東京オリンピックの真の効果、豪・英の事例から日本独自のめざすべき姿を探る

  • 2014年10月9日

ツーリズムEXPOジャパン2014国際観光フォーラムより
東京オリンピックをバネにインバウンド3000万人達成に向けて

 ツーリズムEXPOジャパン2014の国際観光フォーラム・基調シンポジウムのテーマは、「オリンピック・パラリンピックを利用した観光振興~2020年以降の日本の姿とは~」。国連世界観光機関(UNWTO)事務局長による基調講演「旅の力で地域を元気にする」と、夏季オリンピック開催国であるオーストラリア政府観光局と英国政府観光庁の成功事例、日本政府観光局(JNTO)の施策発表を通し、日本が2020年の東京オリンピック開催とその後に目指すべき姿、残すべきレガシー(資産)を探った。

パネリスト
UNWTO事務局長 タレブ・リファイ氏
オーストラリア政府観光局本局局長 ジョン・オサリバン氏
英国政府観光庁会長 クリストファー・ロドリゲス氏
JNTO理事長 松山良一氏

モデレーター
首都大学東京教授、観光庁参与 本保芳明氏


オリンピックは国を輝かせる黄金のチャンス
“人”を中心に考えることが重要

UNWTO事務局長 タレブ・リファイ氏

 UNWTO事務局長のリファイ氏は基調講演で、パネルディスカッションの材料として3つのテーマを提示した。

 1つ目は、「旅行とツーリズムが世界の生活を変えている」こと。リファイ氏は「旅行」を「IT」と並ぶ「2つの大きな変革」と表現し、2013年は国際観光客数が10.7億人、世界の7人に1人が海外旅行をするようになったと説明。観光収入は1.4兆米ドルに上昇し、アジアは8%増と最大の成長を遂げた。アジアの国際観光客数は2030年までに世界の3割となる5.4億人になる見通しで、「旅行は世界を変えており、その中心はアジア。日本も大きな役割を果たす」と、日本の重要性と責任を強調した。

 2つ目は、「(旅行で)人が移動する力を理解しなくてはならない」と提言。移動や旅行先での消費が雇用や教育機会に繋がるなど、移動による付加価値を説明した。さらに人が移動することでグローバル化が進み、世界が似てきている一方で、「ツーリズムは多様性あってのもの」と指摘。「これからはルーラルツーリズムが本質。農村・漁村でライフスタイルの違いを体験するなど、直接現地の人々にお金が回る仕組みを推奨したい」との考えを示し、「ツーリズムは人を中心に据えた産業であることを忘れてはならない」とも語った。

 3つ目は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが「日本の黄金のチャンスになる」こと。メガイベントは「必要なインフラや人的投資などをおこなう機会となるほか、国のイメージを示すベストなツールである」と説明。ただし、「チャンスと同時にチャレンジである」とも述べ、「オリンピックはイベントそのもののではなく、開催後の姿が大切。東京のみならず、地方も便益を受け、自分たちが輝き続けることが真のレガシーになる」と語った。