街道を行く旅(4)世界遺産街道(ベトナム)

  • 2009年3月26日
世界遺産が密集する中部ベトナム

 旅の目的地として人気が高い世界遺産。人類が宝として共有すべき遺産が点在する街道が、ベトナムの中部にある。ヴィンからダラットへ至る1500キロメートルにおよぶ海岸沿いの道で、その名もずばり「世界遺産街道」。観光プロモーションを目的として作られた名称で、ベトナムへの旅行者が増えるにつれ、知名度があがる可能性が高い。

 世界遺産街道に含まれる世界遺産は、フエ、ホイアン、ミーソンの3つ。これにフエの北西200キロメートルに位置するフォンニャケバン国立公園を加える向きもある。ベトナムの世界遺産はこれら以外には北部のハロン湾のみ。ベトナムは中部に世界遺産が集まっているのだ。

3つの古都を歩く

 「世界遺産街道」はまず、古都フエから歩きはじめよう。フエはベトナムの最後の王朝、阮が1802年に都を置いた場所。フォーン川のほとりに点在する王宮や寺院、廟などが、「フエの建造物群」として世界遺産に登録されている。中国の紫禁城を模して造られた王宮は、ベトナム戦争の激戦地となったために壊滅的な被害を受け、現在見られる主な建物は再現または修復されたもの。郊外に点在する帝廟のなかでは、中国文化を好んだミン・マン帝廟や、フランスバロック様式を取り入れたカイディン帝廟が異色で見ごたえがある。

 ホイアンはフエの南東約100キロメートル、トゥボン川の河口に位置する町。かつては海のシルクロードの貿易港としてにぎわい、16世紀から17世紀には日本町も形成された。しかし19世紀に入ると交易の中心は30キロメートル北のダナンへ移る。それゆえ大規模な開発がされないまま、古い街並みが残されることとなった。諸外国の文化が混じりあった独特の雰囲気をもつ町には、築100年を超える伝統的な木造家屋が並んでいる。

 ミーソンはホイアンの南西約45キロメートルに位置するチャンパ王国の聖地。インドとの関係が深かったチャンパの王は、ここにヒンドゥーの神々を祀る寺院を建てた。周りを山々に囲まれた地に70を超えるレンガの建造物が残されている。現在見られるものは8世紀から13世紀に建造されたが、ベトナム戦争中に破壊されたものもある。ジャングルに静かにたたずみ、緑に覆われつつある遺跡は、その栄枯盛衰の長い歴史を物語っている。

 ベトナムを一通り見ようとすれば、世界遺産街道は必ず通る道。南北に細長いこの国では、交通の大動脈がそのまま観光客も通るルートになっており、陸路の旅が非常にしやすいのが特徴だ。ハノイ/ホーチミン間を走り、各観光地に立ち寄るバスのオープンチケットも販売されているので、中部ベトナムで途中下車しつつ世界遺産を訪れることが可能。ベトナムの世界遺産街道は地方ならではの、のどかな空気にひたれる癒しの街道だ。


▽ベトナム政府観光局
http://www.vietnamtourism.com


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