JTB、海外ダイナミックPKGを稼動−今後のスケルトン型の動向にも注目

特にJTBのダイナミックパッケージでは、3都市の周遊が可能で、今後は5都市までの周遊を組み立てることが可能だ。現在のシステムでは、JTBワールドバケーションズが仕入れた航空券を利用、一部でAPEXもあるが、大部分はIIT運賃を使い、ホテルは海外のJTB支店などが確保した客室と連動している。これにより、競合するサイトと価格面で優位性を保つことを狙う。今後、現地ツアー、送迎サービスなどの展開も視野に入れており、JTBとしての仕入力を最大限に発揮していく考え。
販売目標は初年度に10億円を見込んでいる。JTBでは平均客単価を8万円から10万円程度と想定しており、これを基にすると取扱人員は10万人規模となる。
▽JTBのダイナミックパッケージ
http://ovs.jtb.co.jp/dp/
▽JTBの参入でFITの掘り起こし−総需要が拡大するか
今回、JTBのダイナミックパッケージの本格参入で、ホールセラーがFIT対策をどのように進めていくかが注視される。特に、いわゆる「スケルトン型」商品が一時期はFITへ対応する最大の商品と目されていたが、JTBの参入、そして近畿日本ツーリストも9月ごろには本格稼動するなど、業界大手がその知名度の高さ活用してFITの取り込みに乗り出す意味は大きい。
まず、第1段階として、パッケージ販売の大方を占めると言われるスケルトン型の「飛行機+ホテル」という最もシンプルな形が縮小するか否かを見極めることになるだろう。スケルトン型が現在の3割から5割程度がダイナミックパッケージに移行していく場合、ホールセール商品は、今一度、大きな再編成を迫られることとなる。
一方、スケルトン型がある程度の規模を確保できるとすれば、市場規模の拡大が担保される。グローバルトラベルオンライン(GTO)の後藤淳一取締役副社長は「市場規模の拡大のためであれば、各社がダイナミックパッケージを展開することは歓迎すること」と常々述べているが、こうした状況に近づいていると言えるだろう。JTBでも「スケルトン型とダイナミックパッケージが並存する」(広報室)との見方を示している。
ただし、FITでも、レジャー、ビジネスと旅行目的を分けると、ビジネス需要をダイナミックパッケージが確保していく可能性も否定できない。航空会社やホテルとコーポレート契約を締結している企業に関しては大きな変動は無いと推測されるが、中小企業の出張需要をダイナミックパッケージが応えていく可能性が高まっていく。
また、業界内取引でも航空会社と旅行会社の価格設定も気になるところだ。これまでパッケージツアーで、売りたい便や時間帯などの販売を行ってきたパッケージ商品がダイナミックパッケージの出現で、何処までサプライヤー側の「売りたい」ニーズに応えることが可能となるのか。こうした点でも、ダイナミックパッケージそのものの価格訴求力も問われることとなるが、価格勝負だけであれば、既に体力勝負となることは十分に実証済みだ。
今後は、ネットの特性であるクチコミ情報や新たな価値基準を設定するなどにより、消費者の判断基準を増やすなどで、適正な価格で販売することも求められていくだろう。