日本ミャンマー観光促進委員会、サイクロン被害の義援金を募集

  • 2008年5月15日
 日本ミャンマー観光促進委員会(MJTC:事務局長・松岡修氏/エーペックスインターナショナル)は、先ごろ発生した大型サイクロンにより、ミャンマー南部とヤンゴン近郊が受けた被害に対して、義援金を募集している。復旧にも相当の時間と費用がかかることから、MJTCではミャンマーの庶民の一日も早い回復に役立てたいと、義援金を募集するに至った。これにあわせて募金用の振替口座を開設。協力希望者は郵便局備え付けの払込取扱票を利用し、通信欄に「ミャンマー被災者救援金」の記入のうえ、下記の口座へ振り込みのこと。


▽ミャンマー救援 (郵便局)振り替え口座
加入者名:日本ミャンマー観光促進委員会
口座番号:00100-8-585433


 この度のミャンマー南部と旧首都のヤンゴン近郊での大型サイクロンにより被害に遭遇した皆様に、衷心よりお見舞い申し上げます。

 弊社トラベルビジョンでもこの被災者救援金をお送りし、今後の観光復興に向けた一助になればと考えております。

 また、日本旅行業協会(JATA)が3月、ミャンマー観光の可能性を探るべく、視察団を派遣。サイクロン被害の前に、穏やかなミャンマーの日常がうかがえたレポートを復興を願いつつ、下記に掲載いたします。



笑顔とホスピタリティに心洗われる旅
〜「仏教+アルファ」の提案で、幅広い商品造成が可能〜


 昨年9月のデモ以降、日本人のイメージする「ミャンマー」はデモの取り締まりの姿が強く、旅行をする場所という印象は少ないかもしれない。しかし、実際は人々の微笑やホスピタリティにあふれ、各地に点在する仏教遺跡や文化など観光素材も多い。特に、好奇心旺盛なシニア層を満足させる要素が揃う。また、5ツ星ホテルでのスパ体験などと組み合わせれば、若い女性も取り込み可能だ。3月に日本旅行業協会(JATA)が派遣したミャンマー視察団は、「プロモーションによるイメージ改善が重要」という点で意見が一致。これは、イメージが改善された際には、「十分に売れる可能性がある」と認識したことを意味している。年が明けてからツアー催行を再開した旅行会社も、「恐る恐るだったが、反応は良い」という。JATA視察団に同行して目の当たりにしたミャンマーの様子と観光の可能性を伝える。



ゆるやかな空気と柔和な人々に癒される
笑顔と優しさに芽生える親近感


  ミャンマーを旅行した人は必ずと言っていいほど「人」を魅力として挙げる。これは、日本人のインバウンドを取り扱う現地旅行会社の団体「Japan Tourism Promotion Committee(JTPC)」のメンバーの言葉だ。ミャンマーの人々は、本当によく笑う。マーケットでも街角でもホテルでも、どこに行っても皆が微笑みかけてくれた。ヤンゴン空港に到着し、緊張しながら入国審査に進んだとき、女性担当官が実に自然な表情で笑いかけてくれた。たったこれだけで、ずいぶん印象が変わったことを覚えている。


 また、非常にホスピタリティに溢れる人々でもある。空港で搭乗券面を撮影しようと、片手にカメラ、片手に搭乗券を持って四苦八苦していたところ、通りがかりの中年男性が何も言わずに搭乗券を持ってくれた。もちろん微笑みながらである。また、ヤンゴンのアウンサン・マーケットでは日本語を勉強しているといって、若者が現地ガイドも唸るほどの値下げ交渉をしてくれた。客人を丁寧に扱うのがミャンマー人の習慣なのだそうだ。

 こうした市民の生活を理解しやすい場所が、マーケットだ。特に地方では、日本の田舎がそうであるように、のんびりとした時間が流れ、それでいてにぎやかな雰囲気が感じられる。バガンのニャンウー市場では、野菜や果物、調味料など、見たこともない食材が並ぶなか、大勢の女性たちが行き来しており、その周りを子どもたちが楽しそうにはしゃぐ姿が見られた。人々で賑わう市場の中にいると、ミャンマーの生活が明るく、活気あることが感じられる。



生活に根付いた仏教
「体験」でミャンマーらしさを演出


 ミャンマーの国教は仏教で、国民の80%以上が仏教徒。そのため、世界三大仏教遺跡の1つとされるバガンの遺跡群を筆頭に、荘厳な仏教施設が点在する。バガンでは、数百年の時を経た約3000の遺跡が広大な土地に林立する光景は見る者の目に焼きつく。また、観光スポットの定番であるヤンゴンのシュエダゴン・パゴダでは、東南アジアの強い日差しを反射して金色に輝く姿に圧倒される。バガンのシュエサンド・パゴダやマンダレーのマンダレー・ヒル(丘全体が寺院になった聖地)の頂上から眺める夕日も美しく、ツアーの旅程にも組み込まれることが多い。しかし、ここまで素晴らしいのに、ミャンマーの仏教遺跡や寺院は、世界遺産に登録されていない。見れば見るほど「なぜこれが世界遺産でないのか」と首を傾げたくなるほどの迫力だが、実は、これこそがミャンマーならではの仏教観光の特徴であり、最大の魅力となのだ。


 ミャンマーの仏教は「生きて」いる。何百年前に造られた遺跡も、人々にとっては「遺跡」ではなく、現在進行形で信仰の対象であるため、儀式で人の手が加えられ、絶えずその姿を変えていく。例えば、寺院によっては信者が仏像に金箔を貼り付けていく習慣がある。インレー湖に建つファウンドーウー・パゴダの仏像は、長年の積み重ねで雪だるまのような形になり、顔の場所もわからなくないほど。また、各地に建つ金色のパゴダも数年に一度、金箔を張り替えている。そのため、遺跡の「保全・保護」を目的とする世界遺産には、登録されないのだという。



