旅のテーマ:アジアの屋台巡り(4)インド−多様なスナックが特徴

  • 2009年4月9日
日本と異なる食文化

 同じアジアといっても、東アジアと南アジアでは、人種や歴史、習慣などさまざまな面でまったく違う文化圏。日本とインドの食文化が異なるのも当然のこと。例えば、日本で“国民食”とまでいわれるカレーでも、本場のインドと日本では「似て非なるもの」というのは広く知られている。しかしカレー以外のインドの食べ物、そして食文化そのものについては、日本ではあまり知られていないのが実情だ。

 「食」について、日本との一番の違いは「タブー」ではないだろうか。日常生活と宗教が密着しているインドでは、食に関するタブーが多い。例えば宗教的に菜食主義の人、バラモンに属するヒンドゥー教徒やジャイナ教徒などだが、彼らは一切の肉食をしない。肉食の人と同じテーブルにも座らない。さらに肉を料理した包丁やまな板で作られた料理も食べない。つまりインドでは菜食(ベジタリアン)と非菜食(ノンベジタリアン)で、レストランそのものが分かれている。また肉食をする人でも、ヒンドゥー教徒は牛を食べないし、イスラム教徒は豚を食べない。また敬虔なイスラム教徒は、コーランで定められた形で用意された食肉(ハラルミート)しか食べないという人もいる。ちなみに、デリーのマクドナルドでは、ハンバーグはビーフでなくマトンが使われている。こうしたことから、安心して食事ができるのは自分の家庭であると考えるインド人が多い。したがって屋台で食べられる料理は、ほとんどが軽食(スナック)だ。


軽食からおやつまで、バラエティ豊か

 インドのどこでもあり、旅行者でも食べやすいのが「サモーサ」だろう。一般的なものはカレー味の付いたジャガイモを、ちょっと厚めのワンタンのような皮で包み揚げたもの。使う香辛料の違いでそれぞれの店の味の違いがでてくる。けっこうボリュームがあるので、2、3個食べてチャイ(インドのミルクティ)を飲めば、軽い一食分に。また、「パコーラ」も定番の屋台スナック。野菜のフリッターで、玉ねぎやカリフラワーなどに衣をつけて揚げたもの。衣に味がついているが、スパイスのきいたソースにつけて食べることもある。

 また、「プーリー」は小麦粉で作った丸い生地を油で揚げたもの。膨らんだところに穴を開けてソースを入れて食べる。同じ生地を鉄板で焼くと「チャパティ」になる。インドのパンといえば「ナン」を思い浮かべるが、ナンは普通のパンのように発酵させた生地を使ってかまどで焼く。生地を作ってすぐに焼くことができないうえに、かまどがないとできないので、屋台でナンにお目にかかれることはほとんどない。このほか、お菓子も屋台の定番。小麦粉を溶いたものを揚げて、シロップをかけた「ジュレービー」は素朴なおいしさ。いろいろな豆をその場で炒ってくれる屋台もおやつにいい。

 飲み物ではチャイだけでなく、ヨーグルトドリンク「ラッシー」、果物やサトウキビを絞ったフレッシュジュースなど、ドリンクスタンドをよく見かける。チャイは沸かしてあるが、フレッシュジュース、氷、水を加える飲みものは、衛生的に心配な人は止めておいたほうが無難だ。

 広いインドではカレー以外にも多様な食べ物がある。外国人である日本人は存分に、インドの豊かな食文化をぜひ楽しんでみたいものだ。


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