ビジネストラベラー:提案する旅行会社が喜ばれる
今回は三菱重工業の岡本和夫氏へのインタビュー。岡本氏の豊富な海外出張経験談では渡航中、訪問先で気になる事情、旅行会社へ期待するサービス案など、新鮮な意見を頂いた。
(聞き手:山見インテグレーター代表、山見博康氏)
※2005年6月、月刊トラベルビジョン掲載
Q:海外部署所属が多いですが、これまでの海外出張で訪問した国はどんな国ですか?
94年から01年まで、英国、フランス、イタリアなどのヨーロッパ諸国に50回、韓国に20回、米国に10回、そしてアジア各国に10回以上と、良く海外出張へ行きました。南米と中東は訪れたことがないですね。営業を担当していた時は、月に1回欧州へ出張があり、パリ、ミラノ、ローマ、リーズ、マドリッドにある弊社拠点を回りました。01年から営業企画になったので欧州を中心に半年に1回程度の頻度になりました。また、昨年からはシンガポールとインドの子会社の役員となり、フィリピン、ベトナム、タイ、インドネシア、オーストラリアなどへ半年に1回程度出張しています。3月には、インド、シンガポールとタイに出張し、6月に再度行く予定です。
Q:海外出張時、座席利用規程はありますか?
トップエグゼクティブや取締役はファーストクラスですが、それ以下は、役職にかかわらず、飛行時間で決められます。つまり8時間以上はビジネスでそれ以下はエコノミーです。もちろん特別な場合もありますが。
Q:出張の目的はどんなことが多いですか?
私の場合は仕事柄、海外営業を目的とした出張がほとんどですね。
Q:社員の海外出張は増えていますか?
弊社の場合、地域によって増減があります。増えている地域はやはりアジアですね。特に中国、インド、インドネシアでしょう。ここ3年から4年は、だいたい1万7000人程度と聞いています。
◆大切なのは「現地らしさ」の取り入れ
Q:海外出張で最も印象に残る出来事を教えてください
97年9月に開いたシカゴの展示会でのことです。終わりの打ち上げイベントで、「ハディガイ」という有名なブルースギタリストが招かれていました。お客様は400人位いたと思います。
実は私は学生時代にロックバンドに所属してエレキギターを弾いていました。それが皆に知られることとなり、「飛び入りでやれ」ということになったのです。ずっと練習していなかったので、やれるかどうか心配でした。私が最もスタンダードなCコードのブルースをちょっと弾き始めたところ、ハディカイのメンバーがそれにアドリブで合わせてくれたのです。さすがはプロです。それで私も調子に乗って楽しく演奏することができ、大喝采を浴びました。写真はその時のもの。私としては本場でブルース演奏が出来た興奮がいまでも残っており、一生忘れられない思い出となりました。
Q:出張先で失敗されたご経験はありますか?
98年でしたか、シカゴでの展示会場に行った時のことです。到着してすぐアメリカ人の社長に「Hello!」と握手した途端、「お前はなんという服装をしているのか?ホテルに帰って着替えてこい」というのです。私のいでたちは、青と緑と黄色のチェックのブレザーに青いワイシャツ、下はライトグレーのズボンという全くの欧州スタイルでした。周りを見渡しても自分だけが浮いている感じでした。すぐ着替えてきましたよ。ちなみにその社長はというと、ダークスーツにホワイトシャツの定型でした。
Q:安全に旅行する秘訣を教えてください。
安全に旅行する秘訣の1つは、地域にマッチした服装を心がけることです。つまり現地人らしくするのです。特に休日は汚い格好をします。そのために捨ててもいいような服があれば持参して、そのまま捨ててくることもあります。とにかく風景に溶け込む感覚が大事ですね。例えば、アメリカではダークスーツにホワイトシャツだとまず大丈夫でしょう。また、アメリカでネクタイはペーズリーや幾何学模様も多いのですが、ヨーロッパでは絵柄が多いようです。つまりよそ者に見られないようにするのです。
95年5月のある土曜日の昼頃、パリの展示会へ行くためにデュッセルドルフから美しい花が印象的なパリの街へ移動した後の出来事でした。パリの地下鉄の長い上りエスカレーターで、前の外国人が何かカードのようなものを落とし、取りにくそうにしていたので取ってあげようと前かがみになったところ、後ろにいた別の外国人に財布をすられたのです。「しまった」と思い追いかけようとした時、外国人は財布にキャッシュがないと分かり、投げて逃げていきました。
財布はいつも後ろのポケットに入れるのですが、何か危険を感じて、実はキャッシュだけを抜き取り前のポケットに移していたのです。運よく返してくれましたが、実はキャッシュより、免許証やカードなど財布の中身の方が大事でしたからホッとしました。また、当然地図を開くようなことはしません。現金も分散して持つようにしています。
◆旅行会社は提案力が鍵
Q:仕事上、携帯する必需品は何ですか?
