街道を行く旅(2)リドー・ヘリテージ・ルート(カナダ)

  • 2009年3月24日
メープル街道エリアに延びる歴史の道

 カナダの観光街道といえば、誰もが「メープル街道」を思いうかべるだろう。鮮やかに赤く色づいたカエデの紅葉の景色を楽しむ有名な街道だ。とはいえこのルートは、ナイアガラ周辺からケベック周辺までの、紅葉の美しいエリアを指す言葉で、実は特定の道を指す言葉ではない。しかし、メープル街道のエリアには、現地の人ならよく知っている「街道」がある。それがリドー・ヘリテージ・ルート(リドー歴史街道)だ。

 現在のカナダの首都であるオタワから、かつて首都であったキングストンに至る約200キロメートルの道。沿道にはカナダ建国の歴史を伝える町や村が連なり、のどかで懐かしい風景が広がっている。この美しくのんびりとした景色の中には、必ず水の風景がある。リドー・ヘリテージ・ルートは、多くの湖や沼をつなげて造られたリドー運河に沿って作られているからだ。


リドー運河沿いの町々

 リドー運河は1812年にはじまった米英戦争をきっかけに、補給路として作られた運河。イギリス(当時のカナダはイギリスの植民地)は、アメリカとの国境となっているセントローレンス川に内陸への物資輸送のほとんどを頼っていた。そのため、川の封鎖や攻撃を避けるために、セントローレンス川を迂回する輸送路の確保が必要となった。1826年からジョン・バイ大佐の指揮の下、モントリオールからキングストンに至る水路作りがはじまった。このエリアはもともと1万年前に後退した氷河が残した湖沼が多くあったため、これらの水域をつないでいけば水路の確保ができた。そして1832年、運河が完成した時には、米英間の緊張状態は終結していた。

 結局、運河は戦時下では使われることがなかったが、輸送路として20世紀まで活用され、物品だけでなく、世界からやってきた移民もこの水路を通っていった。途中の標高差を解消するために作られた24ヶ所の水門所は、ほとんどが175年前に作られた当時のままの姿をしており、現在もすべてが現役で稼働中。その歴史的価値が認められ、北米最古の運河として2007年に世界遺産に登録されている。運河に沿って点在する町は観光的な見どころが多く、リドー・ヘリテージ・ルートは、これらの町を結んでいる。

 レトロな町並みが今も残るメリックビルは、かつて水車を動力にした工場が並んでいた町。現在は多くのアーティストが集まり、ガラス工芸や陶芸、木工など、30以上の工房があるアートな町だ。スミスフォールズはオタワとキングストンの中間にある町で、リドー運河の歴史を詳細に知ることができる博物館がある。パースも古い街並みが残り、街中に小川が流れリゾートのような雰囲気だ。ほかにも湖畔の静かな町ウエストポートなど、魅力的な町が連なっている。もちろんオタワ、キングストンともに見どころは多い。

 このルートはオタワ、またはキングストンからスタートして2泊3日くらいかけて回るのがいい。移動はレンタカーが一番便利。オタワや途中の町では湖を巡るデイクルーズなどのツアーがあり、ドライブだけでなく変化のある旅が楽しめる。

▽リドー・ヘリテージ・ルート(オンタリオ州観光局)
http://www.ontariotravel.jp/rideau/index.html


▽今週の特集
街道を行く旅(1)銀の道(スペイン)(2009/03/23)