  しかし、これらの習慣は、ミャンマーの人々とっては功徳を積むための日常的の行為だ。このような仏教を文化的な体験として捉えれば、ミャンマー旅行の独自性を訴えられるだろう。例えば、仏像に金箔を貼るのは、男性であれば体験可能。敬虔なミャンマー人にならって、厚さ数ミクロンの金箔を貼り重ねると、過去から連綿と続く文化を体感でき、長い歴史の一部に加わったような感覚を得られ、旅行を強く印象付けるだろう。残念ながら女人禁制だが、近くで見学する分には全く問題ない。また、ミャンマーでは男性は一生に一度は出家するといわれており、修行の場である僧院で僧たちの生活を見学することも可能。1000人の僧たちが暮らすマンダレーのマハガンダーヨー僧院では、食事時にはあどけなさの残る少年僧から威厳ある老人僧までが一堂に会するため、この時間にあわせて多数の外国人が見学に訪れていた。視察団メンバーからは、「“僧院半日体験”などの機会があればユニーク」と、体験プログラムに対するイメージも出たようだ。


インレー湖では水上コテージ、
ボートクルーズを旅行のアクセントに


 仏教遺跡ばかりでは食傷気味に感じる旅行者がいるかもしれない。そこで、シャン高原に位置するインレー湖で旅行の幅を広げたい。ここでは、小型のボートをチャーターして観光スポットを巡ることができるほか、水上コテージもある。高原の空気や太陽の光を感じられるボートでの移動は趣向を変えられるため、周遊旅行の良いアクセントになる。


また、インレー湖では、片足で櫓を漕いで小船を操る奇習で知られるインダー族をはじめ、パオ族、アカ族などの少数民族に出会う機会が多い。彼らは湖周辺に暮らし、農業や漁業に従事するほか、レストランや織物工房も経営している。インダー族が器用に片足で櫓を漕ぎ両手で網を操る姿や、湖の浮き島を集め、流されていかないように竹ざおで固定した畑などもボートの上から至近距離で見ることができ、文化の違いを感じられる。


  文化といえば、ミャンマーの特産品である織物の工房が湖の近くに集まり、観光客の見学を受け入れている施設もある。蓮の茎から繊維を取り出して糸にし、織物に仕上げていく珍しい工程も見学できる。ミャンマーの布は、デザインや色味など日本人好みのものが多く、アジア雑貨に興味のある女性には特にお勧め。値段も、縦1メートル横2メートルという大きなサイズで1枚1米ドル程度からと非常に手頃だ。




  これらに加え、水上コテージも強みの一つだ。インレー湖には水上コテージが複数あり、このうち5ツ星のミャンマー・トレジャー・リゾートでは、スパのトリートメントルームも個別のコテージになっており、視察団でも複数のメンバーが「ヤンゴンでシティ、バガンで仏教遺跡、インレーでスパというコースは可能性がある」と言及していた。現在の日本人訪問者はシニア層がメインになるが、「人々の優しさと笑顔で心を癒し、仏教で知的好奇心を満たし、スパでリラックス」というキーワードは、幅広い層に受け入れられそうだ。現在のところ4泊前後のツアーはヤンゴンとバガン、マンダレーを周遊するコースがほとんどで、6泊程度になるとインレー湖を追加することが多いというが、インレー湖でのリゾートをメインとしたツアーも、十分可能性があるだろう。



手配のポイント:交通インフラは注意点多し、ホテルは早期ブロックの必要も

 交通や宿泊など、ミャンマー観光のインフ
ラ事情は、改善の余地は大きい。大都市圏で
も停電が頻発し、道路も都市部から外れると
かなり荒れた状況で、シニア層には難儀する
場面もあり得る。観光バスは日本から輸入し
た中古車がほとんどで、JATA視察団からは整
備不良を懸念する意見も出た。エーペックス
インターナショナルでは、ミャンマーには車
両保険がないため、必ず海外旅行保険に加入
することを勧めているという。

 航空関係では、ヤンゴン空港の国際線ター
ミナルやマンダレー空港は、英語の表示も分
かりやすく、近代的な建物であった。ヤンゴ
ンの出入国の手続きも迅速で、10分ほど待っ
た程度。ただし、国内線は、スムーズな搭乗
のためにいくつか注意点がある。例えば、搭
乗前にパスポートの提示が必要であるほか、
ヤンゴン発以外の国内線は全席自由席で、旅
行者には事前に伝えておきたい。また、運航
状況によって定時の数十分前の出発もありえ
る。ヤンゴン/バガン/マンダレー/イン
レー(ヘーホー)を順番に回る路線の場合、
ある空港で乗降の予定がないと通過すること
があり、予定より大幅に早く目的空港に到着
してしまうこともあるという。空港に向かう
際には、時間に余裕を持たせた方が良い。

 一方ホテルは、5ツ星ホテルが主だった観光
地に建つ。マンダレーのマンダレーヒル・リ
ゾートなどは、客室だけでなくスパなどの施
設が揃い、内装はアジアの要素を取り入れた
洋風のデザインで、女性誌などのスパ特集の
写真そのまま、といった印象。ミャンマーナ
ラエーペックス・マネージャーの中村英司氏
によると、旅行者の多くが「ホテルが予想以
上に良かった」と満足して語るという。客室
数は増えつつあるものの、祭りや仏教行事の
時期には予約しにくく、早めのブロックが必
要。特にインレー湖のファウンドーウー・パ
ゴダで9月から10月に開催される、「ファウン
ドーウー祭」は、多数の外国人旅行者が訪れ
るという。