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1000円以内の出国税、五輪前に導入へ-新財源検討会が提言

  • 2017年11月9日

(左から)観光庁長官の田村氏、検討会座長の山内氏  観光庁の「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」は11月9日、新たな財源確保策に関する提言を取りまとめ、座長を務める一橋大学大学院商学研究科教授の山内弘隆氏が、観光庁長官の田村明比古氏に手交した。提言では政府の観光ビジョンにおける目標を達成する「高次元の観光施策」を実施するための財源確保策として、日本人・外国人を問わず定額かつ一律で1000円以下の出国税を徴収し、東京オリンピックの開催前に財源を確保して施策を着実に実施することを提案。提言は来年度の税制改正大綱に盛り込まれ、早ければ19年度にも導入される見通し。

 手交に際し、田村氏はこれまでの議論に感謝の意を示すとともに、「関係省庁と相談して具体化に取り組みたい」とコメント。山内氏は拡大を続ける訪日旅行需要について「問題も起こるなか、持続的に伸ばし、地方に行き渡らせることが重要」と述べた上で「さまざまな施策の後ろ盾になれば」と期待を示した。

 同検討会は国内外の旅行者の受益と負担などを勘案した上で、新たな財源の確保について検討するための非公開会合。6回の会義で関係事業者からのヒアリングや具体的な導入方法などに関する議論を実施したが、会議の場では提言をまとめるには至らず、最後は会議を開催せずに各委員から改めて意見を聴取して座長が取りまとめる異例の「持回り審議」により提言を取りまとめた。

 提言は、観光庁などの関係省庁による今後の検討を促すもので、冒頭では「観光財源は税方式により出国旅客に負担を求める」と明記。対象には訪日外国人旅行者に比べて直接的な受益の度合いが低いと見られる日本人を含むとともに、出国の目的や手段に加えて、移動距離や座席クラスなども問わないこととした。乗継旅客など、徴収対象外とする範囲については諸外国の事例を踏まえて検討すべきとした。

 徴収額については定額かつ一律で、1人1回あたり「1000円を超えない範囲」と提言。これまでの一部の報道においては「1000円」との情報が散見されたが、最終的には「1000円以内」とすることで今後の検討の余地を残し、「必要となる財政需要の規模も勘案しつつ検討すること」と求めた。16年の訪日外国人旅行者数は2404万人、出国者数は1712万人の計4116万人で、仮に1人あたり最大の1000円を徴収すると、財源規模は今年度の観光庁予算の256億円を大きく上回る412億円となる。

 徴収方法については、航空についてはすでにシステム化されている航空運賃との一括収受(オンチケット方式)を基本とすること、船舶については現時点では同様の一括収受が難しいため、実態を踏まえて検討を進めることとした。また、制度設計については簡素なものをめざし「事業者の負担軽減をはかる」と明記した。

 財源を充当する施策については「負担者の納得感が得られる」「先進性が高く、費用対効果が高い取り組み」「地方創生など重要な政策課題に合致する」と条件を列挙。具体的な施策については「国費で賄うべき内容か否か」を精査した上で、毎年度の予算編成で決定されることを説明し、「ストレスフリーな旅行環境の整備」「日本の魅力に関する情報の入手の容易化」「地域の観光資源の整備などによる満足度の向上」を例として挙げた。

 観光ビジョンにも盛り込まれている「若者の海外旅行振興」など、その他の施策については、財源の確保が現実化されたのちに検討される見通し。財源を充てる政策については「見える化」と、効果検証に努めることとした。