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求められる地域の魅力と明確なターゲティングとは-EXPOから

地域と世界を結びつけるDMOに
官民の協力で安定財源の確保を

地域の特徴を明確にアピール

日本交通公社の山田氏  バネルディスカッションでは、モデレーターを務めた日本交通公社観光政策研究部次長の山田雄一氏が、観光を取り巻く最大の変化として「社会のオンライン化」を挙げ、「そのなかで地域の魅力をどのように旅行者に伝えていくべきか」とパネリストに意見を求めた。これに対し、トリップアドバイザー・アジア地区デスティネーションマネジメント部長のサラ・マシュー氏は、「大切なのは、地元の特徴とコミュニケーションの相手を明確にすること」と指摘。「ソーシャルメディアなど新しい技術を使っても、コンセプトやメッセージがなければ役に立たない」と強調した。

日本政策投資銀行の浅井氏  日本政策投資銀行(DBJ)地域企画部部長の浅井忠美氏は、マーケティングの重要性について触れ、「DMOの担い手は、自治体でも民間でも誰でもいい。ターゲットを磨き上げて、発信していくことが大事になる」とした。その上で、DBJと日本交通公社による調査では、アジアの旅行者はリピーター化すると地域に魅力を感じるようになり、旅行スタイルが欧米豪に近くなるとの結果が出たことを説明し、「ターゲットは、最初から欧米豪志向でもいいのではないか」と提言した。

 浅井氏はさらに、地域観光振興のために重要と考える、3つのキーワードを列挙。兵庫県丹波篠山で古民家再生プロジェクトを進めるNOTE(ノオト)の例から「あるものを活かす」、新潟・長野・群馬にまたがるDMO「雪国観光圏」が女性をターゲットとするためのストーリーを作り出した例から「情報発信のためのビジョンの言語化」、あわせて「官民合わせた地域内の連携」をつけ加えた。


地元の魅力を見直し、世界に情報発信

田辺市熊野ツーリズムビューローの多田氏  世界遺産の熊野古道をキラーコンテンツとしてもつ、田辺市熊野ツーリズムビューロー会長の多田稔子氏は、ターゲットを欧米からの旅行者に絞ったことを紹介。「都市でもない、京都でもない地元の魅力を欧米視線で見直す」ためにカナダ人のスタッフを雇い、「多言語化など現地の受入態勢を整えた」という。スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラとの「巡礼」をテーマにした共同プロモーションも15年から展開。2年半で748人が両方の巡礼道を歩いたという。

 北海道・釧路市の阿寒観光協会まちづくり推進機構理事長の大西雅之氏は、阿寒湖温泉を訪れる外国人旅行者を16年度の12万人から20年までに25万人に増やす目標を語った上で、「基本インフラの整備だけでは不十分」との考えを示した。同氏は阿寒湖温泉を世界にアピールするため、4つのプロジェクトを推進していることを説明。アイヌ文化とデジタル技術を融合させた体験型テーマパークの開業、阿寒湖のシンボルであるマリモの生息地ツアー、アイヌ文化に焦点を当てた「まちなかアートミュージアム」構想、阿寒湖と摩周湖における世界的トレイルコースの整備について紹介し、「ハイエンドをターゲットとし、アドベンチャーツーリズムの聖地をめざす」と意気込みを語った。