何といってもパソコンと携帯電話ですが、本体だけではなく、ケーブル、アダプター、電話線などの付属品も1つでも忘れると仕事が出来なくなりますから大切です。そこでパソコン関係は一袋に入れる工夫をしています。これは航空会社からもらう袋を利用しています。丈夫で、開け易いので重宝しています。
Q:お客様が来日した時など、旅行会社に注文はありますか?
営業にとって、日本に来てもらえるとほぼ成功といってよい位です。そこで、喜んでもらうために万全を尽くします。といっても、お金をかけるという意味ではなくて、いろんなアイデアを出していわば「手作りの日程」を作るのです。
Q:旅行会社に望むことはありますか?
弊社の場合には、子会社のMHIツーリストが担当しており、まったく心配していません。しかし、出張中にフライトが変更する場合など、とにかく臨機応変に、そして確実に手配してもらうことが第一です。長い出張になると、途中疲れもあって日程を間違えることもあります。手早く終えないとその連絡などで長引くこととなり、疲れてしまいます。例えば、日程管理をメールなどでやってもらえるといいかもしれませんね。つまり、どこまで消化したか、次のフライトは何時かなど、注意すべきことを自動的にウオーニングメールで出してくれる旅行会社があると喜ばれるでしょう。
Q:企業として旅行会社に求めるサービスの順位を教えてください。
まず手配の確実さですね。次に、何でもやってくれることで利便性向上が図られることも重要な要素です。そして、食事やホテルなども大切ですが、私たちは「仕事を取ることが仕事」なので、それに役立つような提案は積極的にもらいたいと思います。つまり提案型の旅行社が喜ばれます。例えば、ホテルにしても、地域によっては小さくても穴場的ないいホテルもありますから、ステレオタイプで有名ホテルを提案するのではなく、1ヶ月だったらこのホテルがいいとか、数日だったらここが良いなど提案して頂きたいです。
ありがとうございました。
(聞き手:山見インテグレーター代表、山見博康氏)
※2005年6月、月刊トラベルビジョン掲載
Q:海外部署所属が多いですが、これまでの海外出張で訪問した国はどんな国ですか?

Q:海外出張時、座席利用規程はありますか?
トップエグゼクティブや取締役はファーストクラスですが、それ以下は、役職にかかわらず、飛行時間で決められます。つまり8時間以上はビジネスでそれ以下はエコノミーです。もちろん特別な場合もありますが。
Q:出張の目的はどんなことが多いですか?
私の場合は仕事柄、海外営業を目的とした出張がほとんどですね。
Q:社員の海外出張は増えていますか?
弊社の場合、地域によって増減があります。増えている地域はやはりアジアですね。特に中国、インド、インドネシアでしょう。ここ3年から4年は、だいたい1万7000人程度と聞いています。
◆大切なのは「現地らしさ」の取り入れ
Q:海外出張で最も印象に残る出来事を教えてください
97年9月に開いたシカゴの展示会でのことです。終わりの打ち上げイベントで、「ハディガイ」という有名なブルースギタリストが招かれていました。お客様は400人位いたと思います。
実は私は学生時代にロックバンドに所属してエレキギターを弾いていました。それが皆に知られることとなり、「飛び入りでやれ」ということになったのです。ずっと練習していなかったので、やれるかどうか心配でした。私が最もスタンダードなCコードのブルースをちょっと弾き始めたところ、ハディカイのメンバーがそれにアドリブで合わせてくれたのです。さすがはプロです。それで私も調子に乗って楽しく演奏することができ、大喝采を浴びました。写真はその時のもの。私としては本場でブルース演奏が出来た興奮がいまでも残っており、一生忘れられない思い出となりました。
Q:出張先で失敗されたご経験はありますか?
