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エクスペディア・ジャパン社長に聞く海旅戦略、Googleの影響予測も

リアルエージェントと価格・在庫で差別化
Trip.comの空売り「OTAについて誤解されかねない」

リアルエージェントのDP強化は「追い風」
Trip.com事件に懸念も

 最近では、リアルエージェントもOTA対策として、航空券と宿泊との組み合わせに付加価値をつけたダイナミックパッケージ(DP)の販売に力を入れている。しかも、24時間日本語対応の緊急電話サービスや、現地ラウンジでの相談受付サービスなど、リアルエージェントならではの「安心・安全」を売りにする会社も増えてきた。

 この点について、石井氏は「旅行中の保証を重視するか、多少のリスクはあるが少しでも安く、と考えるか。価格の違いを旅行者がどのように捉えるかでは」とコメント。エクスペディアが提供する価格の競争力に自信を示すとともに、「在庫力も勝負になる」と話した。一方で、「DPが広がることは消費者にとって旅行の選択肢が増えること。それは、エクスペディアにとっても追い風になる」との認識も示した。

 また、石井氏はTrip.comによる「空売り」問題について、「消費者や宿泊施設の皆様に迷惑がかかる問題。OTAについて誤解されかねない」と苦言を呈した。そのうえで、エクスペディアの仕組みはTrip.comとは異なり、宿泊施設と直接契約していることを説明し、「Trip.comのようなことは起こりえない」と強調。加えて「日本が訪日外国人旅行者数4000万人、ひいては6000万人をめざすなかで、OTAの存在は大きいはず」と話し、今後も観光庁との協力関係を重視する姿勢を見せた。

 今後については、「サイトの訪問者数を増やしていくこと」を優先的に進めていく。あわせて、アプリの利用者拡大にも注力。エクスペディアはアプリ開発に大きな投資をしており、例えば空港での急なゲート変更情報にもアプリで対応できるようにするなど、その利便性を高めている。このほか、利用者拡大に向けて「ワイキキ在住のライターさんにブログを書いてもらうなど、コンテンツの配信も実施したい」考えだ。

Googleの旅行領域での影響は限定的か

 最近、Googleがホテルや航空券のメタサーチを開始したことが話題となった。ITの巨人企業による旅行ビジネスへの進出は、オンライントラベル領域に新しい次元の波を起こすのではないかと言われている。石井氏は「Googleの開発力はずば抜けている」と認めながらも、「メタサーチとOTAは棲み分けができている」と話した。

 数年に1回旅行する人はメタサーチで探し、年に数回旅行する人は直接OTAを訪れる。そして、年に何度も旅行に行く人はホテルの直接予約を利用する。石井氏は、メタサーチの効用は、オフラインの顧客をオンライン化してくれるところとしたうえで、「メタサーチを通じて獲得した顧客を、次回は直接エクスペディアのサイトで囲い込む」戦略を描いていることを説明した。

 また、Googleが大手OTAを買収するのではないかとの憶測についても言及。「私がAmazon在職中にiTunesが立ち上がった。すべてiTunesに持っていかれるのではないかと心配したが、結局iTunesはメディアの範疇を抜け出せず、小売ではAmazonに勝てなかった」との例を引き合いに、「iTunesに対するAmazonのように、OTA各社はすでに強いブランド力がある。GoogleがOTAを買収しても、あまり大きな影響はないのではないか」との見方を示した。