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地方発海外の活性化は「互恵」重要、訪日受入の基盤にも

▽座席確保の課題、「チャーター保険」など提案も

ツアー・ウェーブ代表取締役社長の江口篤氏

 地方からの海外旅行を考える際に極めて重要なのが航空座席の確保。国際線は、北海道や青森県など訪日旅行者を呼び込みたい地方にとっても「決定的な要素」(荒川氏)だが、その維持のためには双方向のトラフィックを極力バランス良く組み合わせることが求められる。

 地方市場で力を発揮する旅行会社、ツアー・ウェーブの江口氏は地方空港の難点として、「愚痴になるが」と前置きしつつ「定期路線が少ないか、全くない」ことを指摘。また、ピークシーズンに成田や関空の路線が大都市圏の需要のみで埋まってしまい座席を確保しにくいケース、座席があっても成田まで陸路での移動を求められるケースも課題となっていると紹介した。

 このほか、地方対大都市圏の構図でみると、関空や中部の開港、成田の発着枠拡大、羽田の再国際化といった変化に引きずられ、大都市圏ですら路線が不安定であることも苦労する点。「商品を作ってプロモーションをかけ、ようやく定着させるとまた便がなくなる」という流れがあるという。

 一方、行政が積極的に路線を誘致する動きについて江口氏は、「来る者には餌をやり、来た者には何もやらないという風潮がないわけではない」と言及し、「呼んできたものは最後まで責任をもってほしい」と注文。また、就航地についても、1つの国や都市が売れるからと相次いで同じ路線が開設されるのは共倒れに繋がるとし、青森県の高坂氏の発言同様、分散が望ましいとの考えを示した。

 また、座席の確保のためにツアー・ウェーブではチャーターも活用しており、江口氏は「ないところに需要を作るのが醍醐味」であると表現。ピーク対策だけでなく、継続して実施することで定期便化に繋がる効果もねらっているところで、「旅行業界だから旅行を売っていれば良い、ではなく、地域の活性化や日本の航空産業の発展なども考えながらやっていければ」との考えだ。

HD執行役員営業本部長の本田実氏

 パネルディスカッションに本田氏が参加したHDも、2017年度以降の国際線定期便開設に向けて、順次チャーターの展開をめざしているところ。まずは新千歳/台北間の計画だが、チャーターが可能な時期を事前に提示するなど旅行会社が売りやすいように工夫もし、東南アジアなども含めて前向きに検討していくという。

 出国者数2000万人の達成とそのための地方市場拡大のためには、ツアー・ウェーブやHDを含めて、現状よりも大幅なチャーター便の設定が求められる。この点について江口氏は、旅行会社同士の協力や環境整備が必要とコメント。例えば旅行会社の協力では、大手同士だけでなく、地場で事業を展開する第2種、第3種の旅行会社を巻き込むことで、彼らが持つ地元の有力な顧客に利用してもらえる可能性に言及した。

 また、環境面では、個札販売ルールの簡素化や、「ツーウェイかつ10往復」など一定の基準を超えたチャーターへの助成制度、さらに「チャーター保険」やオフライン航空会社との取引時のリスク回避プログラムなどのアイディアも披露した。