日本航空、営業利益900億円で黒字転化、国際線が牽引−コスト削減に成功

本業の航空運送事業は、売上高が1.4%増の1兆8267億1700万円、営業利益は前年より760億円の増加となる786億9800万円を計上。会見したJL執行役員資金、経理、調達部担当の金山佳正氏は「機材と路線のリストラによる国際線のダウンサイジングとプレミアム戦略、コスト削減が効いた」と説明。国際線の供給量は4.4%減だが、有償旅客キロは3.5%減と供給の減少率と比べ小幅で、国際線旅客収入は4.1%増の7543億円。東南アジアや韓国線、さらに欧米のビジネスクラスの好調により、単価が7.8%上昇した。国内線旅客収入は0.3%増の微増だが、「全日空(NH)も同じ状況と聞く。連休は新幹線も需要が弱く、国内旅客輸送が鈍っている」と述べた上で「国内線はNHとほぼ同等の競争力になった」と評価し、「航空事業本業は順調に成長している」とした。
▽大幅なコスト削減に成功、燃油費は81億円減少
営業利益が900億円を計上したことについて、金山氏は「収入は見込みどおり。コストがここまで切れると思わなかった」と評する。営業費用は全般的なコスト削減効果により、6%減の2兆1404億円に減少している。
本業の航空運送事業の営業利益が大幅に伸びた理由も、営業費用の508億円の減少によるところが大きい。このうち、燃油費は81億円減少で、306億円増加したNHとは対照的。燃油費は市場の値上げにより553億円となったが、円高による為替の影響で58億円減少した上、機材の小型化や省燃費機材利用により搭載量が264億円減となり、燃油ヘッジの312億円が抑制効果となった。「機材の効率化で5%減、搭載量は6%減を実現。(JLは)年間の燃油費が5000億円で、1%で50億円違う」と説明する。ただし、今後の燃油費については「予測がつかず、どういう事態でも対応できるよう、さまざまな対策を練っていくしかない。燃油サーチャージにすべて頼るわけにはいかない」と述べ、今後もダウンサイジングと路線のリストラを推進する考え。「現在、赤字路線はないが、燃油費が上がり、状況が変われば見直しが必要」と認識を示した。7月以降の燃油サーチャージについては、現在、検討中で5月いっぱいに発表する予定だが、「(1バレル)140ドルになれば、自助努力も難しい」と、値上げ方向を示唆した。
このほか、人件費は、厚生年金の代行返上で360億円減少した前年とほぼ同じ。役員のボーナス返上で150億円、退職金制度の改定で200億円抑えた。
▽平成21年3月期は黒字確保もマイナス成長を予測
平成21年3月期については、売上高は2.1%減の2兆1840億円、営業利益が44.5%減の500億円、経常利益が57%減の300億円、当期純利益23.2%減の130億円とする。400億円減少する営業利益については、今期786億円であった航空運送事業の減少がほとんど。国際旅客が550億円の黒字、国内旅客が100億円の赤字、貨物が損益ゼロの合計390億円の見込み。航空運送事業は、燃油や国内市場の弱含みなど「今の状況では儲からない」と、説明した。
▽旅行企画販売事業も黒字転化
日本航空の連結決算のうち、ジャルパック、ジャルツアーズを含む旅行企画販売事業は、売上高が1.6%減の3737億2200万円となったが、営業費用が2.1%減の3727億9400万円と改善し、営業損益は前期の8億2100万円の赤字から、9億2800万円の黒字となった。
▽航空運送事業の売上高
・国際線旅客収入 7543億円(4.1%増)
有償旅客数 1336万7904人(0.7%減)
有償座席キロ 841億2819万4000席キロ(4.4%減)
有償旅客キロ 604億2628万人キロ(3.5%減)
利用率 71.8%(0.7%ポイント増)
・国内線旅客収入 6774億3700万円(0.3%増)
有償旅客数 4190万1924人(4.7%減)
有償座席キロ 500億8568万2000人キロ(3.4%減)
有償旅客キロ 317億4647万席キロ(4.3%減)
利用率 63.4%(0.6%ポイント減)
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※一部、社名表記を訂正しております。お詫びいたします。(12日、8:30)