講演
再考すべき「その目的と活用法」とは

目的を明確化しプログラムの検討を-手を抜けば我が身に

意見交換の様子  講演の途中では、参加者を4人ずつのグループに分けて意見交換も実施した。テーマは「受入企業としてインターンシップの何に期待し、何に抵抗を感じるか」。期待する点としては「旅行業界について知ってもらう」「自社についての理解を向上させる」など、旅行業界や企業活動について理解を深めてもらうメリットが多く挙げられたほか、やはり「良い学生や意欲のある学生の採用につなげたい」との声も聞かれた。

 このことについて薬師丸氏は、理系学部の研究室に資金を提供するケースなどを除き、一般的には企業が大学に入り込むことには難しさがあるものの、インターンシップをきっかけに企業が大学とつながりを持つことができれば「採用活動においてアドバンテージを得られる」と説明。また、インターンシップには若手社員に対する教育効果もあるとし、「指導に当たる社員は、仕事の目的や仕組みを説明するためにそれらを言語化することで、自らも理解を深めることにつながる」と述べた。そのほかには、若者の発想や嗜好を吸い上げてマーケティングに活かしている企業があることも紹介した。

 受入企業が感じる抵抗については「会社としてのねらいが明確でなく、何をさせたら良いのか分からない」「参加していながら、やる気の感じられない学生がいる」「現場に学生を受け入れる時間や余裕が足りない」といった意見が挙がった。これらの声に対して薬師丸氏は、受入企業の現場が学生を「仕事の邪魔」、学生がインターンでの体験を「雑用ばかりのただ働き」と感じる、不満が残るケースも少なくないことを伝えた。

 講演を結ぶ言葉としては「企業が学生を受け入れる目的を担当者に明確に示し、社内でしっかり検討した上でプログラムを用意しないと、企業と学生の双方にとって不幸な結果に終わる。手を抜けばその分は必ず自社に跳ね返って来る」と警告。参加者には「そうならないために、企業側は今一度、インターンシップの目的を突き詰めて考えてほしい」と求めた。

矢嶋氏  説明会の最後にはJATA広報室長の矢嶋敏朗氏が挨拶。矢嶋氏は「旅行業界に良い人材が入りにくい、採用に大きなコストがかかるなどの課題を抱えるなか、インターンシップを地道に続けることが最終的には人材の確保につながる」と述べ、今後は状況に応じて実施時期の変更を検討するなど、引き続きより良いインターンシップの実施を模索する考えを示した。