アジア市場の展望、グローバル市場の戦略-WTTCより

  • 2012年5月29日

グローバル企業のアジア戦略

エミレーツ航空(EK)グループサービス&DNATAプレジデントのゲーリー・チャップマン氏  成長市場のアジアの特徴をグローバル企業も把握し、アジア域内でのビジネス展開を進めている。エミレーツ航空(EK)、EKグループサービス&DNATAプレジデントのゲーリー・チャップマン氏は、アジア地域とヨーロッパ地域では会議の議題で向いているベクトルが全く違うという。アジアでは供給量を増やすこと、ケータリングの能力を高めることが主な議題だが、ヨーロッパでは維持するための方策が話になるという。EKのアジア進出は1990年のシンガポール就航後の動きだが、現在はグループの30%、インドを含めると40%以上がアジア路線だ。

 こうした中、EKではグローバルで重視することはブランドの確立だが、それぞれのローカル市場で微妙な調整をしているという。現在のスタッフは120ヶ国から構成し、それぞれの国の知識、知見を取り入れてレベルアップをはかっている。アジアで独自のサービスもあり、例えば中国線では顧客のフィードバックを取り入れた中華メニューを提供している。ローカルに対応していくには、細かすぎると思うことが実は重要なことが多い。また、それぞれの市場での裁量も重視して運営している。

スターウッド・ホテルズ&リゾート・ワールドワイド プレジデント&CEOのフリッツ・ヴァン・パッシェン氏  スターウッド・ホテルズ&リゾート・ワールドワイドのプレジデント&CEOのフリッツ・ヴァン・パッシェン氏は、アジアのスタッフは元来の「もてなし」の精神があり、そのためアジア地域以外のホテルでがっかりされる事例があると指摘している。アジアで高めたサービス水準を他の地域へどうやって展開し、浸透させていくかは重要な課題として、欧米ではテクノロジーを使い、スタッフのサービスの質、レベルをあげる取り組みをしている。

 保険会社AIUなどを傘下に収めるトラベルガード会長のジェフリー・ルートリッジ氏も、グローバルで成功するにはアジアの重要性が増していると話す。そこでアジアでは常に3つの課題をウォッチしている。1点目はアジア市場の5年後の展望、2点目は欧米と異なる消費者への対応、3点目はグローバルと地域の視点の違いだ。アジア市場については他の企業のトップと同様に、アジアの独自の視点も持ち合わせたサービスを展開しているという。

トラベルガード会長のジェフリー・ルートリッジ氏  このうち、消費者への対応では、アジアの消費者はサービスに感謝する傾向が強いことを重視。トラベルガードのスタッフにもアジア旅行を推奨し、スタッフ自身がアジアでの旅行、特に質の高い食事、文化の多様性や楽しみなどを堪能したその体験を、多様なサービスをマーケットにあわせて提供できるようにしているという。

 グローバル企業のトップたちはアジアのサービス「もてなし」が、世界的に高い水準にあると指摘する。課題は今後、アジアの高いサービスをどのようにグローバルビジネスに展開、反映していくかだ。スターウッドのパッシェン氏は「ツーリズム産業は成長を続ける」というが、そのキーはアジアに根付くサービススタンダードにあり、世界のツーリズム産業を支える鍵になるかもしれない。



取材:鈴木次郎