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基礎知識から応用まで、クルーズ販売のアプローチ方法、セミナーで意見交換

  • 2009年2月16日
 外国船クルーズ船会社販売代理店(GSA)6社の合同セミナー「クルーズイヤー2009〜外国船クルーズの今がわかる〜」が東京と大阪で開催された。セミナーはパネルディスカッション形式で行なわれ、パネラーとしてクルーズ販売に実績のある旅行会社のクルーズ担当者とGSA側代表者が登壇。クルーズの基礎知識から販売の魅力だけでなく、その難しさや専門知識の必要性などについても率直な意見が交わされた。本音の意見交換には、クルーズ・ビジネスを成功させるための数多くのヒントが散りばめられていた。
                              

クルーズの基礎知識

 クルーズマーケットは大きく3つのカテゴリーに区分できる。その基準は料金とクルーズ船のサービス体制。マーケット全体の80%を占めるのがカジュアルクラスで、料金が1泊70ドルから、乗客と乗組員の比率が3対1。全体の15%を占めるプレミアムクラスは1泊200ドルから、乗客/乗組員比は2対1。最上級クラスのラグジュアリークラスは全体の5%で、1泊400ドル以上、乗客/乗組員比は1対1とされている。

 クルーズの料金は固定制と変動制があり、通常の旅行商材では馴染みがないのが変動制。これは船会社が販売動向にあわせて料金を変動させるもので、たとえば1泊1000ドルで販売された同じキャビンが、販売順調なら1ヶ月後に1100ドルに値上がりし、その後販売が伸びずに空室が出そうなら、さらに1ヶ月後には600ドルに値下げして販売されることもある。変動制については「欧米では当たり前のこととして受け入れられているが、日本では顧客から説明を求められ、理解を得るのが難しいこともある」(オーバーシーズトラベル・クルーズ事業部係長の本郷芳人氏)のが実情だ。


クルーズ販売のポイント

 クルーズ販売のポイントとしてまず指摘されたのが、クルーズを販売してみることだ。一気に大量販売につながることはないが、販売のスキルやノウハウの蓄積で着実に販売拡大のサイクルを作れる。しかし、最初の一歩を踏み出さない限りはじまらない。PTSクルーズ&レジャー事業部の松住健一郎氏は「まずはクルーズに慣れることが重要。販売し、添乗すれば売り手としての感覚が磨けるし、添乗で得た情報を販売にフィードバックできる」とし、さらに「クルーズオンリーの販売はテクニックが必要なので、最初はエアを除くランドパッケージなどを活用し、パッケージツアーとして商品化を試みるのがいいのではないか」とアドバイスする。

 またクルーズ専業のイークルーズ社長の大井潔氏は、クルーズ独特の料金の変動制をいかす方法を紹介。「変動制のクルーズ料金は、主市場のアメリカが不振になるとガクンと下がる傾向にある。1泊200米ドルのプレミアムクラスのクルーズが、7泊8日で400米ドルというケースもある。販売できる期間が一定でなくリスクもあるが、うまく使えば大きな武器になる」と説明する。


クルーズ販売の問題点

 クルーズ販売には、いくつかの問題点も指摘された。まず、あげられたのは取消料の問題。船会社が個別に設ける取消料は、標準旅行業約款の規定とは条件が異なるため、販売上のネックとなっていたことから、日本の旅行会社が販売しやすいようにクルーズ約款が設けられたほか、旅行者のためにはクルーズ保険が販売されるようになった。しかしクルーズ約款では、たとえば60日前の取消料は旅行代金の12.5%とされているが、船会社の中には25%とするところもあり、差額は依然として旅行会社のリスクとなる。クルーズバケーション営業部長の猪股富士雄氏は「3泊4日の短い旅行ならともかく、3ヶ月のワールドクルーズにでもなれば旅行代金の12.5%ではまったくカバーできない」と実情を明かす。

 予約金(デポジット)や支払いについても課題がある。売り手市場気味のクルーズ・ビジネスにおいては、キャビン確保のために予約金が必要で、キャンセルしても返却不可の場合もある。支払いも出港前が一般的だ。このため旅行会社からは、「予約金は仕方がない面があることは認めるが、何日前までなら払戻しが可能といった交渉の余地があれば、やりやすい」(ニッコウトラベル営業企画主任の板垣明朗氏)といった指摘もあった。

 また、ブロッケージについては、インターナショナルクルーズのマーケティングクルーズ事業部長の堀内浩氏が「世界的にブロッケージでクルーズを販売しているのは日本くらい」という。仕入れが1年から10ヶ月前で、半年前には船会社からネーミングの催促がくる。さらに90日から120日前には「調整」の名目で未販売分の返却が求められるのが一般的だ。これに対し、前出の板垣氏は「早期発表、早期販売を心がけ、先手先手を意識することで対応している」と述べたほか、クラブツーリズムのアジア・中国旅行センター・東南アジアチーフの大場和世氏も「2週間前のネーミングという通常ツアーの仕入れに慣れていると最初は戸惑い、流れを把握するのに時間が必要だが、慣れれば何とか対応できるようになる」と、業務上の工夫を話した。


クルーズ市場の高い将来性

 セミナーの最後には主催者側から「クルーズマーケットの動向」を紹介。それによると日本の2007年のクルーズ人口は前年比3.9%増の18万4000人で、うち外航クルーズは12.7%増の9万6000人。外航クルーズは「4泊から13泊」が多く、乗客数も05年以降毎年増加している。

 世界的な統計を基にクルーズと旅行会社の関係を見ると、クルーズ未経験者の海外旅行における旅行会社利用は44%と半数以下だが、クルーズ利用者は60%に跳ね上がる。また2007年のクルーズリピーターの旅行会社利用率は74%と高く、旅行会社離れが日本以上に進む欧米においてもクルーズは旅行会社の重要な商材になっていることが分かる。

 低迷する海外旅行市場にあって、クルーズは将来性と成長性が高く、旅行会社との相性もよい。今後ますます旅行業界にとっての重要性を増していきそうだ。


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取材:高岸洋行