98年でしたか、シカゴでの展示会場に行った時のことです。到着してすぐアメリカ人の社長に「Hello!」と握手した途端、「お前はなんという服装をしているのか?ホテルに帰って着替えてこい」というのです。私のいでたちは、青と緑と黄色のチェックのブレザーに青いワイシャツ、下はライトグレーのズボンという全くの欧州スタイルでした。周りを見渡しても自分だけが浮いている感じでした。すぐ着替えてきましたよ。ちなみにその社長はというと、ダークスーツにホワイトシャツの定型でした。
Q:安全に旅行する秘訣を教えてください。
安全に旅行する秘訣の1つは、地域にマッチした服装を心がけることです。つまり現地人らしくするのです。特に休日は汚い格好をします。そのために捨ててもいいような服があれば持参して、そのまま捨ててくることもあります。とにかく風景に溶け込む感覚が大事ですね。例えば、アメリカではダークスーツにホワイトシャツだとまず大丈夫でしょう。また、アメリカでネクタイはペーズリーや幾何学模様も多いのですが、ヨーロッパでは絵柄が多いようです。つまりよそ者に見られないようにするのです。
95年5月のある土曜日の昼頃、パリの展示会へ行くためにデュッセルドルフから美しい花が印象的なパリの街へ移動した後の出来事でした。パリの地下鉄の長い上りエスカレーターで、前の外国人が何かカードのようなものを落とし、取りにくそうにしていたので取ってあげようと前かがみになったところ、後ろにいた別の外国人に財布をすられたのです。「しまった」と思い追いかけようとした時、外国人は財布にキャッシュがないと分かり、投げて逃げていきました。
財布はいつも後ろのポケットに入れるのですが、何か危険を感じて、実はキャッシュだけを抜き取り前のポケットに移していたのです。運よく返してくれましたが、実はキャッシュより、免許証やカードなど財布の中身の方が大事でしたからホッとしました。また、当然地図を開くようなことはしません。現金も分散して持つようにしています。
◆旅行会社は提案力が鍵
Q:仕事上、携帯する必需品は何ですか?
何といってもパソコンと携帯電話ですが、本体だけではなく、ケーブル、アダプター、電話線などの付属品も1つでも忘れると仕事が出来なくなりますから大切です。そこでパソコン関係は一袋に入れる工夫をしています。これは航空会社からもらう袋を利用しています。丈夫で、開け易いので重宝しています。
Q:お客様が来日した時など、旅行会社に注文はありますか?
営業にとって、日本に来てもらえるとほぼ成功といってよい位です。そこで、喜んでもらうために万全を尽くします。といっても、お金をかけるという意味ではなくて、いろんなアイデアを出していわば「手作りの日程」を作るのです。
Q:旅行会社に望むことはありますか?
弊社の場合には、子会社のMHIツーリストが担当しており、まったく心配していません。しかし、出張中にフライトが変更する場合など、とにかく臨機応変に、そして確実に手配してもらうことが第一です。長い出張になると、途中疲れもあって日程を間違えることもあります。手早く終えないとその連絡などで長引くこととなり、疲れてしまいます。例えば、日程管理をメールなどでやってもらえるといいかもしれませんね。つまり、どこまで消化したか、次のフライトは何時かなど、注意すべきことを自動的にウオーニングメールで出してくれる旅行会社があると喜ばれるでしょう。
Q:企業として旅行会社に求めるサービスの順位を教えてください。
まず手配の確実さですね。次に、何でもやってくれることで利便性向上が図られることも重要な要素です。そして、食事やホテルなども大切ですが、私たちは「仕事を取ることが仕事」なので、それに役立つような提案は積極的にもらいたいと思います。つまり提案型の旅行社が喜ばれます。例えば、ホテルにしても、地域によっては小さくても穴場的ないいホテルもありますから、ステレオタイプで有名ホテルを提案するのではなく、1ヶ月だったらこのホテルがいいとか、数日だったらここが良いなど提案して頂きたいです。
ありがとうございました。
岡本 和夫 氏
三菱重工業株式会社 海外戦略本部・海外事業推進部
1985年 入社、国内営業部(航空機・印刷機械)
1994年 海外営業部(印刷機械:欧米およびアジアの商業用輪転機担当)
2001年 営業企画部(印刷機械)
2004年 海外戦略本部(海外事業推進・アジア地区担当)
2005年 兼任として、MHIシンガポール・MHIインド非常勤取締役