旅のテーマ:ヨーロッパ、川の旅(1)ローヌ川(フランス)

  • 2009年3月30日
 ヨーロッパでは古くから、河川が物資や人々、文化を運ぶ役割を果たしてきた。数多くの町を通り、ゆっくりと変わりゆく風景を眺めながらの船旅は、陸路でめぐるヨーロッパ旅行や海のクルーズとはまた違った魅力をもつ旅のスタイルである。また、海の船旅に比べて経済的であること、名所巡りやおいしいもの巡りが気軽にできる点も、川旅ならではの楽しみといえるだろう。


グルメと世界遺産が魅力のクルーズ

 船が航行可能な運河と河川の総距離が7000キロメートルにもおよぶフランスは、ヨーロッパでもっとも河川が発達した国。なかでも、フランス4大河川のひとつに数えられるローヌ川は、スイスに源を発し、全長812キロメートルのうち581キロメートルがフランス国内を流れる。4大河川のうち唯一、地中海へ注ぐ川としても知られ、それゆえ古くは物資輸送の大動脈となり、流域の町はローマ帝国の商都として栄えた。現在でも古代ローマの遺跡など見どころが数多く残り、観光客に人気のクルーズルートになっている。

 ローヌ川のクルーズツアーは数社から運航されており、コースは3泊から7泊のものが主流。寄港地はリヨン、アルル、アヴィニヨンをメインに、そのほか数都市を加えたものになる。ワインの産地を通るので、ワイナリーの見学をコースに組み込んでいるものも多い。

 たとえばバイキングリバークルーズの「バイキング・バーガンディ号」の場合、リヨンから北へ約125キロメートルにあるシャロン・シュル・ソーヌで乗船。その後、ブルゴーニュ観光の中心地ボーヌ、リヨン、ビエンヌ、トゥルノン、ビビエ、アルル、アヴィニヨンに寄港する7泊のコースがある。船の全長は110メートル、乗客定員は154人。北欧調のインテリアで統一され、乗客全員がいっぺんに食事ができるレストラン、バーラウンジを擁し、快適な空間が用意されている。


寄港地の見どころ

 リヨンはフランス南東部のローヌ=アルプス地域圏の中心都市で、ローヌ川とソーヌ川が合流する地であることから、豊かな水の恩恵を受けてローマ時代から繁栄した町。世界遺産にも登録されている旧市街には、12世紀建造のサン・ジャン大司教教会やローマ劇場などローマ時代の遺跡があり、船を下りてのんびり散策するには楽しい場所だ。一方、新市街には高層ビルが立ち並び、証券取引所や国際見本市会場など商業都市としての活気を見せる。

 山にも海にも近く、新鮮で良質な素材が手に入る地の利を活かし、伝統的な郷土料理はもとより、近郊に「ポール・ボキューズ」、「トロアグロ」など有名レストランを擁する「美食の都」としても有名だ。

 船はリヨンから進路を南にとり、プロヴァンスのまぶしい光に迎えられながら、アヴィニョンへ向かう。14世紀に教皇庁が置かれ、「第2のローマ」として栄華を極めた町は、教皇庁宮殿をはじめ童謡『アヴィニヨンの橋の上で』で有名なローヌ川に架かるサン・ベネ橋、近郊には世界遺産に登録されているローマの水道橋「ポン・デュ・ガール」があるなど、見どころが満載。船を下りての観光もいいが、デッキから町の遠景を眺めるのも船ならではの楽しみだ。

 アルルは、画家ゴッホが愛したプロヴァンスの町。ゴッホはその美しい風景に魅了され、わずか14ヶ月の間に300以上の作品を制作したという。円形闘技場や古代劇場など、ローマ時代の遺跡があり、これらは世界遺産にも登録されている。ローヌ川はこの後、手つかずの自然が残るカマルグを通り、地中海へ流れ込む。

 寄港地でのエクスカーションや自由時間で陸上を観光したり、船からのんびり流れゆく風景を眺めて過ごすことができるのは、クルーズならではの楽しみ。朝の集合時間にあたふたすることもなく、移動のたびに荷物をパッキングする煩わしさもない。自分流に過ごせる休日ほど贅沢な時間はないだろう。


▽フランス政府観光局
http://jp.franceguide.com/

▽バイキングクルーズ
http://www.vikingcruises.com