インバウンド、震災から回復しベストデスティネーションとして発展するには

  • 2011年10月25日

日本は「離島」という自覚でインフラ整備
インバウンド拡大には地方の力が不可欠

モデレーターを務めた北海道大学観光学高等研究センター長の石森秀三氏  では、日本がインバウンド市場を回復させ、さらに「ベストデスティネーション」として発展を遂げるためには何が必要なのだろうか。

 東氏も「日本は中国大陸とも朝鮮半島とも鉄道やトンネルで結ばれているわけではない。いわゆる極東といわれる完全な離島。東京の人々が離島に住んでいると思わない限り、インバウンドはなかなか成長しないのではないか」という。

 つまり、「離島」である日本にどう旅行者を誘致するかを念頭においたインフラ作りが必要ということだ。山田氏も「旅行客は非日常に接したいというが、それは8割、9割の日常の安定したインフラに乗った上のこと」と同調。例えば、パネリストからは大型クルーズの来航に備えた港湾のインフラ整備や、個人旅行者の自由な移動を可能にする交通手段や外国語の標式の拡充、インターネット上での予約制度の整備があげられた。

 また、インバウンド市場の拡大には地方がますます重要な役割を担うことになる。佐藤氏は「インバウンドを1000万人、2000万人に増やすには東京、京都だけでは受け入れられない。どんどん地方の温泉文化などを体験していただき、もっと日本の旅行の奥深さを知ってもらうことで増えていくだろう」と語る。

 そのためには「国内を活発にさせないとインバウンドは増えないだろう」ともいう。国内旅行が廃れ、温泉地や観光地の町並みがさびれていたら、インバウンドとして魅力がなくなってしまうというのだ。まずは地方での滞在型観光や着地型商品の造成などで国内旅行を活発化させ、地域再生をはかることでインバウンド市場のコンテンツ拡充をねらうことを提唱している。

 震災に見舞われた日本が改めて直面したインバウンドツーリズムの壁。今回の震災によるインバウンドの低迷は、今一度、その根本課題を見直す機会にもなっている。

取材:安井久美