求められる地域の魅力と明確なターゲティングとは-EXPOから

地域と世界を結びつけるDMOに
官民の協力で安定財源の確保を

DMOの課題は財源、公的サポートでリスク回避を

阿寒観光協会まちづくり推進機構の大西氏  全国のDMOが抱えている課題のひとつである財源と収益については、大西氏が「次世代のため、観光振興のため、そして財源確保のために入湯税の値上げに踏み切った」と説明。当初は反対も多く、13年かけてやっと値上げにこぎつけたが、現在では、値上げ分はすべて基金として積み立て、町づくりの財源に充てているという。

 多田氏は、田辺市熊野ツーリズムビューローが10年に、熊野全域をカバーする着地型旅行を取り扱う第2種旅行業者の「熊野トラベル」を設立し、財源の確保に務めていることについて説明。1人あたりの宿泊数も単価も日本人より大きい、欧米豪などからの旅行者の取り込みに成功していることを伝えた。熊野トラベルの売上高は、12年度には4500万円だったが2016年度には3億円にまで増加。オーストラリア、米国、フランスの3ヶ国で予約の4割近くを占めているという。

 浅井氏は、DMOの主な収益源として、物販業、旅行業、イベント業を挙げ、そのなかでも地域産品の6次産業化を担う物販業が、商社的な役割を果たしていることを説明した。一方で「DMOの独立採算は難しい」とも指摘。地元の銀行との協力関係を築いている瀬戸内DMOを例に挙げ、「一定の公的サポートは絶対に必要。リスクを回避するスキーム作りとして金融機関との連携を考えるべき」と主張した。

トリップアドバイザーのマシュー氏  このほか、マシュー氏は海外の観光局の事例を紹介。ブランドUSAはESTA(電子渡航認証システム)の申請料をプロモーションの財源とていることや、観光案内所でアトラクションなどのチケットを販売し、そのコミッションを財源にしている国があることなどを挙げた。同氏は「各国ともKPIを定めて事業化をはかり、国別の旅行者のプロファイルを時間と予算をかけて取っている」と強調。財源とスタッフが少ないことについては、どのDMOも抱えている課題であることを説明し、「最後は地域のパッションの問題だろう」と付け加えた。


取材:山田友樹